
インヴィンシブル投資法人 2026年6月期 決算詳細レポート:関西万博反落と中国客減を跳ね返すポートフォリオの底力と2029年DPU4,500円超へ向けた成長戦略
StockClub
公開日時: 2026/08/25 09:56
Sentiment Analysis

エグゼクティブ・サマリー
インヴィンシブル投資法人(証券コード:8963) は、ホテルおよび住居を主軸とする総合型J-REITです。2026年6月期決算では、2025年に開催された大阪・関西万博の反動減(宿泊需要剥落)や日中関係悪化に伴う中国人旅行客の減少という逆風に直面しながらも、 増収増益 を達成しました。2025年8月に取得した物件の収益貢献や海外ホテル(ケイマン諸島)の好調、国内非関西エリアおよび非中国系インバウンド需要の拡大が寄与し、 1口当たり分配金(DPU)は1,930円 と6月期として投資法人名改号(2010年2月)以降の最高額を更新しました。
中長期戦略においては、 2029年に向けてDPU年平均3.0%以上の成長(年間4,500円超水準の達成) を掲げる中期目標を新たに策定。積極的な戦略的CAPEX(資本的支出)による内部成長を主軸としつつ、1,000億円を超える含み益の顕在化(物件売却・入替)や内部留保の戦略的活用を組み合わせ、着実な投資主価値の向上を目指しています。
1. 2026年6月期 決算実績ハイライト
当期の決算数値および前年同期比の主な実績は下表およびスライドの通りです。

決算数値のポイントと要因分析
- 営業収益:26,789百万円(前年同期比 +6.7%)
- 不動産賃貸事業収益は前年同期比5.6%増の20,947百万円となりました。内訳として、ホテル変動賃料が11,638百万円(+6.7%)、固定賃料が6,900百万円(+4.6%)と堅調に拡大しました。
- ケイマン2ホテル等の運営委託収益は4,869百万円(+16.7%)と二桁増収を記録。米ドルベースでは+18.1%と極めて好調に推移しました。
- 営業利益:17,564百万円(前年同期比 +3.7%)
- 当期純利益:14,729百万円(前年同期比 +2.5%)
- 1口当たり分配金(DPU):1,930円(前年同期比 +1.8%、期初予想比 +1.8%)
- 2025年12月発表予想の1,895円を35円上回って着地しました。
- 期末鑑定評価額:8,482億9,500万円(前期末比 +2.1%、+172億3,300万円)
- ポートフォリオ全体の資産価値も着実に拡大を続けています。
金利上昇に伴う支払利息増や公租公課・減価償却費の増加といったコスト増を、物件取得効果(+1,131百万円)と海外ホテルの収益増(+696百万円)が上回り、利益成長を牽引しました。
2. 業績予想と今後の見通し(2026年12月期・2027年6月期)
2026年12月期 業績予想
- 営業収益:28,045百万円(前年同期比 -1.9%)
- 営業利益:18,382百万円(前年同期比 -4.8%)
- 当期純利益:14,988百万円(前年同期比 -10.2%)
- 1口当たり分配金(DPU):2,186円(前年同期と同額を維持)
- 見通しの背景: 万博需要剥落の影響本格化や日中関係悪化に伴う影響を織り込み、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを裏付とするTMKの借入コスト増による受取配当金減少、ケイマンホテルの団体客低迷を見込んでいます。ただし、 利益剰余金(内部留保)を活用することで、前年同期と同水準のDPU 2,186円を維持 する方針です。
2027年6月期 業績予想
- 営業収益:27,935百万円(前年同期比 +4.3%)
- 営業利益:18,417百万円(前年同期比 +4.9%)
- 当期純利益:14,873百万円(前年同期比 +1.0%)
- 1口当たり分配金(DPU):1,949円(前年同期比 +1.0%)
- 見通しの背景: 万博剥落影響の一巡、国内ホテル変動賃料の回復(+7.8%)、ケイマンホテルの改装完了効果などにより、 6月期としての過去最高DPUをさらに更新 する見込みです。
3. 国内ホテルポートフォリオの運用状況と需要構造
主要オペレーターであるマイステイズ・ホテル・マネジメント(アイコニア・ホスピタリティ:ICN)が運営する国内ホテル101物件の動向は以下の通りです。

地域別・国籍別動向の詳細
- 全体指標: ICN101物件の客室売上高は前年同期比+1.7%、RevPAR(販売可能客室1室当たり売上)は11,722円(+1.6%)、ADR(客室平均単価)は13,849円(+0.7%)、稼働率は84.6%(+0.8pt)となりました。
- 関西エリアの影響と他地域の強さ: 関西エリアは万博反落により客室売上が 前年同期比 -25.2% と大幅減となりましたが、 関西を除く全国エリアでは前年同期比 +5.3% と力強く成長(九州+9.2%、北海道+8.6%、中部+4.6%、東京23区+2.7%)。広域分散されたポートフォリオ構造がリスクヘッジとして機能しました。
- インバウンド国籍別の変化: 中国客の売上は前年同期比 -51.2% 、香港は -2.4%と減少したものの、 中国・香港以外のインバウンド売上は +15.7% と大幅伸長(韓国 +35.2%、台湾 +34.1%、欧州 +14.4%、米国 +8.5%)。国内客も +2.6%と底堅く推移し、中国依存度の低下と需要の多角化が進展しています。
- 非客室部門の伸長: 宴会・会議・レストラン等の料飲部門売上は前年同期比 +5.6%(関西以外では +7.2%) と堅調に推移し、全社的な収益安定化に寄与しました。
4. 海外ホテル・住居ポートフォリオの運用状況
- ケイマン諸島ホテル(2物件):
- ケイマン諸島への航空便数増加(前年同期比 +20.1%)と宿泊訪問客数(+11.3%)の好調を背景に、RevPARは前年同期比 +15.5%増の481米ドル を達成。GOPは18.8%増の3,268万米ドルとなりました。
- 「ザ・サンシャイン・ホテル&スイーツ」の客室リニューアル効果が発現(ADRは改修前比 +29.4%)。2026年6月にはレストラン改修も完了し、さらなる収益性向上が期待されます。
- 住居ポートフォリオ(41物件):
- NOIは前年同期比 +1.8%増の1,166百万円 。稼働率向上と賃料増額の取り組みが順調に進展し、安定したディフェンシブ収益源となっています。
5. DPU中期目標と成長戦略(2026〜2029年)
本投資法人は、市場環境の変化を踏まえ、2029年に向けた新たな成長ロードマップを提示しています。

4つの成長ドライバー
- 戦略的CAPEXによる内部成長:
- 2027年〜2029年の3年間で 累計220億円 の戦略的CAPEXを計画。想定償却後NOI利回りは 7.0% を見込み、全案件効果発現時には 年間約200円のDPU押上げ効果 を想定しています。
- (事例)「JRクレメントイン高松兵庫町」のリブランド改装(投資額4.98億円、予想ROI 44.2%)、「ホテルマイステイズ名古屋栄」の全面改装(投資額7.79億円、予想ROI 11.8%)など、高リターン案件を順次実行。
- 含み益の一部顕在化(物件売却・入替):
- 保有10年超の買換特例適用が可能な物件(計89物件)を中心に、 約1,024億円(1口当たり約13,392円)の含み益 を抱えています。これらを戦略的に売却・入替することで売却益を創出し、DPU成長をサポートします。
- 内部留保の戦略的活用:
- 総額84億円(1口当たり1,102円) にのぼる豊富な内部留保を保有。短期的な市場変動や一時的な利益下押し局面において柔軟に取り崩し、分配金の安定化と右肩上がりの成長を下支えします。
- 規律ある外部成長:
- ICNが運営する約60ホテル(約7,000室)をはじめとする豊富なスポンサーパイプラインを保持。資本コストと市場環境(P/NAV動向)を精査しつつ、最適なタイミングでの取得を追求します。
6. 財務マネジメントとマクロ環境への対応
- 格付向上と調達条件の改善: 株式会社日本格付研究所(JCR)より 「AA-(安定的)」 への格付上方修正を獲得。リファイナンスにおける借入金利スプレッドの良化を実現しています。
- 金利上昇リスクへのヘッジ: 金利スワップを活用し、 固定金利比率約6割 の水準を維持。返済期限の分散と平均借入期間の長期化を徹底し、金融市場の引き締めに対応しています。
- ホテル供給環境の優位性: 建築資材費および労務費の高騰により、国内の新規ホテル供給計画は抑制傾向が続いています。計画中ホテルの1棟当たり客室数も減少(小規模・ラグジュアリー化)しており、既存の中大型・ビジネスホテルの需給環境は中長期的にタイトに推移すると見込まれます。
結論とまとめ
2026年6月期のインヴィンシブル投資法人は、 大阪万博の反動減と中国インバウンドの低迷という複合的な外部環境の逆風を、地域分散されたポートフォリオと非中国圏インバウンドの急拡大によって吸収し、増収増益を達成 しました。
今後の展開においても、2026年12月期の踊り場を内部留保によって乗り切り、2027年6月期には再び過去最高DPUを更新する計画です。さらに、 累計220億円に及ぶ戦略的CAPEX と1,000億円超の含み益の顕在化 を両輪とし、 2029年DPU 4,500円超(年平均+3.0%成長) の達成に向けた明確な成長ストーリーが描かれています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。