
日本ビルファンド投資法人 2026年6月期 決算ディープダイブ:賃料増額加速と戦略的物件入替で描くEPU/DPU持続的成長シナリオ
StockClub
公開日時: 2026/08/18 09:56
Sentiment Analysis

日本ビルファンド投資法人(NBF)の2026年6月期(第50期)決算は、堅調なオフィス需要の回復と戦略的な資産入替を背景に、強固な収益基盤と将来の成長モメンタムを示す内容となりました。本レポートでは、業績ハイライト、内部・外部成長の進捗、財務戦略、中長期のEPU(1口当たり当期純利益・売却益除く)およびDPU(1口当たり分配金)の成長戦略について詳細に解説します。
1. 第50期決算実績と業績ハイライト
第50期(2026年6月期)における営業収益は 538億5,800万円 (前期比+10.9%)、営業利益は 266億9,400万円 (同+25.8%)、当期純利益は 243億5,400万円 (同+26.2%)となりました。住友電設ビルの譲渡に伴う 不動産等売却益51億9,200万円 を計上したことや、既存物件の賃貸収入増加が収益を大きく押し上げました。
1口当たり分配金(DPU)は 2,489円 (前期比+35円、+1.4%)となり、売却益の一部を圧縮積立金へ繰り入れつつも着実な分配金水準を維持しています。また、売却益を除いた巡航ベースの実質的な収益力を示すEPUは 2,173円 となりました。
2. 今後の業績予想と収益のモメンタム

上記のスライドが示す通り、今後の業績見通しにおいては、保有物件の稼働率を 98%台の高水準で継続 させながら、不動産賃貸収入を第50期実績から第52期(2027年6月期)予想にかけて 22億700万円(+4.9%)増加 させる計画となっています。この増収分のうち、既存物件の賃料改定やテナント入替による 内部成長が19億5,700万円(+4.3%増) と大部分を牽引する構造です。
次期(第51期:2026年12月期)の予想では、営業収益505億200万円、当期純利益199億6,800万円、DPU 2,465円 、EPU 2,240円 を見込んでいます。売却益の剥落により一時的に純利益は減少するものの、巡航ベースのEPUは前期比+3.1%と拡大基調が続きます。さらに第52期(2027年6月期)には、営業収益510億1,600万円、当期純利益203億6,300万円、DPU 2,541円 、EPU 2,310円 へとさらなる増益が予想されています。
3. オフィス賃貸市場の環境と内部成長の加速

好調な内部成長の背景には、東京都心部を中心とするオフィス賃貸市場の急速な需給改善があります。上記の市場データが示すように、東京ビジネス地区の平均空室率はピーク時の6.48%(2023年6月)から 1.95%(2026年7月)まで大幅に低下 し、極めてタイトな需給関係となっています。これに伴い、平均募集賃料も 坪単価23,287円 へと力強い上昇トレンドを描いています。
この良好なマーケット環境を捉え、NBFの内部成長KPIは以下のように進捗しています。
- 増減賃内訳(件数ベース) : 2026年1〜6月の賃料改定において、 増額合意の割合は90.6% に達し、面積ベースの増額賃料改定率は 92.1% を記録しました。
- レントギャップの拡大 : マーケット賃料と継続契約賃料の乖離を示すレントギャップは、第48期の8.1%、第49期の12.5%から 第50期には20.4%へ拡大 。今後の賃料増額ポテンシャルが一段と高まっています。
- 契約形態の安定性 : 定期借家契約の割合は 58.2% 、平均賃貸借契約期間は 4.0年 を維持しており、ポートフォリオの安定性と賃料改定機会の確保が両立されています。
4. 成長戦略のアップデート:EPU・DPU成長目標の引き上げ

金利上昇環境を見据え、NBFは中長期の成長目標を上方修正しました。従来は「既存物件の不動産賃貸収入の年間+2.0%以上増加」を前提に、内部成長+2.0〜2.5%、外部成長+0.5〜1.0%、合計で EPU・DPUの年間+3.0%以上増加 を目指していました。
今回の改定では、レントギャップの拡大と強固なリーシング力を背景に、 既存物件の不動産賃貸収入の増加ペースを年間+3.0%以上 へと引き上げました。これにより、「 不動産賃貸収入の増加 > 金利コストの増加 」の構図を確実に確立し、内部成長+2.5〜3.0%、外部成長+0.5〜1.0%、合計で 年間+3.5%以上のEPU・DPU成長 を目指すアグレッシブな方針を打ち出しています。
内部留保(第50期末残高:192億円)を機動的に取り崩し・繰入することで、売却益のボラティリティを平滑化し、持続的かつ階段状のDPU成長を実現するスキームが整えられています。
5. ポートフォリオの質的向上と戦略的外部成長
NBFは資産規模の拡大のみならず、物件入替(キャピタル・リサイクル)を通じたポートフォリオの若返りと収益性向上を推進しています。
- 取得物件 : 「日本橋本町M-SQUARE」(取得価格321億円、NOI利回り3.3%)、「豊洲ベイサイドクロスタワー(追加取得)」(148億円、NOI利回り3.7%)、「西新宿三井ビルディング(追加取得)」(2億円、NOI利回り9.4%)を取得。
- 譲渡物件 : 「住友電設ビル」(譲渡価格100億円、NOI利回り2.3%、譲渡益51億円)、「NBF札幌南二条ビル」(19億円、NOI利回り4.8%、譲渡益2億円)を売却。
低利回りの築古物件を売却して多額の売却益を顕在化させつつ、高規格・好立地の旗艦物件を取得・追加取得することで、ポートフォリオ全体の質とキャッシュフローの質的向上を図っています。
第50期末時点の 資産規模は1兆5,608億円 (70物件)、 鑑定評価額は1兆8,240億円 に達し、含み益は 3,734億円 (含み益率25.7%)と過去最高水準の含み資産を保持しています。
6. 財務マネジメントとESG・サステナビリティ
- 強固な財務体質 : LTV(総資産ベース)は 42.6% (目標レンジ36〜46%)、鑑定LTVは 34.0% と極めて健全な水準にあります。借入余力は約920億円(LTV46%換算)を有しています。
- 金利戦略 : 長期固定金利比率は 76.9% 、平均調達金利は 0.82% 、平均残存年数は 5.12年 です。格付はJCR「AA+」、R&I「AA」、S&P「A+」と国内最高水準を維持しています。
- サステナビリティの深化 : 保有物件の グリーンビルディング認証取得率は100% (延床面積ベース)を達成。照明LED化率は77%まで進捗し、2028年までに92%へ引き上げる計画です。GHG排出量(Scope 1+2)は2021年比で 74.4%削減 を達成し、2030年ターゲット(42%削減)を前倒しでクリアしています。
総括
日本ビルファンド投資法人の第50期決算は、都心オフィスの需給引き締まりを的確に捉えた賃料増額の加速、戦略的物件入替による含み益の実現、そして金利上昇を上回るトップライン成長モデルへの進化を明確に示す結果となりました。盤石な財務基盤と三井不動産グループの総合力をレバレッジに、中長期的なEPU・DPUの拡大トレンドが継続しています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。