
【深掘り分析】T.S.I 2026年12月期第2四半期決算:黒字転換を達成し利益拡大フェーズへ、医療併設型シフトと自社DXで推進する成長ストーリー
StockClub
公開日時: 2026/08/14 12:33
Sentiment Analysis

株式会社T.S.I(証券コード: 7362)の2026年12月期第2四半期決算は、過去の積極的な先行投資期を経て、 明確な業績回復と収益性の向上を示す黒字転換 を果たす節目の期となりました。
本レポートでは、決算説明資料から読み取れる10個の重要トピックを軸に、同社の足元の業績ハイライト、各種KPIの推移、診療報酬改定への対応策、医療併設型モデルへの構造転換、そして中長期的な成長戦略までを網羅的に解説します。
1. エグゼクティブサマリー:大幅な増収増益と黒字転換の実現
同社は、2025年における関東拠点での複数開設や特定技能外国人の受け入れ、DX投資などの先行投資期を経て、2026年12月期より本格的な 利益拡大フェーズ へ移行しています。
- 売上高 : 2,853百万円(前年同期比 +26.1% )
- EBITDA : 184百万円(前年同期比 +392.8% )
- 営業利益 : 72百万円(前年同期は △34百万円の赤字から黒字転換 )
- 経常利益 : 82百万円(前年同期は △10百万円の赤字から黒字転換 )
- 当期純利益 : 51百万円(前年同期は △11百万円の赤字から黒字転換 )
社内予算を上回って推移しており、同社が重要視する利益指標であるEBITDAは通期予想335百万円に対し 進捗率54.9% と順調な進捗を見せています。
2. 連結業績サマリーと主要損益の分析
同社の連結業績における損益構造の劇的な変化を確認するために、以下の連結サマリースライドが極めて重要な意味を持ちます。

【スライド解説:連結業績サマリーの重要性】
上記スライド(P.6)は、前年同期からのV字回復を示した連結損益の要約です。売上高が 前年同期比+26.1%(+591百万円) と大きな伸びを見せていることに対し、営業利益・経常利益・当期純利益の全段階で 前年同期の赤字から大幅な黒字化 を果たしている点が最大の特徴です。 前年に実施した新拠点の初期コスト負担が一巡したことに加え、新拠点での稼働率向上および既存拠点での人員配置最適化が実を結び、利益を生み出す収益構造へとシフトしたことを裏付けています。
3. 上場維持基準の「全項目適合」と「創業以来初の配当決議」
業績基盤の安定化に伴い、同社はガバナンスおよび株主還元面でも大きな進展を発表しました。
- 東証グロース上場維持基準への適合 : 2026年6月末基準日において、流通株式時価総額が537百万円となり、東証グロース市場の上場維持基準(500百万円以上)をクリアしました。株主数・流通株式数・流通株式比率と合わせて 全4項目での適合を達成 しました。
- 創業以来初となる配当の開始 : 2026年12月期より株主還元を開始します。上場5周年を記念した中間特別配当 5円 (6月末)と、期末普通配当 10円 (12月末)を予定しており、成長投資と株主還元の両立を進めています。
4. 2026年6月診療報酬改定の影響と迅速な対応
2026年6月1日に施行された診療報酬改定では、高齢者住まい併設ステーション向けに「包括型訪問看護療養費」が新設され、出来高払いから1日単位の包括評価への転換が行われました。 これにより、6月単体では訪問看護事業(ルーチェ)の収益が一時的に悪化したものの、同社への影響は以下の理由から 限定的かつ一時的 にとどまっています。
- 多角的な事業ポートフォリオ : 売上構成比において、訪問看護(ルーチェ)の比率は6.7%にとどまり、主力のサ高住(アンジェス)44.0%、訪問介護(あんじぇす)46.8%が全体を強固に支えています。
- ハイブリッド型施設による影響分散 : 全50室のうち医療20・介護30を基本としつつ、地域のニーズに応じて受入れ割合を柔軟に変更できる構造を採用しています。
- 現場での打ち手 : 7月以降は稼働率の向上や人員配置の見直し(稼働率連動型)、SNS・広報強化による営業力向上により、すでに回復基調を確認しています。
5. 介護事業セグメントの主要KPI推移
同社の事業の根幹を成す介護事業のオペレーション状況を詳細に捉えるためには、各種KPIの推移を追うことが不可欠です。

【スライド解説:介護事業KPIの意義】
上記スライド(P.13)は、サービスの質と収益性を測るための最重要データです。 注目すべき点として、 1年経過拠点の稼働率が96.5% と極めて高い水準(目標97%程度)を維持していることが挙げられます。また、訪問介護の利用単価は処遇改善加算の拡充等により 177,004円 (前期実績170,000円から上昇)へと向上しました。 さらに、人件費率は前年同期比で 1.9ポイント改善の70.1% (1Q実績では69.7%)となっており、新拠点の立ち上げに伴う先行投資の落ち着きと人員配置の適正化が着実に進んでいることを定量的に実証しています。
6. 高収益化を加速させる「医療併設型モデル」への構造転換
同社が今後の利益率向上に向けた最重要戦略として掲げているのが、 医療併設型サ高住へのシフト です。

【スライド解説:医療併設型モデルへのシフト】
上記スライド(P.28)は、従来型施設と医療併設型施設における粗利率の違いと、今後の新拠点開発スケジュールを示しています。 従来の「サ高住+訪問介護」の組み合わせにおける粗利率が15〜20%であったのに対し、「サ高住+訪問介護+訪問看護」を組み合わせた医療併設型モデルでは、粗利率が 20〜30%へと大幅に向上 します。 今後の新規開設は原則としてこの「医療併設型」とする方針が掲げられており、2026年1Qに開設した「アンジェス上溝(54室中20室が医療居室)」を筆頭に、2027年以降に予定される相模原、浜松森田町、一宮西、久我、町田などの新拠点もすべて医療居室を併設する計画となっています。これにより、全社的な利益率の底上げが期待されます。
7. DXと自社システム開発(CareMaster / BillMaster)およびAI活用
業務効率化と収益性の向上を実現するため、同社はテクノロジーの活用にも注力しています。
- 介護記録システム「CareMaster」 : 全社導入を完了し、ペーパーレス化と業務負担軽減を推進。 年間25,000時間の業務削減効果 を算出しています。
- 介護請求システム「BillMaster」 : 2026年6月より自社開発に着手。外部SaaSや外注請求コストをゼロにすることで、 10年間で累計約1億円の費用削減効果 を試算しています。
- AIの現場稼働 : 「DX課」を新設し、「AI店長(日報の自動集約や施設状態の即時把握)」や「AI秘書(スケジュール自動調整や事務削減)」の現場稼働を開始。事務・反復業務を徹底的に削減し、職員が利用者に向き合う時間を最大化させています。
8. 人材獲得戦略(特定技能外国人の積極採用)
介護業界全体の課題である人材確保において、同社は 特定技能外国人制度 を活用した独自の強みを発揮しています。
今期の年間目標50名に対し、すでに 49名が入社・内定済み となっており、目標を数か月前倒しで達成する見込みです。高卒採用と特定技能外国人の安定獲得により、採用コストを抑制しながら質の高い介護スタッフを確保する体制を確立しています。
9. 1棟あたりのユニットエコノミクスと開設計画
同社が標準とする 50室型(医療併設型) の新設拠点における収益モデルは以下の通り定義されています。
- 損益分岐点到達(単月黒字) : 開設後 2〜4か月 (入居者数に合わせた段階的な人員配置により早期達成)
- 累積黒字到達 : 開設後 18か月程度
- 安定稼働時の年間売上 : 250百万円〜 (50室中医療居室20室の場合)
- 安定稼働時の利益率 : 25%程度 (本社費配賦前)
この優れた再現性を持つモデルをベースに、同社はドミナント展開を拡大し、2036年には全国 4,500室 の展開を目指しています。
10. 中長期成長シナリオとスタンダード市場移行へのロードマップ
同社は、2030年までに 流通時価総額10億円 を達成し、東証スタンダード市場への市場変更を行うロードマップを描いています。
- 2026年〜2027年(拡大期) : 訪問看護事業の拡大、ドミナント展開の深化、株主還元の開始。
- 2028年〜2029年(飛躍期) : M&A戦略や資産流動化(資金調達手段の多様化)の検討。
- 2030年(目標) : 東証スタンダード市場への移行。
これを達成するため、 「流通株式比率(現状42.3%)」「EPS(2026年予想81.13円、前期比+50.3%)」「予想PER(10.4倍)」 の3つの変数を意識した複合的な企業価値向上策を推進していく方針です。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。