
朝日インテック 2026年6月期 決算および2027年6月期 業績見通し ディープダイブレポート
StockClub
公開日時: 2026/08/14 12:39
Sentiment Analysis

朝日インテック株式会社の2026年6月期決算は、主力のメディカル事業およびデバイス事業の双方でグローバルな需要拡大が続いたことに加え、円安による為替効果や生産性改善が寄与し、 売上高・各種利益ともに過去最高を更新する大幅な増収増益 を達成しました。また、続く2027年6月期についても二桁の成長を見込んでおり、堅調な拡大ペースが持続する見通しが示されています。
本レポートでは、決算説明資料から抽出した10の主要トピックに基づき、2026年6月期の業績要因、セグメント別・地域別の詳細、財務・キャッシュ・フローの状況、そして2027年6月期の成長戦略と業績予想について包括的にまとめます。
1. 2026年6月期 連結業績ハイライトと計画比での上振れ
2026年6月期の連結業績は、 売上高1,454億19百万円(前期比+21.2%) 、営業利益452億18百万円(前期比+50.3%) 、経常利益451億85百万円(前期比+52.8%) 、親会社株主に帰属する当期純利益320億75百万円(前期比+151.8%) となりました。1株当たり当期純利益(EPS)は 120.59円 (前期は46.92円)に達しています。
以下のスライドは、2026年6月期の業績実績と前期実績との比較を取りまとめたハイライトデータです。

【スライドの解説と数値の背景】
上記スライドが示す通り、売上高の伸長(+253億94百万円)に対し、 営業利益の伸び(+151億39百万円、増減率+50.3%) が著しく高く、利益率の劇的な改善が見られます。売上総利益率は前期の67.7%から 70.4%へ2.7ポイント上昇 しました。為替影響を除いた実質ベース(前期と同条件の為替レートを適用した場合)においても、売上高は1,387億30百万円(前期比+15.6%)、営業利益は413億29百万円(前期比+37.4%)となっており、為替の追い風を除いても事業自体が極めて力強く拡大したことが分かります。 また、期初および期中に発表された修正計画に対しても、売上高で+42億77百万円(+3.0%)、営業利益で+29億98百万円(+7.1%)、当期純利益で+15億18百万円(+5.0%)となり、 全ての損益項目で修正計画を上回る結果 となりました。
2. セグメント別の収益状況:メディカル・デバイス両事業の伸長
セグメント別では、売上高の約87%を占める メディカル事業 および13%を占める デバイス事業 がともに順調な拡大を記録しました。
- メディカル事業 :
- 売上高: 1,267億98百万円(前期比+17.6%)
- 営業利益: 461億90百万円(前期比+38.1%)
- 営業利益率: 36.4%(前期は31.0%)
- デバイス事業 :
- 売上高: 186億20百万円(前期比+52.1%)
- 営業利益: 84億85百万円(前期比+83.5%)
- 営業利益率: 45.6%(前期は37.8%)
デバイス事業の大幅増収増益には、新たにグループ入りした ニッタモールド社の連結子会社化(売上増効果+27億13百万円、営業利益増効果+2億36百万円) が貢献していますが、同社の影響を除いた既存ベースでも売上高+29.9%、営業利益+78.4%という極めて高い成長を達成しています。
3. メディカル事業の動向(地域別・患部領域別)
地域別動向
メディカル事業の海外売上高は 1,096億87百万円(前期比+19.6%) となり、全地域で増収を達成しました。
- 日本 : 売上高 171億11百万円(前期比+6.5%)。循環器領域でPCIガイドワイヤーや貫通カテーテルが増加したほか、非循環器の末梢血管系が堅調に推移しました。
- 米国 : 売上高 261億86百万円(前期比+13.6%)。自社ブランド製品を中心にPCIガイドワイヤー、貫通カテーテル、腹部・末梢血管系製品が順調に伸長しました。
- 欧州 : 売上高 278億73百万円(前期比+15.4%)。直販・代理店取引ともに好調で、為替影響考慮後でも前期比+4.5%増となりました。
- 中国 : 売上高 374億17百万円(前期比+32.3%) 。高い市場成長率に加え、 市場シェアの拡大や他地域からの流入減少 が奏功し、為替影響考慮後でも +24.1% の非常に高い実質成長を示しました。
患部領域別動向
- 循環器領域 : 売上高 947億78百万円(前期比+16.7%)。主力であるPCIガイドワイヤーおよび貫通カテーテルが全地域で成長を牽引しました。
- 非循環器領域 : 売上高 243億70百万円(前期比+28.4%)。末梢血管系、腹部系、脳血管系製品が海外市場を中心に好調に推移しました。
- OEM領域 : 売上高 76億50百万円(前期比+0.7%)。国内の取引先動向による減少を米国の開発受託取引の増加でカバーしました。
4. 営業利益の増減要因分析
2026年6月期の営業利益が前期比+151億39百万円(+50.3%)と大幅に増加した要因について、以下の要因分解スライドをもとに分析します。

【スライドの解説と数値の背景】
この増減要因グラフから、営業利益増加の最大の原動力は 「需要拡大等に伴う売上高増加(+178億90百万円)」 と**「生産性改善等に伴う粗利率向上(+33億21百万円)」** であることが分かります。売上増加と工場稼働率の向上・コスト低減活動が合わさり、粗利益段階で大きな押し上げ効果を生みました。 一方、販管費(SGA)は 60億72百万円増加 しました。この主な内訳は以下の通りです:
- 研究開発費の増加(△11億24百万円) : 将来の技術革新に向けた投資を強化。
- 研究開発費以外のSGA増加(△6,085百万円) : 米国を中心とした営業・販売促進策の強化、人件費の増加、ニッタモールド社の連結化に伴う費用増など。
- のれん償却額等の減少(+11億37百万円) : 過去のM&Aに伴うのれん償却費の減少がプラスに寄与。
なお、為替影響によるプラス効果(+38億89百万円)を除いた 実質ベースの営業利益増加額も+112億49百万円 に上り、構造的な収益力の高まりが実証されています。
5. 財務基盤とキャッシュ・フローの状況
財務状態
2026年6月期末の総資産は 2,182億85百万円(前期末比+250億98百万円) となりました。現金及び預金(+100億63百万円)や棚卸資産(+51億81百万円)の増加が主因です。負債合計は439億27百万円(同+20億94百万円)にとどまり、純資産合計は1,743億58百万円(同+230億04百万円)へ増加しました。結果として 自己資本比率は79.9% (前期末78.3%)と高水準を維持しており、強固な財務基盤を有しています。
キャッシュ・フロー
- 営業キャッシュ・フロー : +400億95百万円 の収入(税金等調整前当期純利益446億95百万円などによる創出)。
- 投資キャッシュ・フロー : △117億39百万円 の支出(有形固定資産の取得による支出△83億83百万円など)。
- 財務キャッシュ・フロー : △199億71百万円 の支出(自己株式の取得による支出△105億53百万円、配当金の支払△65億34百万円など)。
営業活動から潤沢なキャッシュを生み出し、成長に向けた設備投資を実施しつつ、 自己株式取得を含めた積極的な株主還元 を実行していることが確認できます。期末の現金及び現金同等物残高は 642億64百万円 へ増加しました。
6. 2027年6月期 通期連結業績の見通し
2027年6月期の通期計画において、同社は引き続き海外市場を中心とした需要拡大を背景に、増収増益の継続を見込んでいます。以下のスライドは2027年6月期の決算見通し概要を示しています。

【スライドの解説と数値の背景】
2027年6月期の見通し概要は以下の通りです:
- 売上高 : 1,617億94百万円(前期比+11.3%)
- 営業利益 : 521億27百万円(前期比+15.3%)
- 経常利益 : 526億円(前期比+16.4%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益 : 378億32百万円(前期比+17.9%)
- 予想EPS : 142.59円
前提となる為替レートは、1米ドル=155.00円(26/6期実績154.45円)、1ユーロ=179.00円(同180.11円)、1中国元=22.00円(同22.10円)と、概ね前期と同水準を想定しています。前期と同条件の為替レートを適用した場合の実質ベースでも 売上高+11.4% 、営業利益+16.7% と二桁増益を計画しています。
セグメント別見通し(27/6期計画)
- メディカル事業 : 売上高1,416億43百万円(前期比+11.7%)、営業利益525億15百万円(同+13.7%)。海外全地域での市場浸透継続と非循環器領域の拡大を見込みます。
- デバイス事業 : 売上高201億50百万円(前期比+8.2%)、営業利益98億41百万円(同+16.0%)。医療・産業部材ともに内外の取引先需要を取り込む計画です。
7. 研究開発費および設備投資の計画
研究開発費の推移
同社は将来の成長に向けた技術開発投資を継続的に実施しています。2026年6月期の研究開発費実績は 133億72百万円(売上高比率9.2%) でした。2027年6月期計画では 152億39百万円(売上高比率9.4%) へ増額し、積極的なR&D投資を維持します。なお、開発機能の一部についてタイ工場への移管を段階的に進めており、コスト効率の改善も同時に図られています。
設備投資と生産体制
設備投資額は2026年6月期実績の93億87百万円に対し、2027年6月期計画は 101億97百万円 を見込んでいます(減価償却費は82億74百万円を予定)。大型投資であった 中国工場の立ち上げ(27/6期計画10億66百万円)は一巡化 に向かっており、今後の通常投資は抑制傾向に移行しつつ、グローバルな需要増加に応じた適切な生産能力の確保が進められる計画です。
まとめ
朝日インテックの2026年6月期決算は、世界的なカテーテル治療需要の拡大、自社製品の市場シェア上昇、生産性改善、そして為替のプラス影響が合わさり、 極めて高い収益性を実証する業績 となりました。2027年6月期に向けても、強固な製品競争力とグローバル販売網を武器に、研究開発や設備投資を行いながら二桁の増収増益を目指す集中的な成長シナリオが描かれています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。