
【深掘り解説】すららネット(3998)2026年12月期第2四半期決算:業績修正の要因とAI学習サービス「Surala-i」を軸とした再成長への戦略
StockClub
公開日時: 2026/08/07 10:35
Sentiment Analysis

株式会社すららネットの2026年12月期第2四半期決算補足説明資料に基づき、同社の業績ハイライト、事業環境、セグメント別の状況、通期業績予想の修正要因、および今後の成長戦略について詳細にまとめました。
1. マクロ環境とすららネットの提供価値
日本の教育現場では、少子化が進行する一方で、 不登校児童生徒数の増加(2024年度は小・中あわせて過去最多の約35万人) や発達障害・学力格差への対応 、日本語指導が必要な外国人児童生徒の急増(10年間で約2.1倍の約7万1,000人) など、課題が多角化・複雑化しています。これに伴い教員の負担は限界に達しており、個別の児童生徒に対応した「個別最適な学び」の提供が課題となっています。
すららネットは、こうした社会的課題に対して アダプティブ・ラーニング(個別最適学習)機能 を持つICT教材「すらら」を提供し、無学年式で基礎学力を定着させる仕組みや教職員の業務負担を軽減するソリューションを展開しています。
2. 2026年12月期 第2四半期 連結業績サマリー
当第2四半期累計期間(2026年1月1日〜2026年6月30日)の連結業績は、前年同期比で減収となり、各利益項目で赤字を計上する結果となりました。
- 売上高 : 898百万円 (前年同期比 ▲5.1% )
- EBITDA : 125百万円 (前年同期比 ▲32.4% )
- 営業利益 : ▲27百万円 (前年同期は +39百万円 )
- 経常利益 : ▲9百万円 (前年同期は +45百万円 )
- 親会社株主に帰属する当期純利益 : ▲6百万円 (前年同期は +35百万円 )
【売上高・利益の増減要因分析】
売上高においては、 私立学校等マーケットが専門学校や通信制高校での新規導入進展により前年同期(273百万円)から274百万円へと増加 したものの、 公立学校(145百万円→143百万円) での前年度契約終了案件の補填不足、 民間教育(307百万円→284百万円) での校舎あたり利用ID数減少、 BtoC(185百万円→163百万円) での不登校領域等の競合激化が重なり、全体として48百万円の減収となりました。
利益面では、減収による影響に加え、システム開発・コンテンツ強化に伴う 減価償却費の増加(15百万円増) やプロモーション実施による 広告宣伝費の増加(13百万円増) が押し下げ要因となりました。
3. 主要経営指標(KPI)の推移とチャネル別状況
事業の根幹をなす「導入校数」および「利用ID数」の推移は以下の通りです。

【スライド解説:主要経営指標の推移】
上記スライドは、同社の事業基盤である 「導入校数」 と**「利用ID数」** の推移(2025年2Q、2025年4Q、2026年2Q)を示した極めて重要なデータです。
- 導入校数 : 2026年2Q時点で 2,695校 (前年同期は3,151校)となり、減少傾向にあります。内訳を見ると、 私立学校等(272校) や海外(95校) 、民間教育(1,313校) が着実に拡大・堅調推移を見せる一方で、 公立学校が1,015校 (前年同期1,560校)へと大幅に減少したことが全体を引っ張る形となっています。
- 利用ID数 : 2026年2Q時点で 202,729ID (前年同期は267,966ID)となりました。公立学校の利用ID数が 129,294ID (前年同期193,732ID)に縮小したほか、BtoCも16,225IDへと減少しています。公立学校における大型自治体契約の満了・入れ替えの影響が鮮明に出ており、同社が今後いかに自治体契約を再獲得・定着させられるかが重要指標となることが分かります。
チャネル別の詳細動向
- 私立学校等 : 専門学校や通信制高校向けの新規導入が進み、導入案内の定着支援を行うことで契約校数・ID数ともに増加トレンドを維持。
- 公立学校 : 不登校支援や日本語教育関連の引き合いはあるものの、前年度の自治体契約終了による反動を今期の新規契約で補いきれず減収。
- 民間教育 : 導入校数は前年比で上回ったものの、1校舎あたりの利用ID数が減少し、全体として減収推移。
- BtoC : 不登校・発達障害領域における市場競合が激化しID数が減少。Webマーケティングの見直しや「ほめビリティ」を活用した顧客接点強化を推進中。
- 海外マーケット : インドネシアでの職業高校向け日本語教育やカンボジアでの「Surals Math」展開が進み、 導入校数は95校(前年同期比 +30.1%) と高い成長を示しています。
4. 通期連結業績予想の修正とその背景
当第2四半期までの業績進捗を踏まえ、同社は 2026年12月期(FY2026/12)の通期連結業績予想を大幅に修正 しました。

【スライド解説:通期連結業績予想修正の全貌】
このスライドは、当初発表していた通期計画に対して、どの程度の修正が行われたかを示す比較表です。
- 売上高 : 前回予想 2,149百万円 → 修正予想 1,749百万円 (▲399百万円 / 前年比 ▲9.4% )
- 営業利益 : 前回予想 ▲141百万円 → 修正予想 ▲277百万円 (赤字幅拡大 ▲136百万円 )
- 経常利益 : 前回予想 ▲134百万円 → 修正予想 ▲263百万円 (赤字幅拡大 ▲128百万円 )
- 親会社株主に帰属する当期純利益 : 前回予想 ▲81百万円 → 修正予想 ▲210百万円 (赤字幅拡大 ▲129百万円 )
下方修正の主要因
- 公立学校マーケットでの売上未達 : 上期における自治体案件の減少に加え、下期に見込んでいた 経済産業省の補助金制度が終了 したことで、予定していた売上計上が見込めなくなりました。
- 競争激化と単独ID利用の減少 : BtoC市場での競合激化および民間教育マーケットでの校舎あたり利用ID減少が響いています。
- 特別損失(ソフトウェア仮勘定除却損)の計上 : 開発中であった「すらら」の一部機能を次世代サービス「Surala-i」へ統合・変更したことに伴い、開発計画を見直した結果、減損・除却損が発生し最終赤字が拡大しました。
一方で、販売管理費や開発費の見直し( コスト削減策により計211百万円の押し上げ効果 )を実施することで、営業赤字の無制限な拡大を防ぐ構造を整えています。
5. 今後の成長戦略とプロダクト革新
業績の立て直しと中長期的な成長に向け、すららネットは 「新たな教育課題を新たな事業機会へ捉え直す」 戦略を推進しています。
次世代デジタル学習サービス「Surala-i」の投入
同社は、2026年春に公立学校向けに試用・運用を開始する 新サービス「Surala-i」 を軸とした製品革新を進めています。

【スライド解説:「Surala-i」の価値と競合優位性】
このスライドは、従来の学習ICTツールが抱えていた「GIGAスクール後の課題」に対する「Surala-i」の解決策と強みをまとめたものです。
- 解決する課題 : ①地域・学校間の 活用格差 、②端末管理や事前準備などの 教員負担 、③学力向上への寄与が見えにくい 効果の不透明感 。
- ソリューションと強み : 18年間で蓄積した 学習ログ・約20万問の設問データベース を活用し、 AIによる個別最適化アプローチ を提供。難易度コントロールや診断ドリルを高度化し、児童生徒一人ひとりに合わせた学びを設計します。
- 双方への価値 : 生徒には 「学習意欲向上・理解定着」 を提供し、教員には 「運用負担・準備工数の大幅削減」 をもたらすことで、学校現場での採択率向上と継続率改善を狙います。
市場展開ロードマップと対象市場(TAM/SAM)
- 展開計画 : 2026年に 自治体向け に「Surala-i」をリリースした後、2027年には 私立・民間教育・BtoC へ横展開し、2028年以降は 海外市場 へと拡大させるステップを描いています。
- 対象市場規模 : 同社がターゲットとする SAM(Serviceable Available Market)は約600〜700億円 と試算されています(学校市場約265億円、BtoC市場約230億円、海外市場約125億円、塾市場約50億円)。不登校・特別支援・学力中位〜下位層や外国人指導といった市場ニッチを深掘りすることで、TAM(約2,000億円)の中でのシェア獲得を目指します。
- 新コンテンツの開発 : 2026年7月には、小学校英語と中学校英語の接続課題を解決する 「小学校英語」コンテンツ をリリース予定であり、フォニックス学習や対話型AI学習を組み込んだ新たな成長ドライバーとして期待されています。
まとめ
株式会社すららネットの2026年12月期第2四半期決算は、自治体契約の終了や補助金制度の変更、BtoC市場での競合激化などの影響を受け、 減収および営業赤字の計上 という厳しい局面を提示するものとなりました。
しかし、こうした短期的な逆風に対し、同社は コスト構造の適正化 を進めるとともに、創業以来蓄積した18年分の学習データとAI技術を融合させた 「Surala-i」への投資集約 、さらに需要が拡大する 日本語教育・海外市場へのマルチチャネル展開 を加速させています。国の教育方針が「知識量」から「概念理解・活用力」へとシフトする中で、同社の持つ無学年式・根本理解重視のコンテンツ価値が今後の再成長に向けた重要な鍵となります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。