
株式会社アソインターナショナル 2026年6月期決算ディープダイブレポート
StockClub
公開日時: 2026/08/07 12:35
Sentiment Analysis

株式会社アソインターナショナル 2026年6月期決算ディープダイブレポート
歯科矯正技工のリーディングカンパニーである 株式会社アソインターナショナル(証券コード:9340) の2026年6月期決算資料に基づき、業績ハイライト、成長要因、市場環境、ならびに今後の成長戦略について多角的に分析・解説します。
1. 2026年6月期 通期業績ハイライト
2026年6月期におけるアソインターナショナルの連結業績は、 売上高・各段階利益ともに過去最高を更新 する非常に堅調な決算となりました。
- 売上高 : 4,166百万円 (前年同期比 +9.7% )
- 営業利益 : 723百万円 (前年同期比 +9.9% )
- 経常利益 : 734百万円 (前年同期比 +16.3% )
- 当期純利益 : 518百万円 (前年同期比 +18.2% )
- 1株当たり当期純利益(EPS) : 52.9円 (前年同期は44.9円)
また、公表していた期初通期計画(売上高4,013百万円、経常利益725百万円、当期純利益504百万円)と比較しても、 売上高達成率103.8% 、経常利益達成率101.3% 、当期純利益達成率102.9% となり、計画を上振れて着地しました。

【スライド解説:2026年6月期決算サマリー】
上図のスライド(PAGE_2)は、2026年6月期の全体像を凝縮した最重要資料です。売上高および利益項目すべてで過去最高を達成した実績に加え、増収を牽引した主要要因(アライナー装置や3Dプリンター関連商品の伸長、海外売上高の急増)が明記されています。営業利益率は前期と同水準の 17.4% を保持しており、材料費や労務費のコスト高傾向を効率的な販管費管理(売上高販管費比率が0.8%低下)と売上増で吸収した収益体質の強さが読み取れます。
2. 売上高・利益の増減要因と製品・エリア別動向
(1)製品・商品別の動向
売上高の内訳を詳細に確認すると、主力の 歯科矯正技工物製品 と商品(3Dプリンター等機器類) の双方で力強い成長が見られました。
- 歯科矯正技工物売上高 : 3,392百万円 (前年比 +7.5% )
- アナログ製造 : 2,111百万円 (前年比 +6.9% )— 矯正プレート、保定装置(リテーナー)など
- デジタル製造 : 1,280百万円 (前年比 +8.5% )— アライナー(マウスピース型)装置、デジタルセットアップ装置など
- 商品売上高 : 726百万円 (前年比 +18.4% )— LuxCreo社製3Dプリンター を中心とした関連機材の販売が大幅増加
製造方式別では、デジタル技術を活用した高付加価値製品の比率が高まっており、 デジタル製造比率は37.8% (前期は37.4%)と着実に推移しています。特にマウスピース型矯正(アライナー)に対する市場ニーズの掘り起こしが継続しており、関連するインダイレクト・ボンディング(IDB)・ブラケット装置(前年比+12.7%)やアライナー(前年比+17.5%)が売上高を力強く牽引しました。
(2)エリア別の動向と海外展開の加速
- 国内売上高 : 3,917百万円 (前年比 +8.5% )
- 海外売上高 : 248百万円 (前年比 +34.3% )
- アソインターナショナル(海外事業部) : 143百万円 (前年比 +79.1% )
- アソインターナショナルハワイ : 105百万円 (前年比 +0.3% )
海外売上高比率は前期の4.9%から 6.0% へと上昇しました。特に米国本土からの受注増加傾向が続いており、ユーロ圏各国(イタリアの学術会への参加等)からの新規受注獲得も寄与して海外事業部売上高が 約8割増 という非常に高い成長率を記録しています。
(3)コスト構造と利益率の背景
売上総利益率は材料費(前年比+35.9%)や為替・人件費の影響に伴う労務費(前年比+18.9%)の上昇により 前年比0.7%低下(44.2%) となりました。しかし、売上高拡大によるスケールメリットと人件費・新規採用コスト等の適切なコントロールによって売上高販管費比率を 26.8%(前年比0.8%改善) に抑え込んだ結果、 営業利益率は17.4%(前期17.3%)と前年並み以上の水準を維持 しました。
3. 圧倒的な顧客基盤と財務健全性
(1)国内歯科業界における強固な事業基盤
アソインターナショナルは、 日本国内にある全29大学の歯学部すべてと取引契約 を交わしているほか、全国約7,000院に及ぶ歯科医院を顧客(アクティブユーザー)として抱えています。登録医院数は 20,000件以上 に達しており、国内の矯正歯科技工所として圧倒的な市場シェアとブランド認知度を確立しています。
(2)貸借対照表(B/S)とキャッシュフローの特徴
- 総資産 : 3,740百万円 (前期末比 +409百万円 )
- 純資産 : 3,244百万円 (前期末比 +314百万円 )
- 自己資本比率 : 86.8% (前期末は88.0%)
- 1株当たり純資産(BPS) : 329.0円
流動資産のうち現金及び預金は1,428百万円を確保しつつ、短期運用の有価証券500百万円および格付Aの国内上場企業社債等(投資有価証券)に資金を配分し、 金利上昇局面における受取利息の確保 を図るなど財務運用の効率化が進められています。 営業活動によるキャッシュ・フローは +454百万円 と堅調なキャッシュ創出力を継続して示しています。
4. 歯科矯正市場の構造変化と成長ポテンシャル
同社が置かれている市場環境は、中長期的な追い風が吹いています。

【スライド解説:歯科矯正市場の構成と成長見通し】
上図のスライド(PAGE_18)は、アソインターナショナルの長期的な成長ストーリーの裏付けとなる市場構造を示しています。現在、国内の歯科矯正市場規模は約 2,400億円 (年間新患者数約29万人)と推計されていますが、世界水準の普及率に到達した場合には 最大4,000億円規模 まで拡大する成長ポテンシャルを秘めています。
特に注目すべきは、 マウスピース型矯正(アライナー)市場が年平均成長率(CAGR)10〜20% という高成長を見込んでいる点です。SNS普及による若年層(20〜30代)の口元意識の高まりや、シニア層(50〜60代)への拡大、定額制モデルの登場による受療障壁の低下が市場拡大を力強くドライブしています。日本の矯正普及率は世界平均の50〜60%にとどまっており、今後の伸び代が極めて大きい市場領域です。
5. 2027年6月期の成長戦略と業績見通し
(1)製品・商品戦略の進化
2027年6月期に向けて、同社は高付加価値製品・新ソリューションの投入を積極的に推進します。
- 新リンガル(舌側)矯正装置「AIS(アイス)」の本格展開
- ソルベンタム社より「インコグニト」事業を継承し、製造技術をデジタルリニューアル。
- 見えない矯正として人気の高い裏側矯正装置であり、日本国内およびユーロ圏での受注拡大を見込み、新たな収益の柱として育成。
- LuxCreo社製3Dプリンターおよびデジタル機器のSAM拡大
- アライナープリントに加え、ソフトデンチャー(樹脂製義歯)のプリント領域へ活用範囲を拡大。
- 新商品の市場投入
- ワイヤーベンディングロボット「Bender II」(第1四半期より発売)や、自社オリジナルの新型口腔内スキャナー(IOS、第3四半期より発売見込み)を投入し、インハウス製造を進める歯科医院・技工所双方へアプローチ。
(2)グローバル全方位営業の強化
北米でのマーケティング強化に加え、西海岸地区の有力矯正歯科医からの受注拡大を狙います。また、ユーロ圏においてはヨーロッパ舌側矯正歯科学会(イタリア)等への参加やプレゼンテーションを通じ、グローバルでの認知度向上と直販・代理店網の強化を進めます。
(3)2027年6月期 通期業績予想と株主還元

【スライド解説:2027年6月期通期業績見通し】
上図のスライド(PAGE_26)は、2027年6月期の業績計画および株主還元方針をまとめたものです。
- 売上高 : 4,402百万円 (前期比 +5.7% )
- 営業利益 : 790百万円 (前期比 +9.3% )
- 経常利益 : 798百万円 (前期比 +8.7% )
- 当期純利益 : 555百万円 (前期比 +7.0% )
2027年6月期においても 増収・営業増益 の継続を見込んでおり、営業利益率は 17.9% への上昇を計画しています。想定為替レートは1ドル=160円、1ユーロ=182円に設定されています。
【株主還元方針(配当)】
株主還元については、 配当性向50%程度 および 株主資本配当率(DOE)5%以上 を目標として掲げています。2027年6月期の1株当たり年間予定配当金は 28.0円 (中間14.0円、期末14.0円)と、2026年6月期の26.0円から 2.0円の増配 を計画しています。IPO時(23年6月期:11円)と比較すると配当金は約2.5倍水準まで拡大しており、業績成長に応じた積極的な株主還元姿勢が明確に示されています。
6. まとめ
株式会社アソインターナショナルは、国内の強固な顧客基盤(全29大学歯学部、7,000院の歯科医院)を基盤としながら、 アライナー矯正の拡大 、3Dプリンター等のデジタル技工ソリューションの提供 、そして 北米・欧州を中心としたグローバル市場の開拓 という3重の成長ドライバーを推進しています。構造的な需要増が期待される矯正市場において、デジタルDXを通じた高収益体質の維持と積極的な株主還元姿勢が示された決算内容と言えます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。