
【ティムス(4891)2026年12月期中間期決算】主力TMS-007のグローバル治験進捗とTMS-008のPh2a開始準備、CORXEL社の大型資金調達で加速する開発戦略を網羅解説
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公開日時: 2026/08/14 11:27
Sentiment Analysis

株式会社ティムス(証券コード: 4891)は、自社創薬パイプラインの研究開発を進める東京農工大学発のバイオベンチャーです。同社は決算期変更を行い、2026年12月期中間期(2026年1月1日〜2026年6月30日)の決算説明資料を公表しました。
本レポートでは、資料から抽出した 10の重要トピック を軸に、主力の急性期脳梗塞治療薬候補「 TMS-007(JX10) 」や急性腎障害治療薬候補「 TMS-008 」の開発進捗、提携先CORXEL社の動向、パイプライン全体の全体像、および財務ハイライトについて詳しく解説します。
本決算から読み解く10の主要トピック
- TMS-007(JX10)のグローバルPh2/3試験(ORION試験)が前倒しで順調に進捗
- TMS-007におけるCORXEL社とのライセンス構造と日本国内開発販売権の保有状況
- 日本において2026年2月にORION試験の最初の被験者登録が完了、年内にPart1組入れ完了予定
- 新規急性腎障害(AKI)予防・治療薬候補 TMS-008 のPh2a試験に向けた計画とPMDA事前面談の実施
- TMS-008における独自のダブルメカニズム(抗酸化活性とsEH阻害)
- 提携先CORXEL社による2億8,700万ドル(約453億円)の大型資金調達完了と開発推進
- 治療抵抗性高血圧薬候補 JX09 のPhase 1完了と戦略的開発保留の背景
- 早期パイプライン(新規経口sEH阻害剤 R-002、脊髄損傷治療薬 TMS-010等)の拡充
- FY2026中間期の営業費用(3.92億円)および営業損失(△3.92億円)の分析
- 約24.59億円の現金及び現金同等物を保有する健全な財務基盤と通期費用見通し
1. 主力開発品「TMS-007(JX10)」の臨床開発と権利構造
ティムスが創製した TMS-007(JX10) は、「 血栓溶解 」と「 脳細胞保護 」という2つの異なる作用機序をあわせ持つ、これまでにない革新的な急性期脳梗塞治療薬候補です。日本で実施されたPh2a臨床試験においては、主要評価項目である「mRS 0-1(障がいがない状態または顕著な障害がない状態)の患者比率」でオッズ比3.34(P<0.05)と、プラセボ群に対して高い優位性を実証しました。
臨床開発およびライセンス契約の経緯として、2018年に米国バイオジェン(Biogen)社と大規模なオプション契約を締結した後、2024年にすべての権利が CORXEL社 (旧Ji Xing Pharmaceuticals)へと移転されました。この権利移転に伴う契約変更の構造を示すのが以下のスライドです。

【スライド解説:TMS-007の権利構造の変更と重要性】
このスライドは、TMS-007の権利がバイオジェンからCORXELへと移転した際のリライセンス構造を示しています。ティムスにとっては、契約金額が最大3億3,500万ドルから 最大3億6,750万ドル(マイルストーン総額)+ロイヤリティ へと拡大されただけでなく、 TMS-007(JX10)の日本国内における開発販売権をティムス側が取得・確保 した点が大きな意味を持ちます。これにより、グローバル開発の巨額費用はパートナーであるCORXEL社が負担しつつ、日本市場においてはティムス自らが主導権を持って事業化を進められるという、自社リスクを抑えた魅力的なアライアンス構造が構築されています。
現在、CORXEL主導で世界20 ヶ国・150施設、合計740名の組み入れを予定する グローバルPhase 2/3試験(ORION Study) が進行中です。日本では2026年2月に最初の被験者登録が行われ、2026年内にはPart 1(Ph2パート、240名予定)の被験者組み入れが完了する見通しとなっており、当初予定より前倒しで順調に進捗しています。
2. 急性腎障害(AKI)領域に挑戦する「TMS-008」の開発動向
ティムスのパイプラインでTMS-007に次ぐ柱として期待されているのが、 TMS-008 (新規急性腎障害予防・治療薬候補)です。術後急性腎障害(AKI)は心臓手術患者などの予後を大きく左右する重篤な合併症でありながら、現在有効な治療薬が存在しないアンメット・メディカル・ニーズの極めて高い領域です。
TMS-008は、 抗酸化活性 と可溶性エポキシヒドロラーゼ(sEH)阻害 に基づく抗炎症作用を併せ持ち、虚血・再灌流障害に起因する尿細管障害や糸球体濾過機能の低下を抑制する効果が非臨床モデルで確認されています。
開発ロードマップとしては、2026年H1に Phase 2a臨床試験のデザイン検討・準備およびPMDA事前面談 を終えており、2026年H2には治験計画届の提出と 最初の患者への投与(First Patient In) を予定しています。被験者の組入れ期間は1年程度を見込んでおり、2027年H2の組入れ完了を目指して着実に準備が進められています。
3. 多角化する創薬パイプラインの全貌とロードマップ
ティムスは特定単一の化合物に依存するリスクを避け、多彩な作用機序を持つパイプラインの拡充を進めています。全パイプラインの進捗と開発フェーズを一覧化したのが次のスライドです。

【スライド解説:パイプライン一覧と開発ステージの全貌】
このスライドは、同社が保有する各プロジェクトの 開発コード・適応症・作用機序(MoA)・開発段階・地域ごとの権利帰属 を網羅的にまとめています。
- TMS-007(JX10) : 急性期脳梗塞を対象にPh2/Ph3(日本:ティムス、日本以外:CORXEL)。
- TMS-008 : 急性腎障害を対象にPh2a開始直前ステージ(世界権益をティムスが保有)。
- JX09 : 治療抵抗性高血圧を対象に豪州でのPh1臨床試験を完了(CORXEL主導で開発方針を検討・保留中)。
- TMS-010 : 血液脳関門保護(BBSCB保護)を機序とする脊髄損傷治療薬候補(非臨床)。
- R-001 / R-002 : レゾルビン類縁体や新規経口sEH阻害剤といった早期探索パイプライン。
自社開発(TMS-008等)と共同開発/導出(TMS-007等)の調和が取れたポートフォリオであり、多様な疾患領域に広がる持続的な創薬エコシステムが視覚的に把握できます。
2026年度以降の主要マイルストーンとしては、 2026年H2のTMS-008 Ph2a治験届提出・投与開始 、2027年H1のORION試験Part 1トップラインリザルト 、新規経口sEH阻害剤(R-002)の予備的毒性・安全性試験(2027年H1) などが予定されています。
4. パートナーCORXEL社の大型資金調達と学術トピックス
ティムスの開発を加速させる大きな外部環境の変化として、パートナー企業である CORXEL社の大型資金調達 が挙げられます。2026年1月22日、CORXEL社は 2億8,700万ドル(1ドル=158円換算で約453億円) の資金調達完了を発表しました。これは2025年の米国非上場バイオテック企業における資金調達額と比較しても極めて大型の案件です。
この調達には、既存株主のRTW Investmentsのほか、SR One、TCG Crossover、RA Capital Management、HBM Healthcare Investmentsといった世界有数のバイオ医療系機関投資家が参画しています。資金の主な使い道として肥満症治療薬候補CX11に加え、 JX10(TMS-007)およびJX09の開発 が明記されており、TMS-007のグローバル治験遂行における資金的懸念が解消されたことはティムスにとっても大きな追い風です。
また研究面では、九州大学との急性腎障害予防・治療薬に関する共同研究の開始や、SMTP化合物に関する論文が「Biological and Pharmaceutical Bulletin」誌に掲載されるなど、科学的エビデンスの蓄積が着実に進んでいます。
5. FY2026中間期の業績動向と財務状況
財務面においては、創薬バイオベンチャー特有の費用先行型構造を維持しつつも、適切に研究開発費用がコントロールされています。中間期の損益状況と通期費用見込みは以下の通りです。

【スライド解説:FY2026中間期 損益計算書と通期費用見込み】
このスライドは、FY2026中間期(2026年1月〜6月)の損益実績と2026年12月通期の費用予想を示しています。 当中間期の 営業費用は3億9,200万円(前年中間期比16.9%減) となりました。内訳として 研究開発費が2億3,900万円(同19.7%減) 、販売管理費が1億5,200万円(同12.0%減)であり、前中間期に発生したTMS-008のPh1試験費用が一巡したことで一時的に減縮しています。結果として 営業損失は△3億9,200万円 、中間純損失は△3億9,300万円 となりました。
なお、下期からはTMS-008のPh2a治験開始に伴う費用増加が見込まれており、 通期の営業費用見込みは9億円〜13億円(うち研究開発費6億円〜9億円) と計画されています。
財務基盤とキャッシュ・フローの健全性
- キャッシュ・フロー : 営業活動によるキャッシュ・フローは △3億3,900万円 (研究開発費等の支出)。資金調達による収入(1,700万円)等を反映した結果、 現金及び現金同等物の期末残高は24億5,900万円 (期初比3億2,100万円減)を維持しています。
- 貸借対照表 : 流動資産25億1,200万円(うち現預金24億5,900万円)、純資産24億1,000万円(自己資本比率 95.8%)となっており、流動負債は僅か1億400万円にとどまります。
年間約9億〜13億円の費用ペースに対し、24億円超の手元資金を有していることから、当面のパイプライン開発およびTMS-008のPh2a治験を自力で遂行するための 十分な資金滑走路(Runway)が確保されている と言えます。
まとめ
株式会社ティムスの2026年12月期中間期決算は、主力開発品である TMS-007(JX10)のグローバルORION試験の前倒し進捗 と、次代を担う TMS-008のPh2a治験開始に向けた準備の完了 という、2大主要プロジェクトが着実に前進していることを示す内容でした。
パートナーであるCORXEL社の約453億円におよぶ大型資金調達完了により、TMS-007のグローバル臨床推進態勢が確固たるものとなった一方、自社においては約24.59億円の現預金を背景にTMS-008の国内開発を主導する体制が整っています。今後予定されているTMS-008の患者投与開始やORION試験のデータ発表など、主要なマイルストーンの進捗が注目されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。