
DOWAホールディングス 2026年度第1四半期決算詳細レポート:相場好転と電子材料回復が寄与する大幅増収増益と通期見通し
StockClub
公開日時: 2026/08/07 11:10
Sentiment Analysis

1. 2026年度第1四半期 業績サマリーと全体像
DOWAホールディングス の2026年度第1四半期(1Q)連結業績は、前年同期と比較して 売上高および各段階利益ともに大幅な増収増益 を達成しました。主力の製錬部門における金属価格・為替相場の好転に加え、電子材料部門での需要回復やヘッジ取引に係る在庫評価益の計上が寄与し、全体の業績を強く牽引する結果となりました。
決算の主要数値は以下の通りです。
- 売上高 : 2,533億円 (前年同期比 +58% / +932億円 )
- 営業利益 : 247億円 (前年同期比 +281% / +182億円 )
- 経常利益 : 325億円 (前年同期比 +278% / +239億円 )
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 : 234億円 (前年同期比 +266% / +170億円 )
以下のスライドは、2026年度1Qの実績と前期実績、ならびに通期予想および為替・金属価格の前提条件を一覧で示したものです。

このスライドが示す重要なポイントと背景
上記スライド()から読み取れる最も重要な事実は、 1Q時点での利益進捗が通期予想に対して非常に高い水準に達している という点です。通期計画に対する1Qの実績進捗率は、営業利益で 46.6% (247億円 / 530億円)、経常利益で 40.6% (325億円 / 800億円)となっています。
この背景には、 為替レートが159.5円/ドルと前年同期(144.6円/ドル)に比べ大幅に円安に振れたこと や、 銅・亜鉛・インジウムなどのベースメタル価格が大きく上昇したこと があります。例えば、銅の平均価格は前年同期の9,519ドル/tから 13,324ドル/t へ、亜鉛は2,641ドル/tから 3,463ドル/t へと大幅に上昇し、製錬事業におけるスプレッドの拡大および鉱山関係会社からの利益取り込みに大きく寄与しました。
2. セグメント別業績動向の分析
2026年度1Qの事業環境は、セグメントごとに異なる要因によって変化しました。各セグメントの前年同期比における業績ダイナミクスについて解説します。
以下のスライドは、各セグメントの売上高・営業利益・経常利益の前年比較およびその主な増減理由をまとめています。

セグメント別の詳細とスライド解説
スライド()が示す通り、すべてのセグメントで売上高が増加し、特に 製錬部門 と電子材料部門 が劇的な利益改善を示しています。
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環境・リサイクル部門
- 売上高 : 652億円 (前年同期比 +162億円 )
- 経常利益 : 40億円 (前年同期比 +4億円 )
- 解説 : 国内における低濃度PCB廃棄物の受託量は減少傾向にあるものの、難処理廃棄物の処理量を拡大したことで相殺しました。また、金属価格の上昇に伴い溶融・再資源化事業が堅調に推移したほか、東南アジア(インドネシア等)での廃棄物処理受託も順調に増加しました。人件費上昇などのコスト増加を相場上昇や処理量増でカバーした形です。
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製錬部門
- 売上高 : 1,257億円 (前年同期比 +515億円 )
- 経常利益 : 228億円 (前年同期比 +192億円 )
- 解説 : 本決算における最大の利益牽引役です。金属価格の上昇および円安進行の相場メリットを大きく享受しました。鉱山原料の買入条件(TC/RC等)の悪化や資材価格の上昇というマイナス要因は存在したものの、自社鉱山である ティサパ鉱山 が順調な操業を継続したこと、および銀価格の下落等に伴うヘッジ取引評価益が大きくプラスに寄与したことで、前年同期比で 5倍以上 の経常利益を記録しました。
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電子材料部門
- 売上高 : 520億円 (前年同期比 +294億円 )
- 経常利益 : 20億円 (前年同期の△5億円から +26億円の黒字化 )
- 解説 : 前年同期に底を打っていた太陽光パネル向け 銀粉の販売量がV字回復 を遂げました。さらに、新製品向け近赤外LED/PDの伸長や、 AIデータセンター向け(燃料電池等)複合酸化物粉 の需要増加、在庫評価損益の改善(低価法評価益の戻し等)が重なり、大幅な業績改善を達成しました。
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金属加工部門
- 売上高 : 465億円 (前年同期比 +134億円 )
- 経常利益 : 27億円 (前年同期比 +19億円 )
- 解説 : 自動車向けの需要が総じて底堅く推移し、伸銅品の販売数量が安定的に推移しました。加えて、主原料である銅価格の上昇に伴う販売価格の改定や一時的な採算改善効果が利益を押し上げました。
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熱処理部門
- 売上高 : 84億円 (前年同期比 +10億円 )
- 経常利益 : 2億円 (前年同期比 ±0億円 )
- 解説 : 国内自動車生産の回復に伴い新炉の受注や受託加工売上は増加したものの、労務費や資材単価の上昇が利益を圧迫し、前年同期並みの利益水準にとどまりました。
3. 経常利益の変動要因分析(要因別ブレイクダウン)
1Qの経常利益が前年同期比で +239億円 の大幅増益となったメカニズムを、要因別に分解して深掘りします。
以下のスライドは、増益要素と減益要素をカテゴリごとに詳細に分析したものです。

要因別分析のポイント(スライド  の解説)
経常利益の増益要因(+239億円)の内訳を見ると、外部環境(相場)と自社施策・数量効果の両面から良好な影響を受けたことが分かります。
- 施策効果・販売増減など(+40億円) : 電子材料における銀粉販売量の増加(+17億円)や、環境・リサイクルでの処理量増(+10億円)、金属加工での需要増加(+9億円)など、実体数量の回復が着実に利益へ寄与しました。
- 金属価格差・為替差(+125億円) : 増益の最大の原動力です。製錬部門での金属価格差(+78億円)および為替差(+20億円)を中心に、金属加工等も含めた相場差益が全体で 125億円 上乗せされました。
- 在庫評価損益(+57億円) : 低価法評価損益の改善(+12億円)および ヘッジ取引評価損益(+45億円) が大きく貢献しました。同社は貴金属価格等の変動リスクを回避するためにヘッジ取引を行っており、1Q末にかけて銀価格が下落したこと等により期末時価評価による評価益が計上されました。
- 製造原価・販管費・人件費・資材費等(△35億円) : 一方で減益要因としては、ベースアップや賞与増による 人件費の上昇 、中東情勢を受けた 資材単価の高騰 、原料購入条件の悪化(△10億円)などが利益を押し下げました。
- 営業外損益・鉱山関連持分法(+56億円) : 持分法適用会社である ティサパ鉱山(35億円) やロス・ガトス鉱山(34億円) などの鉱山関係会社からの投資利益およびロイヤリティ収入が +61億円 増となり、営業外利益を大きく押し上げました。
4. 通期業績予想と今後の見通し・感応度分析
通期業績予想の据え置き方針
DOWAホールディングスは、1Qで非常に高い利益進捗率を記録したものの、 2026年度通期の業績予想を期初公表の数値から据え置き としています。
通期計画数値は以下の通りです。
- 売上高 : 9,410億円 (前期比 +26% )
- 営業利益 : 530億円 (前期比 +55% )
- 経常利益 : 800億円 (前期比 +47% )
- 親会社株主に帰属する当期純利益 : 570億円 (前期比 △9% )
据え置きの背景とリスク要因
会社側が通期予想を慎重に据え置いた背景には、第2四半期(2Q)以降の事業環境に対する複数の不透明要素が存在します。
- 貴金属価格の下落トレンド : 金・銀・プラチナなどの貴金属価格が1Q後半から下落基調に転じており、ヘッジ評価益の反動減や販売採算の悪化懸念があります。
- 需要動向の先行き不透明感 : 自動車関連需要の一部減退懸念や、AI向けを除く一般的な情報通信機器向け部材の伸び悩み(製品薄板化による使用量抑制など)が挙げられます。
- コスト負担の継続 : 資材単価の上昇、エネルギー価格の変動、労務費の増加が下期にかけて本格的に利益を圧迫するリスクを見込んでいます。
前提条件と業績感応度
通期予想の前提となる市場データと、営業利益に対する感応度(年間影響額)は以下の通り設定されています。
- 為替レート前提 : 155.0円/ドル (2Q以降前提)
- 為替感応度 : ±1円/ドルにつき 6.3億円/年 (内訳: 製錬部門5.5億円、電子材料部門0.7億円)
- 銅価格前提 : 12,000ドル/t (2Q以降前提)
- 銅感応度 : ±100ドル/tにつき 0.3億円/年
- 亜鉛価格前提 : 3,100ドル/t (2Q以降前提)
- 亜鉛感応度 : ±100ドル/tにつき 4.6億円/年
- インジウム価格前提 : 600ドル/kg (2Q以降前提)
- インジウム感応度 : ±10ドル/kgにつき 0.7億円/年
1Qの実績為替(159.5円/ドル)や亜鉛相場(3,463ドル/t)は前提条件よりも円安・高値で推移していたため、今後の相場動向次第では業績の上振れ・下振れ双方の可能性がありますが、現時点ではマクロ環境の急変に備えた中立的な見通しが維持されています。
5. 総括とまとめ
DOWAホールディングスの2026年度1Q決算は、 市況の追い風(円安・金属高)と電子材料などの需要回復、自社鉱山の順調な操業 が一体となり、非常に力強い業績スタートを切ったと言えます。環境・リサイクルや電子材料における新需要(AIデータセンター向け等)の獲得といった構造的な成長要因も確認されました。
一方で、通期業績の達成に向けては、2Q以降の金属相場のボラティリティや人件費・資材コストの高騰といった課題をどのようにコントロールしていくかが焦点となります。投資家としては、今後の金属価格推移と自動車・電子材料分野の需要実態を注視していくことが重要です。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。