
KeePer技研 2026年6月期 決算ディープダイブレポート:先行投資による成長基盤の強化とB2B新車市場への急拡大ストーリー
StockClub
公開日時: 2026/08/14 11:54
Sentiment Analysis

KeePer技研 2026年6月期 決算ディープダイブレポート
KeePer技研(証券コード: 6036)の2026年6月期通期決算は、売上高が過去最高を更新した一方で、営業利益は一見すると前年同期比で若干の減益となりました。しかし、その背景には 将来の飛躍的な成長に向けた意図的な先行投資 が存在します。本レポートでは、決算資料から読み取れる業績の実態、成長投資の意図、各セグメントの事業変革、そして今後の見通しまでを詳細に分析・解説します。
1. 2026年6月期 通期業績ハイライトと収益力の実態
2026年6月期の連結業績は、売上高が 259億5,900万円(前年同期比+12.4%) 、営業利益が 69億1,400万円(同-2.6%) 、経常利益が 69億3,000万円(同-2.8%) 、当期純利益が 98億3,000万円(同+101.1%) となりました。
売上高は全セグメントで順調に拡大し、過去最高を更新しました。当期純利益が前年比で2倍以上に拡大した主な要因は、保有していた投資有価証券の売却に伴い 特別利益67億6,200万円 を計上したためです。
以下のスライドは、2026年6月期の通期実績および第4四半期(Q4)の実績をまとめた表です。

【スライド解説:通期実績表の重要性】
このスライドで最も注視すべきポイントは、表の中段および下段に記載されている 「成長投資費用が無かった場合の参考値」 です。 当社は今期、投資有価証券の売却益という特別利益を原資として、 総額10億9,300万円の「将来に向けた成長投資費用」 を販管費として投入しました。この成長投資費用を除いた実質的な本業の収益力を見ると、 営業利益は80億7,000万円(前年同期比+12.8%) 、営業利益率は30.8%(前年比+0.1pt) となり、本業の稼ぐ力は極めて健全かつ強力に成長していることが確認できます。
また、 Q4単体での営業利益は前年同期比+52.5%の26億3,600万円 と劇的に伸びており、期後半にかけて成長スピードが加速している点も極めて重要な事実です。
2. 営業利益の増減益要因:10.9億円の成長投資内訳
営業利益が前年比で減益(-2.6%)となった要因を詳細に把握するため、売上総利益の増加要因と販管費の増加要因を分解して確認します。
以下のスライドは、営業利益の増減益分析を示したウォーターフォールチャートです。

【スライド解説:営業利益の増減益構造】
このスライドから、本業におけるトップラインの拡大が利益を力強く押し上げた構造が明確に理解できます。
- LABO来店台数の増加 :来店台数が前年比+8.3%(747,851台→809,831台)へ増加したことで、 +8億4,600万円の増益要因 となりました。
- FC事業の拡大 :フランチャイズ店の出店加速により、ロイヤリティやケミカル売上が増え +3億800万円の増益要因 となりました。
- 製品事業の拡大 :新車マーケット向けの販売が好調に推移し、 +12億4,900万円の増益要因 となりました。
これらの増収効果に対し、新店オープンに伴う人員補充(人件費-6.9億円)や店舗関連費用(賃借料・減価償却費等-11.71億円)が増加したほか、 特別利益を原資とした成長投資費用-10.93億円 が計上されたことで、表面上の営業利益は69億1,400万円にとどまりました。
成長投資の具体的な内訳は以下の通りです:
- ブランドマーケティング投資(4億3,500万円) :TVCM放映、LABOアプリ開発、キーパー選手権販促、オートサロン出展など認知度強化と集客基盤の構築。
- 人材投資(4億7,700万円) :モビリティベース構想に向けたスタッフの教育訓練費および特別賞与の支給。
- 店舗・業態開発投資(7,600万円) :店舗移転、LABO新業態開発、海外出店調査など。
- その他(1億5,000万円) :M&A・中計関連費用、税制関連対応など。
これらは短期的な利益を犠牲にしてでも中長期の市場シェアを獲得するための戦略的費用であり、実質的な稼ぐ力が毀損したわけではないことが示されています。
3. セグメント別概況①:キーパーLABO運営事業
キーパーLABO運営事業 の売上高は 140億2,800万円(前年比+10.5%) 、営業利益は 21億7,000万円(前年比-20.2%) となりました(成長投資費用除外ベースの営業利益は 29億5,400万円、前年比+8.8% )。
直営店舗とFC店舗のデュアル成長エンジン
- 直営店 :売上高135億6,300万円(前年比+8.2%)。店舗網は 149店舗 へ拡大。年間来店台数は 809,831台(前年比+8.3%) 、平均単価は 16,757円(前年比+0.1%) と高水準を維持しています。
- FC店 :売上高4億6,500万円(前年比+196.2%)。 フランチャイズ募集の本格解禁 により、FC店舗網は前期の19店から 34店 へ急拡大しました。
- 全国店舗網 :直営150店+FC34店= 合計184店舗 に達しています。
「モビリティベース構想」による高付加価値サービスの追加
キーパーLABOを単なるカーコーティング専門店から、車の総合ケア拠点へと進化させる 「モビリティベース構想」 が始動しています。
- 遮熱KeePerフィルム :赤外線94.0%カット、車内温度上昇を抑える高機能フィルム。
- ペイントリペア / ウィンドウリペア :ボディやフロントガラスの小傷・飛石傷をスピーディーに修復するサービス。
- 車販売・買取(車フリマ) :株式会社アラカンが運営する「カババ」と業務提携し、個人間売買プラットフォームの活用による車の価値最大化モデルを展開。
これらの新サービス追加により、既存顧客の来店頻度向上と顧客単価の引き上げを推進しています。
4. セグメント別概況②:キーパー製品等関連事業とB2B新車市場の躍進
キーパー製品等関連事業 の売上高は 119億3,100万円(前年比+14.7%) 、営業利益は 47億4,400万円(前年比+8.2%) と極めて堅調に推移しました。
以下のスライドは、キーパー製品等関連事業のサブセグメント別売上高構成比の推移を示しています。

【スライド解説:新車マーケット構成比の急拡大ストーリー】
このスライドは、当社製品事業の収益構造が大きく変貌を遂げていることを強烈に裏付けています。 2022年6月期(FY'22)時点では、ガソリンスタンドやプロショップ向けの 「アフターマーケット」が全体の81.8% を占めており、新車ディーラー向けの「新車マーケット」は13.5%に過ぎませんでした。 しかし、自動車メーカー各社での純正採用やディーラー店舗での施工導入が急速に進んだ結果、2026年6月期(FY'26)には 新車マーケットの売上高が40億8,500万円(前年比+29.4%) へと激増し、 売上構成比は34.2% まで上昇しました。
主要メーカー別のキーパーコーティング占有率(弊社推定)を見ると、 TOYOTAが12.5%(前年比+21.3%増収) 、HONDAが26.7% 、SUBARUが54.5%(前年比+32.6%増収) 、輸入車ブランド(メルセデス・ボルボ等)が前年比+714.7%増収 と、B2Bチャネルでのブランド浸透が爆発的に進んでいます。
さらに、Q4からは新車ディーラー専売の新高機能商品 「LX KeePer」「LX KeePerプレミアム」 の販売を開始しました。プリウス等のMサイズで約10万円という新車購入時の中心的価格帯をターゲットとした商品であり、今後の新車マーケットでのシェア拡大を加速させる強力なドライバとなることが期待されます。
5. 今後の成長戦略と2027年6月期 業績予測
中長期成長戦略:500店舗網の確立と全天候型店舗への改修
当社は、2031年6月期に向けて 500店舗網(直営店250店+FC店250店) の確立を目指しています。 2027年6月期においては、総額 31億4,000万円 の出店・改修投資を計画しています。
- 新規出店投資 :20店舗の出店計画(23億9,000万円)。直営店を170店舗へ拡大。
- 既存店の全天候化投資 :約20店舗の改修計画(4億円)。近年の猛暑や異常気象に対応するため、店舗のブース空調効率化、電動シートシャッター、イースターカーテンの導入を推進。作業環境の快適化と熱中症対策を両立させ、全天候下で安定した施工品質と稼働率を確保します。
2027年6月期 通期業績予想:V字回復への見通し
前期に投入した10.9億円の成長投資費用が結実し、2027年6月期は再び大幅な増益フェーズへと移行する計画です。
- 売上高 :293億8,000万円(前年比+13.2%)
- 製品事業:138億4,000万円(同+16.0%)
- LABO事業:155億4,000万円(同+10.8%)
- 営業利益 :90億1,200万円(前年比+30.3%)
- 経常利益 :90億1,200万円(前年比+30.0%)
- 当期純利益 :62億2,200万円(前年比-36.7%) (※前期の投資有価証券売却益の反動によるもの)
先行投資が一巡することで、 営業利益率は30.7%へ回復 し、過去最高の営業利益を大幅に更新する見通しです。
株主還元方針
2026年6月期の配当は、特別利益から成長投資費用を控除した利益を原資として 特別配当40円 を付加し、 年間1株当たり100円 (普通配当60円+特別配当40円)を実施しました。 2027年6月期においても、事業成長による創出キャッシュを背景に 同水準の年間11株当たり100円(配当性向43.9%) の配当を維持・予定しており、株主還元への高い姿勢を示しています。
6. まとめ
KeePer技研の2026年6月期決算は、表面的な営業利益のフラット化の裏で、 本業の収益力の向上(実質営業利益+12.8%) 、FC解禁によるLABO店舗網の拡大 、新車ディーラーチャネルの急成長(構成比34.2%へ拡大) 、そして モビリティベース構想によるサービス多角化 という将来の成長に向けた複数の種まきが着実に結実した1年であったと評価できます。
これらの施策が実を結ぶ2027年6月期には、営業利益90億円オーバー(前年比+30.3%)という高成長軌道への復帰が計画されており、同社の事業モデル変革の動向が今後も注目されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。