
【リガク・ホールディングス】FY26 2Q/1H 決算ディープダイブレポート:半導体計測の急成長と2H業績反転に向けた成長戦略
StockClub
公開日時: 2026/08/07 10:13
Sentiment Analysis

1. Executive Summary:決算の全体像と成長軌道
リガク・ホールディングス(証券コード: 268A)の FY26 2Q/1H(2026年12月期 第2四半期累計)決算 は、四半期ごとの業績波動において重要な転換点を示す内容となりました。
第1四半期(1Q)の端境期を経て、第2四半期(2Q単体)の売上収益は 216億円(前年同期比+7.4%) と力強い回復軌道に乗りました。上半期(1H累計)ベースでは売上収益 395億円(前年同期比-2.9%) 、営業利益 25億円(同-54.9%) と減益となりましたが、これは主に成長機会を確実に捕捉するための 先行投資(R&Dやグローバル人件費の増強) と、学術機関(アカデミア)向け市場の回復遅れに起因しています。
一方で、主力の 半導体プロセス・コントロール機器事業 は、2Q売上収益が 前年同期比+60.0% の74億円、営業利益が 同+69.4% の14億円と急拡大を記録しました。さらに、全社ベースの2Q受注額は前年同期比で 50%を超える高成長 を見せており、通期の業績見通し(売上収益 1,010億円 、営業利益 194億円 )は当面変更なしと据え置かれています。下期(2H)における大規模な売上計上と利益率改善に向けた準備が順調に進捗している状況が伺えます。
2. 四半期業績推移と受注モメンタム
同社の四半期業績構造を理解する上で、製品納入の季節性や端境期の存在を把握することが極めて重要です。

なぜスライド5が重要なのか
このスライドは、同社の売上収益が四半期ごとにどのように推移しているかを明確に示すデータです。FY26 1Qの売上収益が179億円と一時的に低下した後、2Qにおいて216億円へ 約20%の急回復 を果たしたプロセスが視覚的に理解できます。また、過去のFY24やFY25の傾向からもわかる通り、同社の業績は下期(特に4Q)に集中しやすい構造を持っています。このグラフを見ることで、1Hの業績進捗が計画想定の範囲内(インライン)であり、2Hに向けた大幅な拡大イメージが単なる目標ではなく過年度の実績パターンに沿ったものであることが確認できます。
2Qの受注動向については、全社で 前年同期比50%超 の極めて強い成長を記録しました。パイプライン(受注残・見込み案件)も前年同月比で 35%超の成長 を示しており、足元の需要モメンタムが極めて堅調であることが裏付けられています。
3. カテゴリー別業績ダイナミクス
同社の事業は大きく3つのカテゴリーに分類されます。それぞれの市場環境と業績動向には明確なコントラストが見られます。
(1) 多目的分析機器(Multipurpose Analytical Instruments)
- 2Q業績 : 売上収益 84億円(前年同期比-6.1%) 、営業利益 3億円(同-77.3%)
- 環境・背景 : 昨年来の米国等の政策影響により、アカデミア(大学・研究機関)およびガバメント向け需要の減衰・減収傾向が長期化しています。
- 足元の兆候 : アカデミアの停滞をカバーすべくインダストリー(民間産業用途)へのシフトを推進した結果、2Qの受注額は 日本で+20%超 、米州で+50%超 と急速に底入れ・反転の兆しを見せています。受注から売上への反映タイムラグを考慮すると、2H以降の大きな売上成長に寄与すると見込まれます。
(2) 半導体プロセス・コントロール機器(Semiconductor Process Control Instruments)
- 2Q業績 : 売上収益 74億円(前年同期比+60.0%) 、営業利益 14億円(同+69.4%) 、営業利益率 18.9%
- 環境・背景 : AI向けを含むメモリ増産需要に加え、北米のIDM(垂直統合型半導体メーカー)需要の回復が強力な追い風となっています。
- 製品・顧客進捗 : アドバンスト・ロジックやファウンドリ、メモリ向け製品が大幅伸長しました。顧客サイトでの装置導入・評価を行う JEP(Joint Evaluation Program) も順調に進行しており、下期にかけて新製品売上が本格化する手筈が整っています。
(3) 部品・サービス(Components & Services)
- 2Q業績 : 売上収益 58億円(前年同期比-11.3%) 、営業利益 6億円(同-60.1%)
- 環境・背景 : 装置全体の出荷・設置時期に伴う2Hシフトの影響でセグメント全体としては減収ですが、 サービス事業単体では11%の増収 を確保しています。値上げ施策や拡販施策の効果が着実に現れています。
4. 営業利益要因分析と戦略投資のバランス
FY26 2Qの連結営業利益率は 9.0% となり、前年同期の14.3%から 5.3ポイント低下 しました。この低下要因について、構造的な収益性の変化なのか、意図的な先行投資なのかを明確に整理することが重要です。
- 粗利益率(売上総利益率) : 原材料コスト増等の押し下げ圧力があったものの、販売価格の上昇や高粗利な製品・顧客ミックスの改善によって相殺され、前年同月比でほぼ横ばい( -0.2pt )を維持しました。
- 販管費他(-5.1ptの圧迫) : 利益率低下の主な原因は販管費の増加です。特に、半導体事業の急速なスケールアップに伴う グローバルでの人材確保・人件費(-3.5pt) および海外成長投資が計画通り実行されたことによるものです。
年間を通じた見通しとしては、2Hにおいて売上収益のスケール(ボリューム増)が大幅に拡大することで、これらの 固定的な戦略投資比率が薄まり 、通期の営業利益率は計画通り高い水準へとフラット化・収斂していくシナリオとなっています。
5. 半導体プロセス・コントロール機器事業の技術優位性と市場ロードマップ
同社の長期的価値を左右する最大のドライバーは、先端半導体製造における測定・検査技術(Metrology)のシェアと技術革新です。
同社は、 X線計測装置(X-ray Metrology)市場 および 広義の薄膜・組成計測市場 において、世界シェア 第1位 を維持しています。先端半導体の製造プロセスが3次元化(GAA/CFET、3D NAND、CoWoS等のアドバンスト・パッケージング)するにつれ、非破壊で内部構造や極薄膜を正確に計測できる同社のX線技術への依存度が高まっています。

なぜスライド13が重要なのか
このスライドは、同社が2030年に向けてどのような技術・製品で半導体市場を攻略していくかを示す 「戦略製品ロードマップ」 の全体像です。ロジック(GAA/CFET対応のXTRAIA CD-3200Gなど)、メモリ(3D DRAM/3D NAND対応のXTRAIA CD-3200Tなど)、アドバンスト・パッケージング(TSV欠陥検査向けのAXIなど)という最先端ノードごとに、ターゲットとする想定SAM(Serviceable Available Market:獲得可能な最大市場規模)が 合計約10億ドル に達し、その中で 50%以上の目標シェア を掲げている点が示されています。また、Onto Innovationとの資本業務提携によるハイブリッド計測(Hybrid Metrology)の推進により、2030年に半導体PC機器事業で 売上収益1,000億円を目指す成長ストーリーの根拠 が詰まった必須スライドです。
顧客の先端プロセス開発に初期段階から伴走するため、 グローバルRTC(Rigaku Technology Center) をシリコンバレーや台湾に続き、2026年度中には 中国(上海) にも開設する予定です。これによりデモ評価やアプリケーション支援を加速させています。
6. 通期業績見通しと下期の挽回ストーリー
同社は、FY26通期の連結業績予想を公表値から変更せず据え置いています。

なぜスライド17が重要なのか
1H終了時点で通期予想の据え置きを発表した背景と、その達成に向けた確信度が集約されたスライドです。通期の目標数値として 売上収益1,010億円(前期比+7.2%) 、営業利益194億円(前期比+16.1%) 、営業利益率19.3%(前期比+1.6ptの向上) という増収増益・利益率向上シナリオが明確に示されています。1H時点での「多目的分析機器の回復遅れ」を「半導体機器の強いモメンタム」が補完している現実と、2Hに向けた「利益率向上の施策(値上げ、高粗利な新製品の集中出荷、JEP案件の売上化)」というドライバーが整理されています。
2Hに向けた主な着眼点
- JEP(共同評価プログラム)の売上化 : 1Hで約40億円規模だった新製品・JEP関連の売上寄与が、2Hには 約100億円規模 へ急拡大する見通しです。
- 多目的分析機器の受注反映 : 2Qで顕著に伸びた日本・米州での産業向け受注が下期の売上として計上され始めます。
- 粗利率のV字回復 : 半導体新製品の比率拡大と全社的な価格改定効果により、下期の粗利益率向上が通期目標の達成を牽引する見込みです。
7. 結論:成長ストーリーの総括と注目KPI
リガク・ホールディングスのFY26 2Q/1H決算を総合的に分析すると、以下の重要なトピックに集約されます。
- 四半期業績の底入れ : 1Qを底として2Q売上は216億円へと急回復し、2H主導型の業績パターンを再確認。
- 半導体事業の圧倒的牽引力 : 2Q売上+60%、営業利益+69.4%と全社成長を力強くリード。
- 受注動向の力強さ : 全社2Q受注はYoY+50%超、パイプライン+35%超と将来の売上基盤が急速に拡大。
- 多目的分析機器の転換点 : アカデミアの停滞が続くも、産業用途へのシフトにより日米で受注が反転拡大。
- 技術ポジションの堅固さ : 薄膜・X線計測市場で世界シェア1位を維持し、最先端ノード向けロードマップを着実に実行。
- 戦略投資の先行実行 : 1Hの利益率圧迫は半導体領域を中心とするグローバル人件費やR&D投資であり、事業拡大のための予定通りの施策。
- 通期業績予想の維持 : 売上1,010億円、営業利益194億円に向け、2Hの売上集中とマージン改善を計画。
- JEP売上化の本格化 : 下期に約100億円規模の新製品計上を見込む。
- グローバルRTC体制の強化 : シリコンバレー・台湾に加え上海開設により顧客エンゲージメントを深耕。
- 中長期の1,000億円目標 : Ontoとの提携を含むハイブリッド計測や2030年に向けた半導体技術革新を取り込む構造を構築。
短期的な1Hの利益推移のみならず、2Hへの業績集中構造や半導体領域における確固たる市場シェア、そして強い受注モメンタムを総合的に照らし合わせることで、同社の成長ストーリーの全体像を正確に捉えることができます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。