WACC(加重平均資本コスト)とは
WACCは、会社が事業に使うお金を集めるのにかかるコストの平均です。借入の金利と、株主が期待するリターン(株主資本コスト)を、資本の構成比で加重平均して求めます。事業のリターンであるROICがWACCを上回っていれば、資本コストを上回って稼いでいる、つまり企業価値を生んでいると読めます。
WACCの計算式
WACC = E/V × Ke + D/V × Kd × (1 − 税率)
Ke = 無リスク金利 + 修正β × 市場リスクプレミアム
- E:株式の時価(時価総額)、D:有利子負債、V = E + D
- Ke:株主資本コスト、Kd:負債コスト(借入の金利)
- 支払利息は税金を減らす効果があるため、負債コストは税引後で計算します。
WACCを簡易計算する
無リスク金利・市場リスクプレミアムはStock Clubの現在の前提を初期値にしています
WACC
株主資本コスト 8.10%・修正β 1.00
5.98%
βは「0.67 × β + 0.33」で修正してから使います。時価総額と有利子負債は同じ単位で入力します。
Stock Clubが使っている前提
株主資本コストの計算に使う現在の値です。前提の表が更新されると、この表示も変わります。
無リスク金利
2.958%
10年国債利回り(2026年10月16日の値)
市場リスクプレミアム
5.14%
2026年1月5日から適用。出典:Aswath Damodaran, Country Default Spreads and Risk Premiums (ctryprem), Japan: Equity Risk Premium
修正β
0.67 × β + 0.33
極端なβを市場平均の1に寄せる調整(Blume調整)。Bloombergなども既定で使う方法です。
日本株の現在のWACC分布
株価基準日: 2026年10月19日
WACC 中央値
5.21%
四分位範囲 4.07% – 6.33%
株主資本コスト 中央値
6.38%
3,922銘柄で算出
ROICがWACCを上回る
2,066銘柄
両方ある3,539銘柄の58.4%
集計できた銘柄
3,722 / 3,958
算出しない・できない 236銘柄(下記)
WACCの分布
WACCを算出できた日本株を集計しています。ETFとREITは含みません。各区間は下限を含み、上限を含みません(例:「5〜6%」は5%以上6%未満)。
WACCを出さない銘柄
空欄をゼロで埋めず、理由ごとに件数を示します。
- 金融事業を持つ事業会社
- 15銘柄
- そのほか算出できない銘柄
- 221銘柄
販売金融などの借入で資本構成が実態とずれるため、WACCは空欄にします。株主資本コストは表示します。
βが取れない、修正後のβが負、資本構成のデータが無いなどの銘柄です。
銀行・証券・保険はROICを出しませんが、WACC(株主資本コストと同じ値)は表示します。このため、ROICとWACCの両方がある銘柄はWACCの集計より少なくなります。
業種別のWACC中央値
WACCを算出できた銘柄が10以上の業種を掲載。株価の値動きの大きさ(β)や借入の比率で水準が変わります。
時価総額上位銘柄の例
推奨順位ではありません。β・株主資本コスト・WACC・ROICの関係を実データで確認するための例です。βは修正前の値です。ROICを出さない金融業などは「-」です。
- 株価
- ¥3,478+0.09%
- β
- 1.39
- 株主資本コスト
- 9.43%
- WACC
- 9.43%
- ROIC
- -
- ROIC − WACC
- -
- 株価
- ¥3,102+0.26%
- β
- 1.10
- 株主資本コスト
- 8.44%
- WACC
- 8.56%
- ROIC
- 5.8%
- ROIC − WACC
- -2.8pt
- 株価
- ¥4,845-2.00%
- β
- 1.38
- 株主資本コスト
- 9.41%
- WACC
- 4.67%
- ROIC
- -
- ROIC − WACC
- -
- 株価
- ¥18,775+1.93%
- β
- 0.92
- 株主資本コスト
- 7.83%
- WACC
- 7.08%
- ROIC
- 24.4%
- ROIC − WACC
- +17.3pt
- 株価
- ¥5,773+0.05%
- β
- 1.42
- 株主資本コスト
- 9.54%
- WACC
- 8.64%
- ROIC
- 11.2%
- ROIC − WACC
- +2.5pt
- 株価
- ¥34,450-0.23%
- β
- 1.77
- 株主資本コスト
- 10.76%
- WACC
- 9.26%
- ROIC
- 49.3%
- ROIC − WACC
- +40.1pt
- 株価
- ¥3,274-0.06%
- β
- 1.34
- 株主資本コスト
- 9.27%
- WACC
- 9.27%
- ROIC
- -
- ROIC − WACC
- -
- 株価
- ¥10,350-2.63%
- β
- 1.21
- 株主資本コスト
- 8.81%
- WACC
- 8.81%
- ROIC
- 22.5%
- ROIC − WACC
- +13.7pt
WACCは、事業のリターン(ROIC)と比べて使います。 ROIC − WACC で日本企業を比較する →
WACCの見方:ROICとの差が稼ぐ力
稼ぐ力 = ROIC − WACC
WACC
資金の出し手(銀行・社債の投資家・株主)が求めるリターンの平均。事業が超えるべき基準です。
ROIC
借入と株主のお金を合わせた投下資本に対して、本業で稼いだ税引後の利益の割合です。
差がプラス
資本コストを上回って稼いでいる状態。企業価値を生んでいると読めます。
企業価値評価では、WACCは将来のキャッシュフローを割り引く率としても使われます。差がプラスかどうかは、それだけで投資判断を決めるものではありません。 ROICガイドで、ROICの計算式と日本株の分布を確認できます。
株主資本コスト(CAPM)とは
株主資本コストは、株主がその株式に期待する最低限のリターンです。会社から見れば、株式で資金を集めるコストにあたります。株主は利払いの約束が無い分だけリスクを負うため、通常は借入の金利より高くなります。
株主資本コスト = 無リスク金利 + 修正β × 市場リスクプレミアム
無リスク金利
ほぼ確実に得られる利回り。Stock Clubは10年国債利回り(現在 2.958%)を使います。
β(ベータ)
市場全体に対する株価の動きやすさ。1より大きいほど市場より大きく動きます。Stock Clubは「0.67 × β + 0.33」で修正して使います。
市場リスクプレミアム
株式市場全体が無リスク金利に上乗せして期待されるリターン。現在 5.14% を使っています。
ROE(株主の目線の利益率)は、この株主資本コストと比べて読みます。 ROEガイドで、ROEの計算式と日本株の分布を確認できます。
Stock ClubのWACC算出方法
全銘柄に同じ前提を当てはめる算出ルール
- WACC = E/V × 株主資本コスト + D/V × 負債コスト ×(1 − 実効税率)。E は時価総額、D は有利子負債、V = E + D です。
- 株主資本コスト = 無リスク金利 + 修正β × 市場リスクプレミアム(CAPM)。
- 無リスク金利は足元の10年国債利回り、市場リスクプレミアムは適用開始日つきの表の値を使います(現在の値は上の「前提」を参照)。
- 修正β = 0.67 × β + 0.33。β は時間とともに市場平均の1に寄る、という考え方に基づく調整です。
- 負債コストは、支払利息を有利子負債で割って求めます。有利子負債の無い会社は、WACCが株主資本コストと同じ値になります。
- 銀行・証券・保険などの金融業は、負債の構造が事業会社と異なるため、WACCとして株主資本コストをそのまま使います。
- βが取れない銘柄、修正後のβが負の銘柄は空欄です。販売金融などの金融事業を持つ事業会社はWACCを空欄にし、株主資本コストだけを表示します。
WACCは前提を置いた推定値で、前提が変わると値も変わります。表示値は投資助言ではなく、同一の前提で比較するための参考情報です。
WACCを見るときの注意点
前提で変わる推定値
WACCは、無リスク金利・β・市場リスクプレミアムなどの前提を置いて計算した推定値です。前提が変われば値も変わるため、絶対値ではなく、同じ前提で計算した他社との相対比較に使います。
βは過去の値動きから推計する
βは過去の株価の値動きから推計するため、期間や市場の状況で変わります。極端な値をならすため修正βを使いますが、修正後も負になる銘柄は株主資本コストもWACCも空欄にします。
会社が開示するWACCと一致しない
会社が統合報告書などで示すWACCは、会社ごとに前提や計算方法が異なります。Stock Clubの値は全銘柄を同じ前提で機械的に計算したもので、会社の開示とは一致しないことがあります。
ROICと比べるときは同じ土台で
ROICを比べる相手としてWACCを使います。Stock ClubのROICは、WACCと同じ「負債+株主資本」の土台で計算しています。算出方法はROICガイドで確認できます。
WACCのよくある質問
WACCは何%くらいが普通ですか?
一律の水準はありません。金利、株価の値動きの大きさ(β)、借入の比率、市場リスクプレミアムの前提によって変わります。WACCは前提を置いた推定値なので、絶対値よりも、同じ前提で計算した他社や同業種と比べて使います。
WACCと株主資本コストの違いは?
株主資本コストは株主が期待するリターンで、株式による資金調達のコストです。WACCは、これと借入のコスト(税引後)を、株式の時価と有利子負債の比率で加重平均した、会社全体の資金調達コストです。借入の無い会社ではWACCと株主資本コストは同じ値になります。
ROICがWACCを上回ると何がわかりますか?
事業に投じた資本から、資金の出し手が求めるリターンを上回る利益を上げている、つまり企業価値を生んでいると読めます。ただし1年の数字や推定値の前提で差は変わるため、推移と同業種の水準をあわせて確認します。
市場リスクプレミアムは何%を使っていますか?
固定の値ではなく、適用開始日つきの表で持っています。現在の値と出典は、このページの「Stock Clubが使っている前提」に表示しています。無リスク金利には足元の10年国債利回りを使います。
WACCを銘柄分析につなげる
資本コストで比較する一覧では、日本企業のROIC・WACC・その差を業種で絞って並べられます。株主の目線ではROEと株主資本コストの差も確認できます。
サポート
動画で見る
各ページで分かることや、指標の読み方を動画で紹介します。
ROIC と WACC の意味と、「資本コストで比較」の見方を紹介します。
1分48秒・音声あり
WACC の計算式・株主資本コスト・落とし穴を、指標シリーズで解説します。
1分43秒・音声あり
動画内の銘柄は表示例です。過去の数値や会社の方針は、将来の結果を保証するものではありません。投資の推奨ではありません。