
【フラー 2026年6月期通期決算】先行投資期を経て2027年6月期は大幅増収増益へ:大型案件の通期寄与と営業体制強化、AI活用による成長加速
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公開日時: 2026/08/12 10:08
Sentiment Analysis

デジタルパートナー事業を展開するフラー株式会社(証券コード: 387A)は、2026年8月12日に2026年6月期通期決算を発表しました。上場初年度となった当期は、将来的な事業拡大に向けた人財の採用・育成や営業体制の強化といった先行投資を積極的に実施した結果、売上高は前期並みにとどまり、大幅な減益着地となりました。しかしながら、下期からは新規案件の受注増や稼働率の改善が顕著にあらわれており、2027年6月期に向けては売上高・利益ともにV字回復を見込む大幅な増収増益計画を公表しています。
本レポートでは、公表された決算資料に基づき、業績ハイライト、四半期推移、主要経営指標、2027年6月期の業績予想および成長戦略について多角的に解説します。
1. 2026年6月期 通期業績ハイライトと損益構造の分析
2026年6月期の通期実績は、 売上高2,009百万円(前期比+0.0%) 、営業利益57百万円(同△69.9%) 、経常利益102百万円(同△44.6%) 、当期純利益132百万円(同△32.6%) となりました。2026年2月に公表された修正予想(売上高2,056百万円、営業利益55百万円、当期純利益113百万円)と比較すると、売上高は達成率97.7%となったものの、利益面では修正予想を上回る着地となっています。

上記スライドの損益計算書サマリーから読み取れる通り、売上高が横ばいで推移した背景には、上期において前期に獲得した大型開発案件が一巡し、クリエイティブ人材の稼働率が一時的に低下したことが挙げられます。セグメント別では、主力の クライアントワークが売上高1,907百万円(前期比+0.5%) と堅調を維持した一方、 アプリ分析サービスが101百万円(同△7.6%) とやや苦戦しました。
損益面においては、人員増に伴う労務費の増加および外注費の増加によって売上原価が1,283百万円(前期比+11.1%)へ膨らんだ結果、 売上総利益は726百万円(同△14.9%) に減少しました。販売費及び一般管理費は669百万円(同+0.8%)と、上場関連諸経費や営業部門の増員がありつつも、前期に計上された上場記念賞与の減少などにより前期並みに抑制されています。営業利益は大きく落ち込んだものの、補助金収入57百万円の計上や繰延税金資産の積み増し(法人税等調整額△31百万円)により、経常利益および当期純利益の黒字幅を確保しました。
四半期ごとの推移を見ると、1Q・2Qは売上伸び悩みと人件費負担から営業利益がそれぞれ4百万円、17百万円と低空飛行を余儀なくされましたが、 4Q単体では売上高581百万円と過去最高 を記録しました。新規受注の獲得や請負案件の納品が進んだことで稼働率が大きく改善し、受注回復傾向が鮮明となっています。
2. 財務健全性と主要経営指標の動向
財務体質については、新規上場に伴う増資や長期借入金の返済が進んだことにより、安全性が一層高まっています。貸借対照表サマリーによると、 自己資本比率は前年末の53.9%から66.9%へと13.0ポイント上昇 しました。資産合計1,825百万円のうち、現金及び預金が1,289百万円(手許流動性として短期定期預金500百万円を含む)を占めており、事業規模に対して極めて十分なキャッシュポジションを維持しています。
人財および顧客基盤に関する主要指標(KPI)の動向は以下の通りです。
- 従業員数・クリエイティブ人材比率 : 2026年4月に新卒19名(うちエンジニア16名)が入社したことなどにより、期末従業員数は 207人(前期末比+8.9%) に増加しました。ディレクター、デザイナー、エンジニア等の「クリエイティブ人材」は169人(同+11.2%)となり、全従業員に占める割合は 81.6%(前期末比+1.6pt) と、目標とする8割以上をしっかり維持しています。
- クリエイティブ人材1人当たり月間売上高・粗利 : 人財確保が先行したことで、1人当たり月間売上高は 1,075千円(前期比△10.6%) 、1人当たり月間粗利は 388千円(同△23.9%) へと下落しました。これが当期の減益の主因です。
- クライアントワーク月平均顧客数・顧客単価 : 提携先からの案件紹介やアウトバウンド営業の強化により、 月平均顧客数は41.6社(前期比+22.0%) と着実に拡大しました。一方で、前期の大型案件反動により 月平均顧客単価は3,823千円(同△17.6%) へ低下しています。顧客基盤の裾野が広がったことで、今後の単価上昇・案件拡大に向けた土台が整ったと言えます。
3. 2027年6月期 業績予想とV字回復への成長ストーリー
フラーは、2027年6月期の業績見通しについてレンジ形式で公表しています。計画数値は 売上高2,600〜2,720百万円(前期比+29.4%〜+35.4%) 、営業利益180〜260百万円(同+215.1%〜+355.2%) 、経常利益180〜260百万円(同+74.9%〜+152.6%) 、当期純利益130〜190百万円(同△2.2%〜+43.0%) としています。
売上高・営業利益ともに急角度での再成長を見込む強気の計画となっており、営業利益率は前期の2.8%から 6.9%〜9.5%へと大幅に改善 する見通しです。

上記のスライドは、2027年6月期における劇的な増収見通しの背景と定量的根拠を示した最も重要な資料です。同社が掲げる成長の根拠は大きく3つの要素に整理されます。
- 既存顧客・受注済案件の通期寄与 : 前期(2026年6月期)下期に獲得した大型開発案件が、2027年6月期は期初から通期にわたって売上に寄与します。これにより、期初時点で既に前期通期売上高に相当する規模の受注ベースを概ね確保できている状態にあります。
- 営業施策による販売力の強化 : 前期下期から推し進めてきたアウトバウンド営業へのシフト、営業部門の増員(5名増)、地域専任担当の配置などの成果が実り始めています。
- AIの全社活用による生産性・採算性の向上 : 開発プロセスへのAI最適化を強力に推進し、高い品質を保ちながらクリエイティブ人材の稼働効率と案件粗利率を引き上げる計画です。
4. 成長を加速させる3つの営業施策とパートナーシップ
2027年6月期の高成長を実現するための具体的な営業アプローチとして、フラーは以下の3つの施策を掲げ、継続・強化しています。

上記スライドの構造から理解できる通り、フラーは従来のインバウンド依存型から、多角的なアプローチによる積極的な案件創出型へと脱皮を図っています。
- 施策① 営業体制の強化 : 計画通り営業部門を5名増員し、営業企画部門の新設や関西・新潟・北海道といった地域専任担当を設置しました。プロジェクト経験者を営業提案に起用することで、顧客の課題に深く踏み込んだ質の高い提案が可能となり、全国各地域で新規大型案件の獲得が進んでいます。
- 施策② 業務提携先との連携強化 : 資本業務提携先である 株式会社ヤプリ および 電通グループ (株式会社電通デジタル、株式会社電通総研など)との連携を深化させています。単なる顧客紹介にとどまらず、ノウハウを持ち寄った共同ソリューションの提供や共催セミナーの開催を通じて商談数を拡大しており、提携先経由での大型開発案件が複数進行しています。
- 施策③ 販路の拡大 : 大手開発ベンダーやITコンサルティング企業、金融機関(銀行・証券等)、クラウドプラットフォーム企業(AWSやStudio等)とのパートナーシップを推進しています。パートナー企業との共同提案により、これまでアプローチが難しかった大手企業の大型DXプロジェクトを受注する体制を構築しています。
5. AI時代の事業展開、ガバナンス刷新、資本政策
AI活用の本格化
フラーは「ソリューションの深化と拡大」および「AIに最適化した開発体制への移行」の二輪で事業拡大を図っています。社内ではAnthropic社の「Claude」を全社導入し、平均年齢31.5歳の若手エンジニアを中心にAI活用人材の育成を急速に進めています。顧客向けプロダクトへのAI機能実装に留まらず、企画・デザイン・開発・運用の全工程において開発効率を高めることで、1人当たり月間売上高の目標(1,240〜1,297千円への改善)達成を目指します。
ガバナンス・経営体制の刷新しい
上場から1年が経過したことを受け、定時株主総会を経て経営体制の刷新が行われます。創業者である渋谷修太氏(現 取締役会長)、櫻井裕基氏(現 取締役CDO)、宮毛忠相氏(現 取締役CFO)の3名が取締役を退任し、従業員(または顧問)として事業推進に専念する形へ移行します。新たに事業の中核を担ってきた林浩之氏(執行役員)および伊津野惇氏(執行役員CTO)、さらに電通デジタル執行役員の吉岡真氏が取締役に就任し、 取締役6名(うち社外3名)、監査役3名(全員社外) というより客観的かつ推進力のある経営・統治体制へ移行します。
資本政策(無償減資)
今後の資本政策の柔軟性・機動性の確保および税負担の軽減を目的に、資本金を9,9668,612円から69,668,612円減少させ、30,000,000円とする 無償減資 を実施予定です。これは純資産額や発行済株式総数、業績に影響を与えない会計上の振替手続き(その他資本余剰金への振替)であり、財務の効率化に寄与するものです。
まとめ
フラーの2026年6月期決算は、人財投資と営業基盤強化に伴う減益決算となりましたが、4Qにおける過去最高売上高の達成や顧客数の拡大など、着実に成長の種が芽吹き始めています。2027年6月期は、下期から積み上がった大型案件の通期寄与、電通グループやヤプリ等とのパートナーシップの本格化、全社的なAI活用による利益率改善により、 売上高26億〜27.2億円、営業利益1.8億〜2.6億円 という過去最高水準の業績を目指す重要なフェーズに入ります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。