
FUNDINNO 2026年10月期 第3四半期決算ディープダイブ:事業環境変化を受けた案件選別と、中長期を見据えた投資家層・調達手法の多角化
StockClub
公開日時: 2026/09/11 10:02
Sentiment Analysis

はじめに
株式投資型クラウドファンディングおよび未上場株式取引プラットフォームのリーディングカンパニーである 株式会社FUNDINNO(銘柄コード:462A) は、2026年10月期 第3四半期の決算説明資料を公表しました。
当四半期は、未上場株式市場におけるバリュエーション調整の遅れやExit環境の変化、AI普及に伴うスタートアップ事業モデルの再評価などを背景に、 大型案件の創出難易度が依然として高い水準 で推移しました。これに伴い業績面は減収および営業損失の計上を余儀なくされています。
しかし一方で、同社は 無借金経営と潤沢な手元現預金(38.7億円)を背景とした極めて盤石な財務基盤 を維持しつつ、機関投資家・事業法人へのターゲット拡張、コンフリクトを解消する「普通株式+株主間契約」スキームの実装など、中長期的なGMV(流通取引総額)拡大に向けたプラットフォーム基盤の再構築を着実に推進しています。本レポートでは、当第3四半期の業績実績、KPI動向、そして同社が推進する成長戦略の進捗について詳細に解説します。
1. 2026年10月期 第3四半期 業績ハイライトと損益構造
当第3四半期累計期間における業績は、営業収益が前年同期比で大幅に減少し、営業損失を計上する結果となりました。

上表に示される通り、2026年10月期 第3四半期累計の 営業収益は1,208百万円(前年同期比△624百万円、△34.1%) 、純営業収益は1,021百万円(前年同期比△633百万円) となりました。販管費が1,705百万円(前年同期比+209百万円)と先行投資に伴い増加した結果、 営業損失は△684百万円(前年同期は159百万円の営業利益) 、親会社株主に帰属する四半期純損失は△876百万円 となりました。
減収および営業損失計上の主要因
減収の主要因は、主軸であるプライマリー領域(FUNDINNO / FUNDINNO PLUS+)において、10億円超の大型資金調達案件の成約件数が前年同期の2件から 0件にとどまったこと です。案件創出の厳格化やバリュエーション調整の難航が直接的に収益へ影響を与えました。
固定費型コスト構造と損益分岐点
同社の費用構造は、人件費やシステム構築費を中心とする 固定費型 の構造となっています。営業費用は四半期あたり約6億円台前半(当第3四半期単体では639百万円)で推移しており、 四半期あたりの損益分岐点売上高は約650百万円 です。第3四半期単体の営業収益が309百万円にとどまったため損失が発生していますが、売上高が損益分岐点を超えた局面では高い利益レバレッジが働く構造となっています。
2. 通期業績予想と進捗状況
同社は2026年6月12日(第2四半期決算発表時)に通期業績予想の修正を公表しており、以下の数値を計画しています。
- 連結営業収益:1,800百万円
- 連結営業損失:△799百万円
第3四半期累計時点での営業収益の進捗率は 約67.1%(1,208百万円 / 1,800百万円) 、営業損失は計画値△799百万円に対して△684百万円となっており、修正後の通期見通しに沿った水準で進捗しています。第4四半期に向けては、既存案件の成約推進に加え、後述する新スキームによる案件積み上げに注力しています。
3. サービス領域別の収益動向
同社は「プライマリー」「グロース」「セカンダリー」の3領域でビジネスモデルを展開しています。
- プライマリー領域(FUNDINNO / FUNDINNO PLUS+)
- 四半期営業収益は233百万円(前四半期は355百万円)。案件選別の厳格化や合意形成の長期化により軟調に推移しました。
- グロース領域(FUNDOOR / FUNDINNO GROWTH)
- 四半期営業収益は75百万円(前四半期は80百万円)。株主管理SaaS「FUNDOOR」等を通じて、調達後企業の成長支援とテイクレート向上を継続的に支援しています。
- セカンダリー領域(FUNDINNO MARKET / FUNDINNO MARKET PLUS+)
- 第2四半期に「FUNDINNO MARKET PLUS+」においてまとまった実績(52百万円)を計上したのち、第3四半期は単体計上がないものの、未上場株の流動化基盤として中長期の施策が進んでいます。
4. 盤石な財務基盤と自己資本規制比率
先行投資局面および業績調整局面においても、同社の財務健全性は極めて高い水準を維持しています。
- 現金及び預貯金:3,873百万円 (総資産4,622百万円の大半を現預金が占める)
- 有利子負債(借入金):0百万円(無借金経営)
- 自己資本比率:94.7%
- 自己資本規制比率:602.1% (金融商品取引法上の法定基準値120%を大幅に超過)
この潤沢なネットキャッシュと規制資本上の余裕は、市場環境が一時的に逆風下にある中でも、プロダクト開発や事業法人・機関投資家開拓への先行投資を腰を据えて継続できる強固な事業基盤となっています。
5. 主要KPI分析:GMVの推移と特定投資家ネットワーク
プラットフォームの成長性を測る最重要KPIである GMV(流通取引総額) および 特定投資家数 の動向は以下の通りです。

GMVと大型案件の動向
第3四半期のGMVは 1,197百万円 となり、前年同期(4,173百万円)および前四半期(2,229百万円)を下回りました。上記グラフが示すように、前年同期は10億円超の大型案件が2件成立していたのに対し、当四半期は 5〜10億円案件が1件、10億円超案件が0件 にとどまりました。
案件創出が難航している主因として、以下の3点が挙げられます。
- 未上場株式のバリュエーション調整の遅れ :上場市場のマルチプル低下に対し、未上場市場側の価格合意形成に時間を要していること。
- AIによる事業代替リスクの検証 :出資先企業の事業継続性・優位性に対する審査・選別の厳格化。
- Exit構造の変化 :新規上場(IPO)市場の環境変化を受け、投資回収期間の長期化懸念が生じていること。
特定投資家ネットワークの拡大
一方で、高付加価値案件の受け皿となる 特定投資家数は1,919名 に達し、前四半期末(1,895名)から純増を維持しています。年次更新(7月末)に伴う契約終了(△124名)があったものの、新規登録が四半期ごとに150名前後の安定したペースで流入しており、 更新率も前期並みの93.9% と高水準を維持しています。
6. 市場環境変化への対応策と中長期成長戦略
市場環境の変化に対し、同社は従来の「画一化された基準による仕組み化」から、 「多様化する発行会社・投資家ニーズを拾い上げる柔軟な機能実装」へと方針を拡張 しています。

① 機関投資家・事業法人へのFA支援実績(SkyDrive出資案件等)
個人投資家主体のクラウドファンディングにとどまらず、 事業法人やプロの機関投資家を巻き込んだプライベートプレースメント支援(FA機能) を強化しています。
- りそなアセットマネジメントが運用するファンドによる「株式会社SkyDrive」(空飛ぶクルマ開発)への出資案件 において、FUNDINNOがFAとして仲介・支援を実施(2026年8月)。
- 株式会社Zenkenによる株式会社GRAPHICへの事業シナジー出資の仲介(2026年3月)。
② コンフリクト解消スキーム「普通株式+株主間契約」の実装
ダウンラウンドや株主数増加を懸念する既存株主と発行会社間の対立を解消するため、 「普通株式と株主間契約を組み合わせた調達スキーム」 を開発しました。これにより、既存株主の権利を守りつつ、投資家側のエンジェル税制適用ニーズを満たすことが可能となり、これまで案件化できなかった優良企業の発掘につなげています。
③ 行政支援事業の採択と新株予約権への対応
東京都の「クラウドファンディングを活用した資金調達支援事業」に採択され、今年度から 新株予約権を用いた調達も手数料補助(最大1,000万円等)の対象 となりました。同社の株主管理ツール「FUNDOOR」も新株予約権の管理に対応しており、アーリー・ミドルステージ企業の取り込みを加速させています。
7. まとめと今後の展望
FUNDINNOの2026年10月期 第3四半期は、未上場市場の価格調整と案件選別厳格化の影響を受けた 業績の過渡期 となりました。しかし、この環境下で推進されている「投資家層の多角化(機関投資家・事業法人)」「調達スキームの進化(株主間契約・新株予約権対応)」「Exit支援の拡張(セカンダリー・M&A)」は、中長期的なプラットフォーム基盤を強固にする取り組みです。
無借金で約38.7億円にのぼる豊富なキャッシュポジションをテコに、これらの施策が本格寄与する来期以降のGMV再成長と黒字化への転換シナリオが注目されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。