
【深掘り決算分析】ZenmuTech (338A) 2026年12月期第2四半期:成長投資先行と下期偏重構造、主力ZVDの力強い拡大と秘密計算PaaS化への道筋
StockClub
公開日時: 2026/08/13 10:20
Sentiment Analysis

株式会社ZenmuTech(東証グロース:338A)の 2026年12月期 第2四半期決算 は、売上高および各段階利益が上期計画を下回る着地となりました。しかしながら、これは 大型案件の受注時期が第4四半期へずれ込んだこと や、 将来の成長に向けた人員・開発投資の先行 が主な要因であり、通期の業績予想(売上高1,080百万円、営業利益161百万円)は据え置かれています。
主力ソリューションである 「ZENMU Virtual Drive(ZVD)」がサブスクリプションを中心に前年同期比+32.5%増と順調な成長 を続けているほか、先進的な 秘密計算ソリューション「QueryAhead®」のPaaS化・ストック化 に向けたビジネスモデルの転換が着々と進められています。
本レポートでは、決算数値の背景、ソリューション別の動向、事業トピックス、および中長期成長戦略について深く解説します。
1. 業績ハイライトと下期偏重の進捗状況
2026年12月期第2四半期累計(上期)の連結業績は以下の通りです。
- 売上高 : 305百万円 (前年同期比 +0.3% )
- 売上総利益 : 270百万円 (前年同期比 +2.3% )
- 営業損益 : △99百万円 (前年同期は △24百万円)
- 経常損益 : △79百万円 (前年同期は △18百万円)
- 中間純損益 : △60百万円 (前年同期は △13百万円)
上期売上高は前年同期比で横ばいにとどまりました。この背景には、前年第1四半期に発生した国主導の単発受託案件(フロー収入)の反動減があったことに加え、第2四半期に予定していた案件受注が第4四半期へ繰り延べられたことがあります。 また、販管費が 369百万円 (前年同期比 +28.2% )へ増加したことで営業赤字が拡大しました。これは主に、営業体制の強化に伴う 人員増(前期末比4名増の40名体制へ) 、製品強化に向けた 外注開発費の増加 、および上場・組織体制整備に伴う一時的費用によるものです。

【スライド5の重要性解説】
このスライドは、同社の 収益構造が著しく第4四半期(4Q)へ偏重している背景 を明確に示しています。同社は通期売上高目標として 1,080百万円 (前期比 +26.8% )を掲げており、上期の進捗率は約28.2%にとどまります。一見すると低水準に見えますが、2025年12月期においても4Qに売上の約半数が集中した実績(4Q単体で421百万円)があります。今期も大型商談の集中と受注ずり込みにより、 下期(特に4Q)に売上・利益が急増する季節性パターン を前提とした計画となっています。
2. ソリューション別売上動向:主力ZVDの力強い伸び
ソリューション別の状況を見ると、同社の事業基盤の主軸が確実に強化されていることが分かります。
- ZENMU Virtual Drive(ZVD) : 売上高 257百万円 (前年同期比 +32.5% 、構成比 84.2% )
- QueryAhead®(秘密計算) : 売上高 29百万円 (前年同期比 △67.0% 、構成比 9.5% )
- ZENMU Engine : 売上高 12百万円 (前年同期比 △4.3% 、構成比 4.2% )

【スライド8の重要性解説】
このスライドは、同社の 収益基盤の質的な変化 を象徴しています。売上高全体の 8割以上を占める主力「ZENMU Virtual Drive」 は、サブスクリプションライセンスの契約が順調に増加し、 +32.5%の大幅増収 を記録しました。一方で、QueryAhead®が大幅減収となっているのは、前年同期に存在した大規模な単発受託案件の反動によるものです。つまり、同社の成長エンジンであるZVDは好調を持続しており、受託型からストック型へのポートフォリオシフトが進んでいることを裏付けています。
3. ストック収益の蓄積と優れた顧客保持力
同社の強みは、高いストック売上比率と極めて低い解約率にあります。
- ストック売上比率 : 第2四半期時点で 69.3% (売上高159百万円中110百万円がストック収入)
- ZVD総ライセンス数 : 126,072件 (前年同期の107,309件から順調に拡大)
- 内訳: サブスクリプション契約 46,024件 (36.5%)、保守契約 80,048件 (73.5%)
- 実質解約率 : 0.4% (大口顧客の買い切り移行影響を除いたベース)
データの無意味化・分散管理を行うZVDは、顧客のITインフラに深く組み込まれるため、解約リスクが極めて低い特徴を持ちます。この安定した ストック収入の積み上がり が、先行投資期の営業赤字を支える底力となっています。
4. 成長戦略の核:「QueryAhead®」のPaaS型継続課金モデルへの転換
同社が中長期の爆発的成長を狙う上で最も重要視しているのが、秘密計算ソリューション 「QueryAhead®」のビジネスモデル転換 です。
従来のQueryAhead®は、Gov(政府・官公庁)関連の受託案件などのフロー収益が中心であり、エンジニアリソースが特定の大型開発に拘束される点や、収益の予見性が低いという課題(売り切り型・労働集約型ビジネスのボトルネック)を抱えていました。

【スライド21の重要性解説】
このスライドは、ZenmuTechの 将来の収益性を劇的に変革させる成長戦略 を明確に示しています。同社はGov中心の受託型ビジネスから、クラウドベースの PaaS型継続課金モデル(QueryAhead Hub) への移行を進めています。PaaS化によって、データウェアハウスとの連携が容易になり、オンプレミス環境に閉じがちだった金融・医療領域を超えて グローバル市場のボリュームゾーン へアプローチ可能になります。また、無料トライアルやPoCから本番採用へ導く PLG(Product-Led Growth)ファネル を構築することで、顧客獲得効率とARR(年間定期収益)の飛躍的向上を目指しています。
開発ロードマップとしても、2026年12月期第2四半期にネイティブコード化を達成し 秘密計算の基本処理速度を従来比100倍以上に高速化 させるなど、技術的基盤の強化を完了しています。
5. 事業トピックスとアライアンスの拡大
第2四半期においては、先進技術の実装と販売パートナーシップの強化において多数の成果が発表されました。
- 医療DX分野への本格実装 : AIHOBSが展開する医療DX基盤「Digital Trust Grid」に対し、HAIPとの共同開発技術である「秘密分散プロキシ」が採用。高度なデータ秘匿性と利便性を両立。
- 自治体DX・災害通信 : 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)およびナシュア・ソリューションズと共同で、地域分散ネットワーク「ナーブネット」へ秘密分散技術を適用する開発を開始。
- 生成AI領域での特許出願 : セキュアなAI活用を実現する 「秘密分散×RAG(検索拡張生成)」ソリューション をイージス・アプリケーション、Technica AIと共同開発し、特許出願を完了。鍵管理からの解放やデータポイズニング耐性を実現。
- エンドポイントセキュリティの販売拡大 : ミントウェーブおよびTMIプライバシー&セキュリティコンサルティングとの 3社業務提携 を締結し、法令対応とセキュリティを両立させた顧客導入を推進。
- PETs(プライバシー保護技術)研究体制強化 : 統計数理研究所の村上隆夫准教授を顧問に招へいし、分析結果からの元データ推測を防ぐ「アウトプットプライバシー」技術の研究開発を加速。
6. 通期予想と中長期目標「triple 30 Plan」
通期業績予想(2026年12月期)
上期の計画未達にもかかわらず、通期予想は期初計画が維持されています。
- 売上高 : 1,080百万円 (前期比 +26.8% )
- 営業利益 : 161百万円 (前期比 +12.6% 、営業利益率 14.9% )
- 当期純利益 : 302百万円 (前期比 +93.7% )
第3四半期までは採用やマーケティング費用等の先行投資が継続するため営業赤字が継続する見込みですが、 第4四半期に大型商談の集中とサブスク積増効果が結実し、一気に通期黒字化を達成する見通し です。
中期成長目標「triple 30 Plan」
同社は2030年12月期に向けた定量的成長目標として以下を掲げています。
- 売上高CAGR(年平均成長率) : 30%
- 営業利益率 : 30%
- 長期目標 : 売上高 100億円 規模の企業へ成長
短期的な ZVDによる安定的な収益基盤 (国内VDIユーザー800万人超に対する同社シェアは現在約1%と拡大余地甚大)に加え、中長期的な ZENMU EngineおよびQueryAhead®のPaaS展開・海外展開・M&A を組み合わせることで、高成長・高収益企業への進化を図っています。
まとめ
ZenmuTechの2026年12月期第2四半期決算は、表記上の利益圧迫が見られるものの、その実態は 下期(4Q)集中型の売上構造 と成長に向けた積極的な先行投資 によるものです。主力のZVDが着実に契約数を伸ばしてストック収益を拡大させている点、そして秘密計算のPaaS化や生成AI(RAG)対応など時代の要請に合致した技術開発が進んでいる点から、今後の成長戦略の進捗が注目される局面と言えます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。