
さくらさくプラス 2026年7月期 決算深掘りレポート:本業の堅調な拡大と新中計に見る「共働き世帯支援プラットフォーム」への進化
StockClub
公開日時: 2026/09/11 10:09
Sentiment Analysis

1. 2026年7月期 決算サマリーと業績動向の総括
株式会社さくらさくプラス(証券コード:7097)の2026年7月期通期決算は、 売上高175億9,300万円(前年同期比4.3%減) 、営業利益9億7,500万円(同14.4%減) 、経常利益10億2,700万円(同0.5%減) 、親会社株主に帰属する当期純利益6億5,200万円(同6.8%増) となりました。
単年度の数値としては売上・営業利益ともに減収減益となっていますが、通期予算に対する達成率は 売上高で98.8% 、営業利益で98.9% とおおむね計画水準に着地しています。また、最終利益においては前年比で +6.8%の増益 を確保しました。
一見すると減収減益に見える本決算の背景には、前年度に計上された大型不動産売却案件(浅草)の反動や、採算性を見直した不採算事業の撤退・整理といった一過性・構造改革要因が存在します。主力である保育サービス事業および研修事業については計画通り堅調に成長しており、事業のベースラインは着実な拡大基調を維持しています。
以下のスライドは、2026年7月期の売上高および営業利益の増減要因を詳細に示したものです。

業績要因の詳細分析
スライドに示されている通り、2026年7月期の業績動向を読み解く上では、ポジティブ要因とネガティブ要因の双方を整理することが重要です。
- 売上高の増減要因
- 増収要因 :認可保育所を中心とした保育所サービスの利用増や、保育従事者向け研修事業の好調な受注により、基幹の保育事業売上は確実に伸長しました。
- 減収要因 :前期(2025年7月期)に計上された大型不動産売却案件(浅草)の剥落と、選択と集中に伴う不採算事業の整理・撤退が前年比での押し下げ要因となりました。
- 営業利益の増減要因
- 増益要因 :不採算事業の撤退完了による損益構造の改善に加え、人員の適正配置を通じた業務効率化と採用コストの抑制が利益を押し上げました。
- 減益要因 :物価高騰に伴う保育士・職員のベースアップ(賃上げ)を実施したことで人件費、賞与、社会保険料等の負担が増加し、前年同期比では減益となりました。
2. 盤石な財務基盤と柔軟な資本政策
2026年7月期末時点の連結貸借対照表では、総資産が 153億3,400万円(前期末比20億7,500万円増) 、純資産が 60億8,000万円(同2億5,900万円増) となり、 自己資本比率は39.7% と健全な水準を維持しています。
特筆すべきは資産の内訳であり、流動資産58億3,000万円のうち、 現預金および未収入金の合計が36億8,000万円 を占めています。未収入金の多くは自治体向け補助金等であり信用リスクが極めて低いため、実質的な手元流動性は非常に高く、財務の安全性が際立っています。
さらに同社は、今後の成長投資や機動的な資本政策を可能にするため、 資本金(約5.99億円から7,000万円へ減少)および資本準備金(約5.49億円から0円へ減少)の減資 を発表しました。減少額を「その他資本剰余金」に振り替えることで分配可能利益を確保し、機動的なM&Aや自己株式取得、株主還元の拡充に向けた資本柔軟性を高めています。
3. FY2027-2029 中期経営計画:更なる高収益体質への進化
同社は、2027年7月期から2029年7月期までの3カ年中期経営計画を策定・公表しました。既存領域のオーガニック成長を着実に積み上げつつ、周辺領域の拡大やM&Aを視野に入れた成長軌道を描いています。

中期数値目標の骨子
- 2027年7月期(計画) :売上高 194億1,700万円(前年比+10.4%) 、営業利益 12億100万円(同+23.2%)
- 2028年7月期(計画) :売上高 200億7,600万円(同+3.4%) 、営業利益 13億1,700万円(同+9.6%)
- 2029年7月期(計画) :売上高 210億7,900万円(同+5.0%) 、営業利益 15億2,700万円(同+15.9%)
2027年7月期は、不採算事業の整理一巡と新規認可保育所の開設、ホテル再生事業の本格寄与により、 営業利益+23.2%の大幅な増益 を見込んでいます。中計最終年度となる2029年7月期には売上高210億円超、営業利益15億円超を目指す方針です。
4. 長期ビジョンと多角的な事業展開
さくらさくプラスは「日本の伸びしろを、花ひらかせる。」というビジョンのもと、単なる認可保育所の運営にとどまらず、共働き世帯の暮らし全体を支える 「ソリューションプラットフォーム」 の構築を推進しています。
① 保育事業(都心ドミナント展開)
同社は東京都心部を中心としたドミナント戦略を徹底しており、全89施設中 82施設が東京都内に集中(東京・認可比率98.8%) しています。2027年4月には、人口増加が著しい東京都中央区の大規模タワーマンション「グランドシティタワー月島」内に認可定員99名の新園「さくらさくみらい西仲通り」の開設を予定しています。
② 研修・人材育成サービス
2027年3月に公布、2028年4月に施行予定の「保育所保育指針改定」に対応した動画コンテンツやキャリアアップ研修の需要を取り込み、業界全体の人材育成と収益化を両立させています。
③ 不動産・ホテル再生事業
子育て世帯向け住環境を提供するマンション開発(「東京こどもすくすく住宅」認定を取得した文京区白山プロジェクトが2026年10月完成予定)や、2026年7月にリブランドオープンしたリゾートホテル「HOTEL SWAY yugawara」の本格稼働による収益貢献が見込まれます。
④ フェムケア・フェムテック領域
子会社YELLを通じて、働く女性やプレママ向けのフェムケアブランド「Wishyell」や「ママエール」を展開しています。オンライン販売に加え、小売業者への卸売など販路の多角化を進めています。
⑤ 人材採用とエンゲージメント
保育業界全体で保育士不足が課題となる中、年間休日125日以上、月平均残業5時間未満といった労働環境の整備や、自社HP・リファラル採用の内製化(紹介会社比率の低減)により、採用コストの削減と高い定着率を実現しています。
5. 株主還元策の積極展開:増配と株主優待制度
同社は株主への利益還元を重要経営課題と位置づけ、安定的かつ積極的な還元施策を推進しています。

配当方針と株主優待制度のポイント
- 6期連続の増配計画
- 2026年7月期は 年間28円(中間14円・期末14円) を実施予定(配当性向19.0%程度)。
- 2027年7月期はさらに4円増配となる 年間32円(中間16円・期末16円) を計画(配当性向18.3%程度)しており、成長に合わせた継続的な増配姿勢を示しています。
- 魅力的な株主優待制度の継続
- 毎年 1月末および7月末 時点で 2単元(200株)以上 を保有する株主を対象に、 それぞれQUOカード10,000円分(年間合計20,000円分) を進呈する優待制度を導入・継続しています。
6. まとめ
2026年7月期は、一時的な不動産売却益の剥落や不採算事業の撤退により表面上は減収減益となったものの、 基幹事業の強固な収益基盤と構造改革の成果が確認された1年 となりました。2027年7月期以降は、都心特化型保育所の新設、ホテル再生事業の収益寄与、フェムケア事業の拡大を背景に増収増益基調への回帰が計画されており、資本政策の適正化や6期連続増配・高水準の優待制度を含め、事業成長と株主還元の両立に向けた取り組みが注目されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。