
エンビプロ・ホールディングス 2026年6月期決算および今後の成長戦略の徹底解説
StockClub
公開日時: 2026/08/14 11:46
Sentiment Analysis

株式会社エンビプロ・ホールディングス(証券コード: 5698)の2026年6月期決算概要および2027年6月期業績見通し、ならびに中長期の重要戦略事業に関する解説レポートです。
当期は、収益認識基準の適用による取引形態変更等の影響で売上高が目減りしたものの、 選別技術の深化や高付加価値品の回収・販売強化、主要金属価格の上昇 により、大幅な増益を達成しました。本レポートでは、業績ハイライト、セグメント別分析、財務構造、株主還元方針、そして将来の成長を担う戦略事業まで総合的に解説します。
1. 2026年6月期 連結業績ハイライト:大幅な増益を達成
2026年6月期の連結業績は、売上高が 44,430百万円(前期比9.5%減) となった一方で、 営業利益は3,224百万円(前期比231.6%増) 、経常利益は3,582百万円(前期比194.6%増) 、親会社株主に帰属する当期純利益は2,423百万円(前期比106.2%増) となり、期初公表の予想を上回る大幅増益を記録しました。
以下のスライドは、2026年6月期の主要財務指標および前期比較・公表予想に対する進捗を示した決算概要です。

スライドの重要性と数値データの解説
このスライドが極めて重要である理由は、売上高の減少と利益の激増という一見対照的な動きの構造が明確に示されている点にあります。売上高は一部取引形態の変更に伴う 収益認識基準の適用 によって前期比 4,660百万円減少 しましたが、事業の実質的な稼ぐ力を表す 限界利益は12,268百万円(前期比24.2%増) 、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費)は4,624百万円(前期比97.2%増) へと拡大しました。 取扱量は 491千トン(前期比19.6%減) と絞り込まれつつも、1トンあたりの収益性を高める取り組み(高付加価値化)が実を結び、経営目標に対する進捗率は営業利益・経常利益ともに 100%超 を達成しました。
2. 経常利益の増減要因分析:売買差異の拡大が牽引
前期比で経常利益が 2,366百万円増加(+194.6%) した主な要因は、 売買差異の拡大(+2,335百万円) です。 具体的には以下の要素が収益向上に寄与しました。
- 選別技術の深化と高付加価値品の回収・販売強化 による粗利益率の向上
- 鉄スクラップ、銅、金、銀などの主要金属価格の上昇 に伴う有利な市況環境
- ダスト処理費や電力費などの変動費改善(+55百万円)および持分法投資利益の増加(+123百万円)
一方で、従業員への定期昇給やベースアップなどの待遇改善に伴い、 人件費差異(▲64百万円) やその他経費差異(▲100百万円)といった固定費の増加がみられたものの、増益効果が固定費増加分を大きく吸収しました。
3. セグメント別の業績動向
各セグメントにおける詳細な業績推移は以下の通りです。
① 資源循環事業
- 売上高 : 23,940百万円(前期比13.9%増)
- セグメント利益 : 2,627百万円(前期比126.6%増)
- 動向 : 金属資源循環分野では、主要金属価格の上昇に加え、高度な選別技術により高付加価値品を抽出・販売したことが収益を底上げしました。また、ポリマー資源循環分野でも構造改革の成果や取引条件の適正化が進み、受注が好調に推移しました。
② グローバルトレーディング事業
- 売上高 : 24,730百万円(前期比21.7%減)
- セグメント利益 : 703百万円(前期比161.3%増)
- 動向 : 取引形態の適正化により減収となりましたが、金属原料トレーディングにおける構造改革の浸透と新販路開拓、市況上昇が相まって利益率は著しく改善しました。なお、ホルムズ海峡の実質的封鎖によるドバイ向け貨物への影響が一部生じました。
③ リチウムイオン電池(LIB)リサイクル事業
- 売上高 : 2,641百万円(前期比56.0%増)
- セグメント利益 : 704百万円(前期比215.7%増)
- 動向 : リチウムやコバルト相場の堅調な推移と、加工受託案件を中心とした取扱量の増加が大幅な増収増益に貢献しました。ただし、加工委託先での火災発生に伴う在庫消失等による特別損失が一部計上されています。
4. 財務状態とキャッシュ・フローの状況
- 資産合計 : 34,712百万円(前期末比+3,413百万円)
- 純資産 : 19,129百万円(自己資本比率 54.1%)
- 営業キャッシュ・フロー : 3,071百万円の獲得(税金等調整前当期純利益3,366百万円や減価償却費1,396百万円など)
- 投資キャッシュ・フロー : ▲910百万円(有形固定資産の取得等)
- 財務キャッシュ・フロー : ▲1,669百万円(借入金の返済や配当金の支払)
現金及び現金同等物の期末残高は 7,386百万円(前期比+522百万円) となり、今後の事業成長に向けた投資余力を維持しつつ、堅牢な財務基盤を構築しています。
5. 2027年6月期 業績見通しとセグメント別計画
2027年6月期の通期連結業績予想は以下の通りです。
- 取扱量 : 550千トン(前期比+12.0%)
- 売上高 : 49,000百万円(前期比+10.3%)
- 営業利益 : 2,700百万円(前期比▲16.3%)
- 経常利益 : 3,100百万円(前期比▲13.5%)
- 当期純利益 : 2,100百万円(前期比▲13.4%)
以下のスライドは、2027年6月期のセグメント別売上高・利益の計画内訳を示しています。

スライドの重要性と数値データの解説
このスライドは、2027年6月期における各事業の成長性と一時的な減益要素を理解する上で不可欠です。 主力である 資源循環事業は売上高26,600百万円(+11.1%)、セグメント利益2,900百万円(+10.4%) と引き続き拡大傾向を見込んでいます。一方で、 LIBリサイクル事業がセグメント利益50百万円(前期比▲92.9%) と大きく落とし込む計画となっています。これは加工委託先の罹災影響により今期の生産能力に制限がかかるためです。また、持続的な賃上げによる 人件費差異(▲340百万円) や、新規設備稼働に伴う 設備費差異(▲224百万円) といった先行投資的な固定費増が全体の利益を押し下げる要因となっています。
6. 株主還元方針:DOE 2.5%を下限とする安定配当
同社は、人件費上昇や積極的な設備投資を行う局面においても、 短期的利益変動に左右されない安定的な株主還元 を行うため、 株主資本配当率(DOE)2.5%を下限 とする配当方針を掲げています。
- 2026年6月期 : 1株当たり配当金 25円 (配当性向 29.4%)
- 2027年6月期予想 : 1株当たり配当金 22円 (配当性向 29.9%)
配当性向30%前後を維持しながら、ROE(2026年6月期:13.6%)の確保と資本効率向上に配慮した還元スタイルをとっています。
7. 中長期の成長を牽引する3つの重要戦略事業
同社はサーキュラーエコノミー(CE)のリーディングカンパニーを目指し、以下の重要戦略分野へリソースを集中投下しています。
① 金銀滓(きんぎんさい)事業:都市鉱山からの回収強化
破砕・焼却残渣からの金銀滓回収技術を起点に都市鉱山を開発する事業です。独自の選別技術と広域回収ネットワークを駆使し、高品位化を推進しています。2026年3月に環境省のガイドラインが改定され、 廃棄物処理施設の発注仕様書手引きに「落じん灰」の資源回収事例が掲載 されたことが強烈な追い風となっています。
② リチウムイオン電池(LIB)リサイクル事業:再成長に向けた基盤整備
市場環境としては、2026年4月施行の指定再資源化製品の対象拡大等により小型LIBの回収量増加が見込まれるほか、系統用・データセンター向け大型蓄電池(ESS)の需要増が期待されます。
以下のスライドは、LIBリサイクル事業における市場環境と今期のアクションプランをまとめたものです。

スライドの重要性と数値データの解説
このスライドは、短期的な業績落ち込みから中長期的な再成長へと繋げるロードマップを示しています。 加工委託先の罹災という内部要因により短期的には減収減益(利益50百万円)を余儀なくされますが、同社はこれを基盤整備の機会と捉えています。具体的なアクションプランとして、 ①既存システムの改善(処理量UPおよびブラックマス回収率向上) 、②大幅な生産能力増強に向けた新工場計画の推進(候補地選定および仕様選定) 、③グループ内外のパートナーとのオープンシナジーによる回収網拡大 の3軸を平行して実行し、中長期的な再成長の準備を進めています。
③ ポリマーCE事業:3つのアプローチによる資源循環
樹脂・プラスチック分野における循環型社会の構築に向け、以下の3形態で事業を推進しています。
- サーマルリカバリー : 複合材前処理破砕機の更新や廃プラ破砕ラインの改良により、低炭素原燃料(RPF等)の供給体制を強化。
- マテリアルリサイクル : 廃タイヤや廃ゴムを活用したCEゴムマットの製造能力増強、再生プラスチックを配合した人工芝用カラーゴムチップの上市。
- ケミカルリサイクル : 廃プラスチックのケミカルリサイクル実証事業に対し、原料調達管理および廃プラ供給を開始。
8. 総合分析とまとめ
エンビプロ・ホールディングスの2026年6月期決算は、収益認識基準の適用による見かけ上の減収を伴いつつも、 高付加価値化戦略と市況の追い風により営業利益が前期比3.3倍と劇的に向上 した実り多い年度となりました。
2027年6月期は、LIB事業における一時的な生産制限や、ベースアップ・設備投資に伴う固定費増加によって減益予想となっていますが、これは次なる飛躍に向けた「基盤再構築の期間」として位置づけられます。 金銀滓事業における法制度の追い風 、LIB新工場計画 、ポリマーCE事業の社会実装 といった施策が着実に進展しており、中長期的なサーキュラーエコノミー市場の拡大とともにさらなる事業成長が期待される構造となっています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。