
ステムセル研究所 2027年3月期 第1四半期決算ディープダイブレポート:国内事業の利益急伸と東南アジア展開の着実な進捗
StockClub
公開日時: 2026/08/07 11:48
Sentiment Analysis

ステムセル研究所 2027年3月期 第1四半期決算ディープダイブレポート
1. 決算ハイライトと主要トピック
株式会社ステムセル研究所(証券コード: 7096)の2027年3月期第1四半期(1Q)決算は、 国内事業の強固な収益基盤の維持・強化 と、今後の大きな成長エンジンとなる 東南アジア事業における先行投資 の着実な進展という2つの側面が明確に現れた決算となりました。
本決算資料から抽出される投資家にとって重要度の高い主要トピック10点は以下の通りです:
- 連結業績サマリー :売上高 722百万円 、営業利益 40百万円 、経常利益 43百万円 、親会社株主に帰属する四半期純利益 35百万円 を計上。
- 国内事業の好調な拡大 :国内売上高は前年同期比 +3.0%の722百万円 、国内営業利益は前年同期比 +41.0%の92百万円 と大幅な増益を達成。
- 海外事業の先行投資費用 :シンガポールでの事業開始に向けた体制整備や人員確保等により、海外営業損益は △51百万円 の先行投資を計上。
- 通期予想に対する高い進捗 :連結営業利益(通期予想100百万円)に対し、1Q時点で 進捗率41.0% と順調なスタートを切る。
- 保管検体数の増強 :1Qの合計保管検体数は 3,212件(前年同期比+2.8%) を確保。
- さい帯保管の安定拡大 :高付加価値なさい帯保管検体数は 1,330件(前年同期比+3.9%) と堅調に推移。
- 新プラン「HOPECELL」の浸透 :資料請求数や成約率の安定化により、売上単価および顧客獲得の定着が進む。
- 国内成長を支える3大施策 :最大120回無利息分割払い等の料金柔軟化、脳性まひ・ASD・神経再生領域での保管価値向上、産科施設との連携強化を継続。
- 東南アジア事業の基盤完成 :シンガポールの「Mapletree Hi-Tech Park」内に最新設備を備えた 細胞処理センター・細胞保管センターが完成 。
- 中期経営計画(2027-2030)の成長描画 :2030年3月期に 連結売上高55億円、営業利益10億円(営業利益率18.2%) を目指す中長期ロードマップを掲げる。
2. 損益構造と進捗分析:国内の収益力が海外投資を吸収
連結業績における最大のポイントは、 国内事業が叩き出す高い利益率 が、 海外市場開拓に伴う先行投資費用を確実にカバーしている という損益構造です。

上図のスライド「P/Lサマリー(国内/海外)」が示す通り、国内事業の売上高は前年同期の700百万円から 722百万円(前年同期比+3.0%) へと拡大しました。これに伴い、営業効率の改善や高付加価値プランの浸透等によって国内営業利益は65百万円から 92百万円(前年同期比+41.0%) へと大幅に拡大しています。
一方、東南アジア事業を中心とする海外部門では、現地拠点の立ち上げやライセンス取得手続き、現地技術者の採用・研修等に伴い 51百万円の営業損失(先行投資) が発生しました。その結果、連結営業利益は 40百万円 となりましたが、通期連結営業利益予想の 100百万円に対して進捗率は41.0% に達しており、1Q標準基準(25.0%)を大きく超えるペースで推移しています。
通期連結売上高予想 3,100百万円 (国内3,000百万円、海外100百万円を見込み)に対する売上進捗率も 23.3% と、概ね計画通りのペースを維持しています。
3. 保管検体数の推移と「HOPECELL」のKPI分析
ステムセル研究所のストックビジネスモデルの根幹となるのが、 「さい帯血」および「さい帯」の保管検体数 の積み上げです。

検体数の実績推移を見ると、2027年3月期1Qにおける合計保管検体数は 3,212件(前年同期比+2.8%) となりました。内訳は以下の通りです:
- さい帯血保管検体数 :1,882件 (前年同期比 +2.1% )
- さい帯保管検体数 :1,330件 (前年同期比 +3.9% )
特に近年の成長を牽引している「さい帯」の保管件数は、2025年3月期1Qの612件から2026年3月期1Qの1,280件(前期比+109%)、そして当期1,330件へと着実に増加しています。
2024年11月にローンチされた統合新プラン 「HOPECELL」 の導入以降、主要KPIは高い水準を維持しています。保管料無料キャンペーン等の各種施策の継続により、月間資料請求数は2,300〜2,400件台で推移し、出産予定者数に対する新プランの成約率も約 29.0% と、旧プラン時代(10〜20%台前半)と比較して極めて高水準かつ安定的な推移をみせています。
4. 国内事業の持続的成長に向けた3つの重点施策
国内事業においては、少子化という外部環境下においても保管件数と単価の向上を両立させるため、以下の 3つの重点施策 が進められています。
- 料金体系の柔軟性を高める
- 一括払いにおける長期保管・上位プランの割引額を拡充し、長期利用顧客のインセンティブを強化。
- 分割払いは 最大120回まで手数料無料 で提供し、若年層や子育て世代の導入ハードルを大幅に軽減。
- 保管する価値を高める
- さい帯血領域:脳性まひや自閉スペクトラム症(ASD)等の既存臨床研究を継続・推進。
- さい帯領域:「ファミリー上清®」の展開を通じ、神経再生領域など新たな医療応用可能性の拡大を図る。
- 顧客へ届ける力を高める
- 重点産科施設への営業体制再構築と深耕・新規開拓を推進。
- マタニティイベントへの積極的な出展(2026年9月〜11月に全国6件の大型イベントへ出展予定)により、妊婦との直接接点を強化。
5. 東南アジア事業の進捗:シンガポール拠点の完成と広域展開
今後の大きな成長ドライバーとして期待される東南アジア事業においては、重要拠点の整備が着実に進んでいます。
シンガポールの「Mapletree Hi-Tech Park」内(約450㎡)に建設中であった 「細胞処理センター・細胞保管センター」が完成 しました。ISO基準に適合したクリーンルームや、日本国内と同等の常時監視システム(SMARTDAC+®)、自家発電・UPS設備等を完備し、高い品質管理体制が構築されています。
行政手続きおよびライセンス取得手続きに一定の時間を要したため、営業開始時期は当初予定(2026年6月)から 2026年9月頃へ見直し となりましたが、この変動はすでに通期業績予想に織り込み済みであり、通期の業績計画に変更はありません。
また、シンガポールを東南アジア展開のハブ(中核拠点)とし、今後は インドネシアやベトナム への進出に向けた現地パートナーとの具体的な交渉が進められています。
6. 中長期成長戦略:2030年3月期に向けたロードマップ
ステムセル研究所は、国内の安定収益と東南アジアの成長市場開拓を二本柱とする 中期経営計画(2027-2030) を掲げています。

上図のスライドに示す通り、中期経営計画における目標数値は以下のようになっております:
- 2030年3月期 連結目標
- 売上高 :55億円 (国内40億円、海外15億円)
- 営業利益 :10億円 (国内6.25億円、海外3.75億円)
- 営業利益率 :18.2%
今期(2027年3月期)は、海外事業の初期先行投資により一時的に連結営業利益率が3.2%に低下するものの、2028年3月期(売上高38億円・営業利益4.29億円・利益率11.3%)、2029年3月期(売上高46億円・営業利益7.4億円・利益率16.1%)を経て、2030年3月期には 高収益体質へと飛躍的な拡大を果たす計画 となっています。
7. まとめと今後の注目ポイント
ステムセル研究所の2027年3月期第1四半期決算は、 国内事業の強い利益創出力(国内営業利益+41.0%) が東南アジアへの先行投資費用を十分にカバーし、通期営業利益目標に対しても 41.0%という高進捗 を達成する結果となりました。
今後の注目ポイントとしては以下の点が挙げられます:
- 2026年9月頃に予定されている シンガポール拠点の本格営業開始とライセンス取得の完了
- 東南アジア市場における新規顧客獲得の立ち上がりスピードおよび インドネシア・ベトナム展開の具体化
- 国内における 「HOPECELL」プランのさらなる浸透と高付加価値なさい帯保管比率の向上
国内の安定したストックビジネス基盤と東南アジアでの広域展開が噛み合うことで、中期経営計画に掲げた 2030年売上高55億円・営業利益10億円 に向けた成長ストーリーの進展が期待されます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。