
eWeLL(5038)2026年12月期第2四半期決算:高収益構造の継続とAI機能のマネタイズ加速、NRR108%が開く新たな成長フェーズ
StockClub
公開日時: 2026/08/20 09:55
Sentiment Analysis

1. 2026年12月期 第2四半期 業績ハイライト
株式会社eWeLL(5038)の2026年12月期第2四半期累計業績は、 売上高19億9,100万円(前年同期比24.2%増) 、営業利益9億4,600万円(前年同期比20.1%増) と大幅な増収増益を達成しました。通期計画(売上高42億7,700万円、営業利益19億2,700万円)に対する進捗率は、売上高が 46.6% 、営業利益が 49.1% となり、営業利益ベースでは期初予想を 3,500万円上回るペース で順調に推移しています。
特筆すべきは、 上期営業利益率が47.5% という極めて高い水準を維持している点です。開発投資や人件費の増加を適切にコントロールしつつ、主力プロダクトである「iBow」の契約数増加と既存顧客に対するアップセルが順調に進捗したことが業績を強力に牽引しています。

上記のスライド書き起こしに示されている通り、同社は従来の「単なるレセプト請求ソフト」ではなく、看護師の日々の記録作成・患者管理(CRM領域)を起点とした業務システムを提供しています。2024年の診療報酬改定で義務付けられた「記録と請求の一致」という法制度の要請に対し、記録から請求までを一気通貫で管理できる「iBowレセプト」が強力な競争優位性を発揮しており、これが他社システムからの切り替えや複数ステーションを展開する大規模法人からの新規契約獲得につながっています。
2. 独自の課金モデルと高収益体質の背景
同社の主力サービスである電子カルテ「iBow」は、SaaS業界で一般的なID単位の課金ではなく、 「月額基本料金18,000円+1訪問あたり100円」 という従量課金と固定サブスクリプションを組み合わせたハイブリッド型モデルを採用しています。
訪問看護ステーションは1回の訪問につき約8,500円の報酬を得るビジネスモデルです。同社システムは全職員が利用しても追加料金が発生しない設計となっており、ステーション側が業務効率化によって訪問件数を増やすほどステーションの売上が拡大し、同時にeWeLLの従量課金売上も増加するという Win-Winの構造 が確立されています。
この課金体系により、第2四半期の 月間平均顧客単価(ARPU)は9万900円(前年同期比5.2%増) へと着実に伸長しています。また、全社売上総利益率は 76.1% と高水準を維持しており、強固な収益基盤が示されています。
3. 顧客維持・拡大力を示す新指標「NRR 108.0%」の開示
今期より、同社は既存顧客からの売上拡大度合いを示す重要指標として NRR(Net Retention Rate:売上継続率) の開示を開始しました。今上期におけるクラウドサービスのNRRは 108.0% を記録しています。

この開示が投資家にとって極めて重要な理由は、同社の成長が「新規顧客獲得」のみに依存するのではなく、 「既存顧客の事業拡大およびアップセル」を通じて自律的に売上が拡大するフェーズに入ったこと を定量的に証明している点にあります。
- 拡大期の法人 : 法人単価の伸びが著しく、複数ステーション展開に伴いサービス利用が面で拡大。
- 成長期・立ち上げ期の法人 : 訪問件数増加支援やAIサービスの導入、採用・定着支援を通じて事業規模拡大を後押し。
同社は中期的には NRR 110%以上 を目標水準として掲げており、解約によって失われるリカーリング収益を示す レベニューチャーンレートも0.2% と、SaaS業界の一般的な優良水準(1%未満)を大きく下回る極めて低い数値を維持しています。
4. AI機能のマネタイズ本格化と「医療DX」のけん引
eWeLLの最大の競争優位性は、12年以上にわたり蓄積してきた 「累計100万人以上の在宅患者データ」および「累計1億件以上の訪問ケアデータ」 という圧倒的な実データ資産です。このデータを基盤としたAIサービスの活用が急速に進んでいます。
- AIサービスの普及状況 : 第2四半期末時点で利用ステーション数は 1,600件を突破(全顧客の約45%) 。利用する医療従事者は 2万3,670人 に達し、全国の訪問看護従事者の約12.9%(約8人に1人)が同社のAIを活用している計算となります。
- 生産性向上の実証 : AI利用ステーションの1年間における平均訪問件数成長率は 116.7% となり、非利用ステーション(111.0%)と比較して 5.7ポイント高い成長率 を記録しました。
- 「AI訪問予定・ルート」の課金開始 : 2026年7月より月額約15,000円での有償化を開始。7月の課金開始件数は246件、契約件数は 273件 となり、期初目標(200件)を大幅に上回る好調なスタートを切りました。期末には課金ユーザーの10%超にあたる 400件程度 の契約を見込んでいます。
- 新規開発「AI訪問看護スコアリング(仮)」 : 訪問看護ステーションの経営KPIをAIが自動分析し、具体的な改善策まで提示する新機能を2026年中に有償化予定。一般的なコンサルティング費用(月額3万〜5万円)をベンチマークとした高付加価値なアップセル商材として計画されています。
5. 事業セグメント別動向とKPIの進捗

四半期ベースの事業別・KPI推移からも、同社の堅調な事業進捗が確認できます。
① クラウドサービス事業
- 第2四半期売上高は 8億8,600万円(前年同期比20.4%増) 。
- 契約ステーション数は 3,736件(前年同期比13.7%増) 、第2四半期の純増数は103件。
- 市場全体のステーション数が2万件を突破する中、同社シェアは 18.6% まで上昇(2026年末目標20%)。
- 期首契約数に対するアカウント解約率は 1.76% と、前年同期(1.85%)や前々年同期(2.07%)から改善傾向。
② クラウドBPaaS事業
- 完全リモートでバックオフィス業務を代行するBPaaS事業の第2四半期売上高は 1億4,700万円(前年同期比36.8%増) と高成長を継続。
- 稼働件数は第1四半期の273件から 297件 へと拡大。
- 1人当たり生産性の向上により、BPaaS事業の売上総利益率は 65.2% まで改善。
6. 今後の成長戦略と中長期の展望
政府が推進する地域包括ケアシステムにおいて、医療費削減効果(約35%削減)が見込める在宅医療・訪問看護へのシフトは「国策」として位置づけられています。全国のステーション数が拡大を続ける中、同社は強固な財務体質とキャッシュ創出力(従業員118名による少数精鋭体制)を背景に、積極的な成長投資を継続する方針です。
- 成長投資領域 : 蓄積した実データを活用した 「AI開発」 と、NRR向上を担う 「カスタマーサクセス・営業体制の強化」 、さらに新規事業「けあログっと」への人材配置を最優先。
- 価格改定の検討 : 2014年のサービス開始以来値上げを実施していないものの、昨今のコスト環境や診療報酬改定の動向を踏まえ、年内に価格体系の見直しを検討。
- 長期ビジョン : 2028年に売上高60億円超 、2040年に市場シェア50% を掲げ、訪問看護領域を超えて慢性期医療全体の情報を繋ぐ 「在宅医療プラットフォーマー」 への進化を目指しています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。