
【L is B】2026年12月期 第2四半期決算Q&A徹底解説:価格改定浸透と「現場特化型AI」で拓く次なる成長フェーズ
StockClub
公開日時: 2026/08/20 09:51
Sentiment Analysis

株式会社L is B(証券コード:145A)は、現場向けビジネスチャット「direct」を主軸に、建設・インフラ等の現場DXを強力に推進するSaaS企業です。本レポートでは、開示された 「2026年12月期 第2四半期決算説明会 Q&A」 の内容をもとに、投資家が注目すべき業績動向、価格改定の進捗、生成AI・フィジカルAI戦略、周辺領域への拡張性、グループシナジーに至るまで、全10の重要トピックを網羅して深掘り解説します。
1. 業績とKPI動向:価格改定と既存顧客ARRの成長メカニズム
主力サービス「direct」を中心とする事業基盤は、建設業界の旺盛なDX投資意欲に支えられて堅調に推移しています。
- 建設業界の景況感と解約耐性 :建設業界の活況に伴いDX投資が積極化しており、同社業績にとって強い追い風となっています。一方で、仮に業界景況感が悪化した場合でも、「direct」は日々の業務インフラとして深く定着しているため、 解約リスク(チャーンレート)は極めて低い と位置づけられています。
- 新規獲得と既存フォローのバランス :今期は「direct」の価格改定を実施したため、既存顧客のフォローと解約防止に営業リソースを一時的に集中させました。その結果、見かけ上の新規社数増は落ち着いて見えたものの、展示会等での新規リード獲得や7月・8月の新規受注は順調であり、下期以降の獲得加速が期待されます。
- 既存ARRの押し上げ要因 :「direct Apps」や「ナレッジ動画」といった周辺プロダクトのクロスセルが継続して伸びており、そこに 価格改定(値上げ)効果が上乗せされる二重の成長構造 となっています。
- ストックOEM売上の伸長 :主に自治体向けに提供しているOEMサービスにおいて、自治体の年度替わり(4月)に伴う新規・追加契約が寄与し、第2四半期で好調な伸びを記録しました。

上記のスライド(Q3〜Q8)では、投資家が最も関心を寄せる 「既存顧客ARRの伸長要因」 や**「価格改定の移行進捗」** 、そして現場DXの現在地が語られています。4月更新の顧客を中心に新価格への移行は順調に完了しており、今後は期が進むごとに年間更新を迎える顧客へ段階的に適用されていく見通しです。
また、ゼネコン現場におけるDX進捗度について、同社は「進んだ現場でも10段階中3〜4程度」と分析しています。依然として紙の書類や非効率な報告フローが残存しており、すでに現場の基盤となっている「direct」を起点に、さらなるDX化・アップセルを推進できる 巨大なアップサイドの余地 が存在することが示されています。
2. AI・技術戦略:「directアシスタント」と現場特化型AIの可能性
同社は生成AI技術を単なるデスクワーク効率化にとどめず、現場業務に直結するソリューションとして実装を進めています。
- 「directアシスタント」の正式リリースと課金モデル :現在トライアル中の「directアシスタント」は、 年内の正式リリース を予定しています。課金体系は個別のユーザー単位ではなく、組織や現場単位で一定のトークン量を利用できる プラン課金・従量課金モデル を想定しており、利用拡大に伴うARPU向上が期待されます。
- 現場特有の課題を解決するAI機能 :「direct」のトークンルームにAIを実装し、現場の写真を送信するだけでAIが危険箇所を自動指摘するなど、デスクワーク用AIとは一線を画す 「PCを使わない現場ワーカー」向けの独自価値 を提供します。
- 複数LLMの最適チューニング :複数の主要生成AIモデルから最適なものを同社独自にチューニングし、現場の安全要件を満たすセキュリティや誹謗中傷対策を徹底した上で提供しています。
- 社内開発生産性の飛躍 :自社開発部門においても生成AIを本格活用しており、大幅な人員増員を行わずに高品質な開発体制を維持・強化しています。

このスライド(Q9〜Q13)は、L is Bの 中長期的な技術競争力の核心 を示しています。今後到来する「フィジカルAI」時代において、同社は「direct」「ナレッジ動画」「タグショット」等を通じて日々蓄積される膨大な「現場データ」をAIと連携させるハブ(基盤)を目指しています。
現場ワーカーはPCの前に座らないため、テキスト要約中心の汎用AIでは課題を解決できません。現場巡回や安全パトロール、施工管理の現場でスマートフォン1つで機能する現場AIを提供できる点こそが、同社の強力な参入障壁となります。
3. 事業拡大戦略:一点突破からの水平展開とインフラ領域への進出
同社は創業以来の強みであるソフトウェア設計思想を活かし、建設業界から周辺産業への横展開を加速させています。
- 「一点突破」の事業思想 :ジャストシステム出身者を中心に創業された背景から、戦線をむやみに広げず、まずは 「現場」という特定領域で圧倒的トップシェアを獲得 し、そこを起点に周辺領域へじわじわと広げていく堅実なポジショニング戦略を徹底しています。
- プラント・インフラ・重電業界への拡大 :大手プラント企業の運用・点検自動化ニーズや、上下水道展への出展などを通じて、建設以外の現場DX需要を積極的に取り込んでいます。スマホ利用が制限される現場でも「ナレッジ動画」から導入するなど、多彩なプロダクトラインナップを武器にした柔軟なアプローチを展開しています。
- スタートアップ投資とパートナー連携 :顧客の多岐にわたる課題に対応するため、自社開発のみに拘泥せず、特定領域に強みを持つスタートアップへの出資・連携を推進し、顧客提供価値の最大化と収益機会の拡大を図っています。スパイダープラス社等の提携先とも良好な協力関係を維持しています。
4. グループ会社動向:IU BIM STUDIOの成長とストック化
建設DXの重要領域であるBIM(Building Information Modeling)を担う子会社「IU BIM STUDIO」の構造改革も着実に進展しています。

上記のスライド(Q21〜Q25)で説明されている通り、IU BIM STUDIOでは売上構造の質的転換が進んでいます。前期から前々期にかけて計上された大阪・関西万博関連の特需(パビリオン設計等のショット売上)が一巡した一方で、現在は 高収益かつ安定した「BIM人材派遣等のストック売上」が着実に拡大 しています。
BIM領域の需要拡大に応えるため、第2四半期に2名増員したほか、第3四半期以降も数名規模での採用を計画しており、事業基盤の強化を着実に進めています。
5. 組織・人材戦略と資本政策・IR方針
- 組織力の強化 :営業・マーケティング・サポート部門において前期末比+7名の増員を実施しました。単なるフロント営業だけでなく、PRや営業支援などのバランスを取った組織体制を構築しており、さらなる拡販フェーズに備えています。
- コスト見通し :原価・販管費ともに計画範囲内で推移しています。下期には年1回開催のプライベートイベント「LUC(L is B User Conference)」に伴う広告宣伝費やAI機能導入コストが発生するものの、業績予想の範囲内でコントロールされています。
- 株価・IRおよび資本政策へのスタンス :SaaS業界全体のバリュエーション調整(PER低下)に対しては、一時的なサプライズ施策に依存するのではなく、 業績の着実な成長と丁寧なIR活動を通じて企業価値を向上させる方針 を堅持しています。また、自社株買い等の資本政策についても選択肢として検討しつつ、現在は事業成長と規模拡大への投資を最優先とする姿勢を示しています。
総括:現場インフラとしての地位確立とAIによる第2の成長カーブへ
今回の決算説明会Q&Aを通じて明らかになったのは、L is Bが単なるビジネスチャットツールベンダーから、 「現場データを集約し、AIで現場業務を革新するプラットフォーム企業」 へと順調に進化を遂げている姿です。価格改定によるARRの底上げをベースに、「directアシスタント」の正式展開やBIM・インフラ領域への水平展開が進むことで、強固な収益基盤と高い中長期成長性が両立される展開が期待されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。