
東洋炭素 2026年12月期第2四半期決算ディープダイブ:半導体調整による上期減益と下期回復シナリオ、成長投資の現在地
StockClub
公開日時: 2026/08/20 09:56
Sentiment Analysis

1. 2026年12月期第2四半期 業績ハイライト
東洋炭素の2026年12月期第2四半期(累計)の連結業績は、 売上高223億7,000万円(前年同期比2.7%減) 、営業利益17億7,800万円(同53.7%減) 、経常利益22億2,900万円(同41.2%減) 、親会社株主に帰属する中間純利益16億7,700万円(同37.4%減) となりました。
売上高は前年同期並みを維持したものの、利益面では半導体市場の在庫調整や製品ミックスの悪化、在庫関連費用等の影響を受けて大幅な減益を余儀なくされました。会社計画(予想比)に対しても、売上高は0.6%減、営業利益は31.6%減と下振れて着地しています。
| 項目 | FY2025/H1実績 | FY2026/H1計画 | FY2026/H1実績 | 前年同期比 | 計画比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 22,980百万円 | 22,500百万円 | 22,370百万円 | ▲2.7% | ▲0.6% |
| 営業利益 | 3,840百万円 | 2,600百万円 | 1,778百万円 | ▲53.7% | ▲31.6% |
| 営業利益率 | 16.7% | 11.6% | 7.9% | ▲8.8pt | ▲3.7pt |
| 経常利益 | 3,789百万円 | 2,500百万円 | 2,229百万円 | ▲41.2% | ▲10.8% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 2,681百万円 | 2,300百万円 | 1,677百万円 | ▲37.4% | ▲27.1% |
2. 上期営業利益の増減要因分析
営業利益が前年同期の38.4億円から17.7億円へと20.6億円減少した背景には、複数の複合的要因が存在します。

上図は、前年同期(FY25/H1)から当期(FY26/H1)にかけての営業利益の変動要因を分解したウォーターフォールチャートです。このスライドから読み取れる主要な要因は以下の通りです。
- 限界利益の減少(▲18.9億円) :最も大きな押し下げ要因となったのは、高採算な半導体向け部材の減少に伴う 販売構成差(製品ミックス悪化) および数量減です。
- 在庫関連の影響(▲11.5億円) :連結グループ内における 未実現利益の計上影響 などが利益の圧迫要因となりました。
- 減価償却費の増加(▲2.2億円) :将来成長に向けた生産設備能力増強に伴い償却費が増加しました。
- 固定費削減効果(+8.1億円) :徹底したコスト管理や経費削減により利益を下支えしました。
- 為替影響(+3.5億円) :想定レート(145円/$、176円/€)に対し、実績レートが円安(158.2円/$、184.5円/€)に推移したことがプラスに寄与しました。
3. 製品・分野別の状況と事業環境
特殊黒鉛製品(売上高:106億3,200万円、前年同期比 +4.2%)
- エレクトロニクス分野(32億8,700万円、前年同期比 ▲15.9%) :半導体デバイス関連製造部材が大幅に減少したほか、ウエハー在庫の調整継続に伴い、 SiC半導体向けの化合物半導体製造用 や単結晶シリコン製造用部材がやや減少し、減収となりました。
- 一般産業分野(56億1,200万円、前年同期比 +9.9%) :自動車関連産業の稼働や企業の設備投資の底堅さを背景に、 連続鋳造用ダイスや工業炉用等の冶金用部材 が堅調に推移し増収を牽引しました。
- その他(17億3,300万円、前年同期比 +45.9%) :放電加工電極用等の需要増により大幅増となりました。
一般カーボン製品(売上高:43億8,000万円、前年同期比 +7.7%)
- 機械用カーボン分野(21億3,100万円、前年同期比 +7.3%) :産業機械向けの軸受や シールリング の需要が堅調に推移しました。
- 電気用カーボン分野(22億4,900万円、前年同期比 +8.2%) :家電・電動工具向けの小型モーター用需要増に加え、大型モーター向けも安定して推移しました。
複合材その他製品(売上高:68億3,000万円、前年同期比 ▲13.7%)
- 主要3製品(56億9,100万円、前年同期比 ▲13.7%) :
- SiCコーティング黒鉛製品 :生成AI用の最先端品向けを中心とした Siエピタキシャル用途 の需要は堅調だったものの、SiCエピタキシャル用途の大幅減や前期前倒し需要の反動が響き減収となりました。
- C/Cコンポジット製品 :工業炉用および半導体用が堅調に推移し増収。
- 黒鉛シート製品 :半導体用が弱含んだものの、自動車・冶金用が増加しました。
4. 財務基盤とキャッシュ・フロー
厳しい損益環境下においても、強固な財務体質と健全なキャッシュ創出力を維持しています。
- 資産・資本の健全性 :総資産は前期末比16億7,800万円増の 1,195億9,400万円 。純資産は 976億2,300万円 、自己資本比率は81.6% と、極めて盤石な財務基盤を保持しています。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー :79億7,400万円の収入 (前年同期は28億900万円の収入)となり、棚卸資産のコントロール等により大幅に拡大しました。
- 投資活動によるキャッシュ・フロー :有形固定資産の取得等により 48億7,300万円の支出 を実施。営業CFの範囲内で成長投資を賄う規律あるキャッシュ配分が行われています。
5. 通期業績予想と下期回復シナリオ
東洋炭素は、2026年12月期の通期連結業績予想について、期初公表値を据え置いています。

上図の通り、通期計画に対する上期進捗は売上高で45.7%、営業利益で28.7%にとどまりますが、同社は 下期(H2)での大幅な業績回復 を見込んでいます。
| 項目 | FY2025実績 | FY2026通期計画(F) | 前期比 | H1実績 | H2計画(F) | H2前期比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 46,189百万円 | 49,000百万円 | +6.1% | 22,370百万円 | 26,629百万円 | +14.7% |
| 営業利益 | 6,759百万円 | 6,200百万円 | ▲8.3% | 1,778百万円 | 4,421百万円 | +51.5% |
| 営業利益率 | 14.6% | 12.7% | ▲1.9pt | 7.9% | 16.6% | +4.0pt |
| 当期純利益 | 5,464百万円 | 5,000百万円 | ▲8.5% | 1,677百万円 | 3,322百万円 | +19.4% |
下期回復の前提条件とドライバー
- シリコン半導体用途の回復 :ウエハー在庫調整の一巡に伴い、単結晶シリコン製造用およびSiエピタキシャル用途の受注回復が本格化する見込みです。
- 限界利益の大幅改善 :下期の営業利益は上期比+26.4億円を見込んでおり、その主因は数量増および高付加価値品構成の向上による 限界利益増(+48.0億円) です。
- 価格改定の実施 :中東情勢を受けた原油価格上昇等の製造コスト増を吸収するため、 2026年10月度ご注文分より価格改定 を予定しています。
6. 中長期の設備投資戦略と株主還元

成長投資の進捗
同社は、中長期的な半導体・パワー半導体需要の拡大を見据え、積極的な先行投資を継続しています。
- 設備投資計画 :通期計画 83億円 (上期実績33億5,700万円)を予定しており、主に 高純度化設備 やSiC・TaC(炭化タンタル)コーティング設備 への能力増強投資を計画通り進めています。
- 研究開発費 :先端半導体・次世代パワー半導体向け材料開発を中心に 14億4,600万円 を計画しています。
株主還元方針
- 配当方針 :業績変動下においても安定的な配当維持を重視し、2026年12月期の年間配当金は 1株当たり145円(前期と同額) を維持する計画です。
- 配当性向 :当期純利益計画に基づき、 連結配当性向は60.8% (目標基準である40%を大幅に上回る水準)に達する見通しです。
7. まとめ
東洋炭素の2026年12月期上期は、半導体市場の在庫調整局面に伴うプロダクトミックス悪化により一時的な大幅減益となりました。しかし、自己資本比率81.6%という強固な財務体質を維持しつつ、成長領域であるSiC/TaCコーティング等の能力増強投資を着実に推進しています。下期以降のシリコンウエハー調整一巡と先端品需要の回復、さらには10月からの価格改定の浸透が、通期業績達成に向けた重要指標となります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。