
HEROZ 2027年4月期第1四半期決算:BtoB事業が倍増し営業利益+52.8%の大幅増益、AI BPaaS構想が本格始動
StockClub
公開日時: 2026/09/11 09:58
Sentiment Analysis

はじめに:業績の全体像と主要トピック
HEROZ株式会社(証券コード:4382) は、2027年4月期第1四半期(2026年5月~7月)の連結決算を発表しました。当第1四半期は、主力のAIトランスフォーメーション(AIX)事業におけるBtoB領域の急伸と「HEROZ ASK」の順調な拡大、さらにセキュリティ事業の安定したストック収益が寄与し、 大幅な増収増益 を達成しました。
本レポートでは、投資家向けに開示された決算資料から読み取れる10の重要トピックを軸に、業績動向、収益構造の変化、および今後の事業戦略を網羅的に分析・解説します。
1. 2027年4月期 第1四半期 連結業績ハイライト
当四半期の連結売上高は 1,643百万円(前年同期比+8.5%増、ストラテジット社連結除外の影響を除いた実質成長率は+14.5%増) となりました。利益面では、 EBITDAが287百万円(前年同期比+25.4%増) 、のれん償却前営業利益が223百万円(前年同期比+40.8%増) 、営業利益が180百万円(前年同期比+52.8%増) 、親会社株主に帰属する四半期純利益は32百万円(前年同期の赤字11百万円から黒字転換) を達成しています。
通期業績予想(売上高6,800百万円、営業利益800百万円)に対する第1四半期の進捗率は、売上高で 24.2% 、営業利益で 22.5% 、のれん償却前営業利益で 23.3% と、概ね想定通りの順調な進捗を見せています。
以下のスライドは、当四半期の連結業績数値を前年同期および通期予想と比較した詳細一覧です。

この業績詳細スライドが示す最も注目すべき点は、売上高の拡大ペースに対して 売上原価が822百万円(前年同期比▲2.9%減)へと抑制され、粗利率が大きく改善している点 です。販管費は641百万円(前年同期比+16.7%増)と増加したものの、これはAKMコンサルティング社の連結に伴うM&A関連コスト(29百万円)や展示会等のマーケティング投資によるものであり、本業の収益力強化が営業利益+52.8%という高い利益成長につながっています。
2. リカーリング売上とARRの持続的成長
HEROZの収益基盤において最も重視されるストック型収益(リカーリング収益)は、強固な成長軌道を維持しています。
- ARR(年次経常収益):4,969百万円(前年同期比+17.6%増)
- リカーリング売上比率:72.2%(前年同期比+1.2pt上昇)
- 四半期リカーリング売上高:1,186百万円(AI Security事業 658百万円+AIX事業 528百万円)
AIX事業のリカーリング売上は前年同期比+14.8%増、AI Security事業は同+7.2%増と、両輪での拡大が続いています。また、解約率(チャーンレート)についても、 AI Security事業で0.84% 、HEROZ ASKで0.96%(前四半期比▲0.31pt改善) と、いずれも1%未満の極めて低い水準を維持しており、顧客基盤の定着度の高さが証明されています。
3. セグメント別動向:AIX事業がけん引役として急加速
セグメント別では、AIX事業が業績拡大を力強く牽引しています。
(1) AIX事業(売上高937百万円・セグメント利益234百万円)
ストラテジット社除外後のオーガニック売上成長率は 前年同期比+28.2%増 、セグメント利益は 前年同期比+56.3%増 と急伸しました。この牽引役となったのが、HEROZ単体のBtoBソリューション事業と、LLMプラットフォーム「HEROZ ASK」です。

上記スライドで示されている通り、 HEROZ BtoB事業の売上高は前年同期比+101.3%(約2倍) と爆発的な成長を遂げました。稼働案件数は 前年同期比+26.8%増 となり、顧客の業務基盤変革ニーズを捉えた 「共創型伴走支援(BEM: Business Engineering Management)」 モデルへのシフトが奏功しています。従来の「個別AIアルゴリズム開発を受託するモデル」から「顧客企業の中に入り込み、上流検討から実装・運用まで一体で伴走するモデル」へ転換したことで、案件の長期化と単価向上を同時に実現し、第2四半期累計でも前年同期比+64.8%の高い増収を見込んでいます。
(2) HEROZ ASKの進捗状況
生成AI/LLMを活用した法人向けAIアシスタント「HEROZ ASK」は、当第1四半期の売上高が 前四半期比+25.9%増 、7月末時点での ARRは2.3億円を突破 し、累計契約顧客数は 約470社 に達しました。個人情報(PII)自動マスキング機能の実装によりエンタープライズ市場の開拓を加速させるとともに、資料作成を行う新機能「スライドAI」のプレビュー版リリースや、最新モデル(Claude Opus 5、GPT-5.6 Sol等)、外部ツール(Notion、Box、Slack、freee等)との連携を進め、利用頻度と定着率(LTV)の向上を図っています。
(3) AI Security事業(売上高709百万円・セグメント利益272百万円)
バリオセキュア社を中心とするセキュリティ事業は、M&A関連コスト29百万円を吸収しながらも、売上高は 前年同期比+0.3%増 、セグメント利益は 前年同期比+16.5%増 となりました。29四半期連続で解約率1%以下を継続しており、グループの安定的なキャッシュカウとしての役割を十全に果たしています。
4. コスト構造改革と利益率の改善要因
収益構造面では、以下のコストコントロールが進展しています。
- 売上原価率の改善 :オーガニックベースの対売上原価比率は前年同期の54.2%から 50.1%へと4.1pt大幅に改善 しました。労務費が252百万円と横ばいで推移する中、BtoB事業の稼働率向上が粗利押し上げに直結しました。また、既存ソフトウェア資産の償却一巡も原価抑制に寄与しています。
- 販管費の最適化 :売上販管費比率は37.0%(前年同期36.8%)とほぼ同水準を維持。人件費やのれん償却費が横ばいとなる中、第2四半期以降はバリオセキュア社の完全子会社化に伴う上場維持費用削減などの コストシナジー が顕在化し、販管費総額の水準はさらに低下していく見込みです。
5. 中長期成長戦略:AIエージェントによる「AI BPaaS」への進化
HEROZは現在、「AI SaaS(ツール提供)」の段階から、業務そのものを自律的に代行・遂行する 「AI BPaaS(Business Process as a Service) / AIエージェント」 への事業進化を急ピッチで進めています。

上記ロードマップが示す通り、HEROZは以下の3つのピースを統合した 「学ぶ → 使う → 任せる」AI利活用プラットフォーム を構築しています。
- 「学ぶ」(入口拡大) :2026年8月にグループインしたエキストラ社(AI研修事業、450以上のコンテンツ、約100社のOEM基盤)を通じて企業の教育予算へアプローチし、新規顧客を大量獲得(Phase 1)。
- 「使う」(実践基盤) :研修を通じてセキュリティ不安を払拭した顧客へ「HEROZ ASK」を導入。教材デフォルト付帯による単価向上と定着化を推進(Phase 2)。
- 「任せる」(業務代替) :2026年5月に子会社化したAKMコンサルティング社(BAKUNAGE:経理・労務・法務の500項目超をカバーするAI BPO)やVOIQ社(セールス支援)と連携し、蓄積された業務ナレッジをもとにバックオフィスや特定業務を自律型AIエージェントが代行(Phase 3)。
この一連のエコシステムにより、 単なるツールの提供にとどまらず、顧客企業の人的リソース不足を直接解決する高付加価値ソリューション を提供し、ARPU(顧客平均単価)とMRRの非連続な成長を狙っています。
6. その他の重要トピックと今後の注目点
- BtoC事業(将棋ウォーズ等)の堅調さ :四半期対局数は約3千万局で推移し、累計対局数は 12億局に迫る規模 となっています。無料会員向け「詰めバト」の開放や「将棋ウォーズJT杯」の開催により、盤石な基盤を維持しています。
- 先端技術への挑戦 :株式会社ポケモンおよび松尾研究所と共催で、Kaggle上にて「ポケモンカードゲーム AI Battle Challenge」を開催。手札が見えない不完全情報ゲームにおけるAIエージェント開発を通じて、世界トップレベルのAI技術力を実証・発信しています。
- 「AIさくらさん」の新規領域拡大 :ティファナ・ドットコムが手掛ける「AIさくらさん」は売上高前年同期比+9.2%増。高齢者見守りサービスや自治体(日立市国民健康保険課)、観光案内(関市)など、人手不足が深刻な新領域への導入が加速しており、下期に向けてさらなる再設置と新規積み上げが見込まれています。
- M&A方針と投資規律 :質疑応答(P29)にある通り、今後のM&A対象を「BPO×AI」「AI SaaS」「AIセキュリティ」の3領域に厳格に絞り込み、「ストック型収益を有し、黒字であること」を前提条件として規律ある実行を継続する方針です。
総括
HEROZの2027年4月期第1四半期は、 共創型伴走支援によるBtoBの倍増 とHEROZ ASKの高成長 、高水準なリカーリング売上比率(72.2%) に支えられ、収益力の大幅な向上が確認できる決算内容となりました。今後は、エキストラ社およびAKMコンサルティング社のグループインによる「AI BPaaSプラットフォーム」のシナジー創出、ならびにバリオセキュア完全子会社化に伴うコスト削減効果が業績にどのように寄与していくかが重要な観察ポイントとなります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。