
インフォメティス (281A) 2026年12月期 第2四半期決算ディープダイブ:大手電力との協業加速と次世代スマートメーターを見据えた成長戦略
StockClub
公開日時: 2026/08/19 09:52
Sentiment Analysis

エグゼクティブサマリー
独自の電力データ解析技術(NILM:Non-Intrusive Load Monitoring/機器分離推定技術)を展開する インフォメティス(証券コード: 281A) は、2026年12月期第2四半期(累計)において 大幅な増収と損益の大幅な改善 を達成しました。電力需給調整や次世代スマートメーター導入に向けた開発受託が牽引し、売上高・各利益段階ともに期初計画を上回る進捗を示しています。
事業面では、国内旧一般電気事業者10社中 5社との協業関係 を構築し、市場の急速な変化(AI・データセンター新設に伴う電力需要増、再生可能エネルギー普及による出力制御問題など)を背景とした デマンドレスポンス(DR)関連需要 を確実に捉えています。さらに、将来の「次世代(第2世代)スマートメーター」全世帯普及期におけるプラットフォーム確立に向け、現行メーター段階から先行投資と顧客獲得を加速させています。
海外展開においても、英国でのダイキン(Daikin UK)との協業によるヒートポンプ自動制御サービスの展開を着実に進め、欧州本土への進出調査を開始しました。本レポートでは、同社の2026年12月期第2四半期決算の数値分析、足元で進む電力事業者との協業詳細、資金調達を含む成長投資の狙い、そして2030年に向けた中長期成長シナリオを網羅的に解説します。
1. 2026年12月期 第2四半期 決算概況と収益構造の分析
業績ハイライト:売上総利益率の劇的な改善と計画上振れ
第2四半期累計期間における業績は、 売上高342百万円(前年同期比+36.3%増、計画比+11.6%増) となり、期初計画を35百万円上回って着地しました。損益面でも、 売上総利益が234百万円(前年同期比+75.9%増、計画比+24.0%増) 、経常損失は▲120百万円(前年同期比97百万円改善、計画比108百万円改善) と、大幅な赤字縮小を達成しています。

このスライドは、売上高の伸長のみならず 売上総利益率が前年同期の53.0%から68.5%へと15.5ポイントも急改善 した点、および販管費のコントロール(計画比▲16.8%削減)によって営業損益・経常損益が大幅に計画を超過改善した事実を示しています。単なる売上拡大ではなく、収益性の高い案件の寄与とコスト統制が同時に機能していることが読み取れます。
売上領域別の要因分析
売上高の内訳推移を見ると、領域ごとのダイナミズムが明確に表れています。
- その他(開発受託領域) :188百万円(前年同期の86百万円から約2.2倍に急拡大)
- 次世代(第2世代)スマートメーターに関連するシステム開発受託や、蓄電池・エコキュート制御等の電力需給バランス改善に資するサービス開発案件が大きく伸長しました。これらは将来のストック型サービス提供への足がかりとなる先行開発です。
- プラットフォーム・アプリ提供 :153百万円(前年同期は164百万円)
- 大手賃貸住宅向けサービスが2026年3月末で終了した影響が出たものの、住宅設備向けサービス「ienowa」等の伸長により影響を最小限に抑え、事前の事業計画に織り込み済みの水準で推移しています。
- 成果報酬型で導入を進める「BridgeLAB DR」の本格的な売上・利益貢献は2026年12月期後半以降に見込まれています。
- アップフロント(機器販売等) :1百万円(前年同期は0.8百万円)
- パートナー企業が保有する在庫で需要に対応しているため、電力センサー付属品等の出荷にとどまっています。
ARR(年間経常収益)の底打ちと回復見通し
ARRは第1四半期比で横ばい(202百万円)となりましたが、賃貸向け契約終了の影響を一過性のものとして吸収しつつあり、デマンドレスポンス支援サービスの受注増や住宅設備向けの堅調な需要を背景に、 2026年12月期後半からの再拡大フェーズ へ向かう見通しが示されています。
2. 事業環境の構造変化と「先行投資」の戦略的意図
電力需給の逼迫・価格高騰と「上げDR」ニーズの爆発
日本の発電電力量の約7割を火力が占める中、地政学リスク等による燃料価格高騰は小売電気事業者の収益を圧迫しています。さらに、 AI普及や半導体工場の新増設に伴い、今後10年の電力需要想定が大幅に上方修正(2034年度に2024年度比約6%増・8,524億kWh) されたことで、発電所新設以外の需給調整手段が不可欠となっています。
特に、昼間の太陽光発電余剰に伴う「出力制御」問題と、他時間帯の需給逼迫が併存する中、電気の使用を抑制する従来の「下げDR」だけでなく、昼間に蓄電池充電やエコキュートの沸き上げを行う 「上げDR」の重要性が飛躍的に高まっています 。
大手電力5社との協業進展とアプローチ戦略
インフォメティスは、従来の東京電力グループ、中国電力、四国電力に加え、新たに 関西電力 および 九州電力 との協業を開始しました。これにより、 旧一般電気事業者全10社中、半数の5社との連携 が実現しています。

上記スライドは、同社が なぜ次世代スマートメーターの本格普及(2026年以降順次)を待たずに「今」投資を前倒しするのか という核心的な成長ロジックを示しています。
- シナリオ1(普及後アプローチ) :次世代メーター導入後に事業スキームや基盤開発を開始すると、垂直立ち上げができず大きな機会損失が生じる。
- シナリオ2(同社の戦略) :現行(第1世代)スマートメーターの段階で「BridgeLAB DR」やデータ連携基盤を先行導入し、足元で売上を立てながら顧客基盤と電力会社との連携パイプラインを確立。次世代メーターへの物理的交換が始まった瞬間に、 スムーズかつ爆発的に高精度サービスへアップグレード(垂直立ち上げ) させる。
この戦略を加速させるため、同社は第9回新株予約権の行使完了(370百万円調達)に続き、2026年7月に 第10回新株予約権(行使価額修正条項付、調達概算額867百万円)を発行 し、DR関連サービスを中心としたシステム開発・人材獲得・アライアンス構築への機動的な資金投下を実行しています。
3. 海外展開の進捗とグローバル市場における競争力
英国でのダイキンとの協業モデルと欧州本土への横展開
英国では、脱炭素政策の一環として2025年以降の新築住宅でのガスボイラー設置が禁止されるなど、 ヒートポンプ式給湯器への移行(2028年に年60万台予測) が急加速しています。インフォメティスは協業パートナーである Daikin UK のヒートポンプ式給湯器「UP Series」向けに、AI在宅検知に基づく自動制御技術を提供しています。
英国で培った10年以上の事業実績と NILM国際標準化(国際規格認定) の実績を武器に、同社はすでにドイツ・イタリア・フランス・スペインを中心とする欧州本土市場、さらにはアジア地域(台湾、タイ、マレーシア等)への展開に向けた調査・実証を開始しています。将来的に海外売上比率を大きく引き上げる基盤づくりが順調に進捗しています。
4. 中長期成長ロードマップ:2030年度の姿
2026年12月期 通期見通し
2026年12月期の通期業績予想については、 売上高845百万円、経常損失▲350百万円 が据え置かれています。第2四半期時点で進捗率は売上高40.4%ですが、電力業界特有の検収時期の偏りから第4四半期に業績が集中する季節性があり、下期の納期・進捗を見極めながら計画達成を目指す方針です。
2030年度に向けた中期経営計画

上記スライドは、同社の中期的な飛躍を定量的に示したロードマップです。次世代スマートメーターの設置が本格化する2027年度以降、売上・利益ともに非連続な成長が描かれています。
- 2025年(実績) :売上高530百万円、経常損失▲721百万円
- 2026年(予想) :売上高845百万円、経常損失▲350百万円
- 2027年(計画) :売上高1,493百万円、 経常利益205百万円(黒字化)
- 2028年(計画) :売上高2,551百万円、経常利益877百万円
- 2029年(計画) :売上高4,260百万円、経常利益1,902百万円
- 2030年(計画) :売上高6,512百万円、経常利益3,058百万円(経常利益率47.0%)
特筆すべきは、2030年度時点における ストック型収入比率が81%(5,256百万円) に達する計画となっている点です。従来の「家庭ごとに専用センサーを工事・設置するモデル(年間売上数億円規模)」から、「電力会社が全戸(全国約6,078万世帯)に設置する次世代スマートメーターのデータを活用するSaaSモデル(潜在市場数十億円以上)」へと構造転換を果たすことで、限界利益率が極めて高いストックビジネスへと変貌を遂げる設計となっています。
5. まとめと今後の注目ポイント
インフォメティスの2026年12月期第2四半期決算は、足元の損益改善を着実に達成しながら、中長期の大規模な市場転換点(次世代スマートメーター普及)に向けた 戦略的な布石を完璧なタイミングで打っている ことを示しました。
今後のモニタリングにおける重要ポイントは以下の通りです:
- 下期における「BridgeLAB DR」の成果報酬および開発受託の進捗と通期計画達成度
- 大手電力会社(現在5社)との実証実験から本番商用サービスへの移行ペース
- 新株予約権を通じた成長資金の調達進捗と、DR・NILM領域での開発投資効率
- 英国Daikin UK経由の導入台数推移および欧州主要国でのアライアンス進展
エネルギー危機の深刻化と電力DXの波を背景に、同社の保有する高精度NILM技術と電力データプラットフォームが果たす役割は一層拡大していくと考えられます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。