
【アドベンチャー 2026年6月期通期決算】営業利益11億円で黒字転換を達成、アプリ利用拡大とグループ再編で新中計「営業利益40億円」へ足固め
StockClub
公開日時: 2026/08/13 11:28
Sentiment Analysis

株式会社アドベンチャー(証券コード: 6030)の 2026年6月期通期決算 は、一渡性の悪化要因が大きく響いた前期から大きく回復し、 営業利益1,100百万円(黒字転換) を着地させました。連結収益は 25,634百万円(前期比+1.0%) と底堅く推移しており、グループ構造の最適化と自社プラットフォーム「skyticket」の収益性向上が着実に進展しています。
本レポートでは、今回公表された決算資料の全容から特に重要な10のトピックを抽出し、同社の現状と将来の成長ストーリーを詳細に読み解いていきます。
1. 通期連結業績のハイライト:黒字転換と計画との差分
2026年6月期の連結業績は、売上高にあたる 収益が25,634百万円 (会社計画比▲1.4%)、 営業利益が1,100百万円 (会社計画比▲38.9%)、 親会社の所有者に帰属する当期利益が465百万円 となりました。前期の営業赤字1,155百万円から大幅な 黒字化 を果たしたものの、当初の業績予想に対しては下振れる結果となりました。

スライド解説:なぜこの連結PLデータが極めて重要なのか
上記のスライドは、アドベンチャーの 連結業績の全貌と利益変動の構造 を一覧で示した最も本質的なデータです。前期(2025年6月期)に計上された 旅工房の減損損失2,909百万円 や雇用調整助成金の返還といった一時的要因が解消されたことで、営業利益は 前期差で2,256百万円の大幅な改善 を見せました。 一方、会社計画(営業利益1,800百万円)に対して下振れた背景には、 アドベンチャー単体におけるグローバル市場向けシステム開発・広告の先行投資費用 が膨らんだこと、および 旅工房における中東情勢の悪化に伴う欧州・中東方面ツアー需要の低下 が挙げられます。実績の表面的な数字だけでなく、一時的要因の剥落と先行投資の負担という二面性を理解するうえで、この連結PLの対比は極めて重要な意味を持ちます。
2. アドベンチャー単体業績とサービス別収益の動向
グループの主力であるアドベンチャー単体の実績を見ると、 収益は14,463百万円(前期比▲10.6%) 、営業利益は950百万円(前期比▲47.7%) となりました。
単体の収益内訳では、 航空券事業が9,384百万円(前期比▲11.4%) 、ツアー事業が2,522百万円(前期比▲7.3%) と減収となりました。これらは航空会社側の新システム導入に伴う一時的な接続対応遅れや大阪万博の影響による需要の取りこぼしが要因です。その一方で、 レンタカー事業が1,015百万円(前期比+18.3%) 、高速バス事業が846百万円(前期比+2.8%) と堅調に拡大しており、特定の旅行商品に依存しない 収益源の多様化 が進んでいます。
3. 広告宣伝費の効率化とアプリ予約比率の急速な上昇
単体業績の利益率を向上させるための最大の鍵となるのが、 マーケティングの効率化(オーガニック集客へのシフト) です。

スライド解説:収益構造改革を示す先行指標のインパクト
このスライドは、アドベンチャーの将来的な利益率改善を担保する 2つの重要指標(広告宣伝費比率とアプリ予約比率) の推移を示しています。 左側のグラフが示す通り、営業総利益に対する 広告宣伝費比率は2024年6月期の61%をピークに、2026年6月期には60%へと低下傾向 に入っています。さらに重要なのは右側のグラフです。 アプリ予約比率が足元で急激な右肩上がり を見せており、アプリ経由の顧客獲得が大幅に増加していることが分かります。 アプリを利用するユーザーはリピート率が高く、検索連動型広告等を経由しないため 顧客獲得単価(CPA)が極めて低い 特徴があります。アプリ予約比率の向上は、将来的にWeb広告費に依存しない 高い粗利率・営業利益率 を実現するための最も確実な先行指標であり、同社の経営基盤が「広告依存型」から「ファン蓄積型」へと変化していることを裏付けています。
4. 主要グループ会社の業績分析:旅工房・アヤベックス・ファイブスター
アドベンチャーの成長においては、M&Aで傘下に加えたグループ会社の貢献度が年々高まっています。M&A獲得会社の粗利構成比は グループ全体の約20% を占める規模に成長しています。
- 株式会社旅工房 :主力である欧州旅行が中東情勢の影響を受け増収ペースが鈍化したものの、 収益は4,766百万円(前期比+28.0%) へと拡大。前期の営業赤字352百万円から 営業赤字168百万円へと赤字幅が縮小 しており、黒字化に向けた構造改革が進んでいます。
- アヤベックス株式会社 :インバウンド需要の強力な追い風と手配力(ランドオペレーター業務)の強みを活かし、 収益3,212百万円(前期比+36.0%) 、営業利益369百万円(前期比+25.5%) と著しい高成長を達成しました。
- 株式会社ファイブスターコーポレーション :沖縄を中心とした宿泊施設向けWeb集客・運営事業を手掛け、 収益911百万円(前期比+9.4%) 、営業利益216百万円(前期比+24.0%) とグループ利益に大きく寄与しています。
5. ポートフォリオの再編と不採算事業の売却
同社は中期経営計画に沿って、シナジーが薄い事業や不採算事業の 積極的な整理・売却 を進めています。2024年7月に取得したマレーシアのSIMカード/eSIM事業者である HELLO1010 SDN. BHD.は株式譲渡契約を締結 (クロージング前)したほか、シンガポールのWi-Fiレンタル事業者 UR COMMUNICATIONS PTE LTD.(Yoowifi) およびMICE・団体旅行を手掛ける Silkway Travel Asia PTE LTD. の2社についても 第三者への譲渡を完了 しました。経営資源を中核のOTA事業と成長子会社へ集中させる明確な意思が現れています。
6. ガバナンス体制の強化とコンプライアンス徹底
過去に課題が生じたグループ会社のガバナンス強化も着実に行われています。特に 旅工房においては経営トップを刷新 し、再発防止に向けた内部統制の再構築を実施。東京証券取引所による「特別注意銘柄」の指定解消に向け、コーポレート部門の体制補強を強力に推進しています。併せてアドベンチャー全社でのコンプライアンス研修プログラムを開始し、持続可能な成長基盤を整えています。
7. 健全な財務基盤と資本効率(ROE)の改善方針
連結貸借対照表(BS)においては、 現金及び現金同等物が13,263百万円 と豊富なキャッシュを保有しています。 親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は32% を維持し、実質無借金状態を示す Net D/Eレシオは▲0.4倍 と非常に健全な財務状態にあります。潤沢な手元資金と資金調達余力を背景に、今後もシナジーの高いM&Aを推進すると同時に、アセット効率を高めて ROE(自己資本利益率)の改善 を目指す方針です。
8. 2027年6月期の通期業績予想:大幅増益の見通し
2027年6月期の通期連結業績予想として、同社は 収益26,000百万円(前期比+1.4%) 、営業利益2,000百万円(前期比+81.8%) 、親会社の所有者に帰属する当期利益1,100百万円(前期比+136.6%) を計画しています。
単体における オーガニックユーザーの増加(SEO・GEOの強化およびアプリ予約比率向上) に伴う広告宣伝費比率の約2%改善(効率化)に加え、旅工房の黒字化達成、アヤベックスやファイブスターコーポレーションのPMI(買収後の統合プロセス)強化による高成長維持を見込んでいます。
9. 新中期経営計画:3カ年の数値目標とロードマップ
同社は中長期的な企業価値向上に向けて、新たに 3カ年の中期経営計画 を公表しました。

スライド解説:グローバルOTAへの飛躍を描く利益成長ロードマップ
上記のスライドは、同社が掲げる 連結3カ年目標(FY2027〜FY2029)の全体像 を示した成長目標の骨子です。 計画では、 FY2027に営業利益20億円 、FY2028に営業利益30億円(収益290億円) 、最終年度となる FY2029には営業利益40億円(収益320億円) を目指すという、極めて意欲的な利益成長シナリオが描かれています。 この成長の原動力となるのは、国内市場における「skyticket」のオーガニックリピート率向上による利益率拡大と、東南アジアをはじめとするグローバル市場での取扱高拡大です。単なる規模の拡大(収益の伸び)以上に 営業利益を3年で2倍以上(11億円→40億円)に引き上げる収益性向上ストーリー であることが、このデータの最も重要な意味合いです。
10. 市場環境と「skyticket」の競合優位性(グローバルOTAへ)
成長の背景にある外部環境として、日本の旅行市場における オンライン化率の上昇(2019年の44%から2027年には60%超へ拡大予測) や、インバウンド需要の堅調な回復、東南アジアにおける中間層拡大に伴う旅行市場の急成長があります。
同社の「skyticket」は、多言語・多通貨対応の ローカライズ機能 や、国内・海外の航空会社との NDC/API直接接続 、さらに 2,500万DLを突破したアプリ基盤 とポイントプログラムによる高いクロスセル率を有しています。これらを強みに、国内旅行市場の利益を源泉としつつ、成長著しいアジアを中心としたグローバルOTAとしてのポジション確立を進めています。
決算まとめ・今後の注目ポイント
アドベンチャーの2026年6月期決算は、前期の一時的損失から脱却して 11億円の営業黒字を回復 し、経営の正常化と次なる成長フェーズへの移行を強烈に印象付ける内容となりました。 今後は、 ①アプリ予約比率のさらなる上昇による広告費の抑制効果 、②旅工房の完全黒字化およびアヤベックス等のM&A子会社の成長持続 、③新中計で掲げたFY2029営業利益40億円に向けた初年度(FY2027)目標20億円の進捗状況 が、同社の企業価値向上を見極める重要なポイントとなります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。