
【INPEX 2026年12月期中間決算】過去最高の中間利益2,631億円を達成、通期予想を5,100億円へ上方修正〜アバディLNG進捗と株主還元の拡充による中長期成長ストーリー〜
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公開日時: 2026/08/07 09:52
Sentiment Analysis

【INPEX 2026年12月期中間決算】過去最高の中間利益2,631億円を達成、通期予想を5,100億円へ上方修正
〜アバディLNG進捗と株主還元の拡充による中長期成長ストーリー〜
1. エグゼクティブ・サマリー
株式会社INPEX(証券コード:1605)の2026年12月期第2四半期(中間期)決算は、中東情勢の緊迫化に伴う原油販売量の減少というマイナス要因があったものの、 油価の上昇 および主要プロジェクトである イクシスLNGの好調な生産 が支えとなり、親会社の所有者に帰属する中間利益が 前年同期比17.7%増の2,631億円 に達し、中間期として 過去最高益を更新 しました。
この力強い足元の業績に基づき、2026年12月期通期の業績予想についても、親会社株主に帰属する当期利益を前回予想の4,500億円から 5,100億円へ600億円上方修正 (前期比・当初予想比とも過去最高水準)しています。さらに、積極的な株主還元姿勢を明確にしており、 年間配当金を前期から12円増配の112円 に引き上げるとともに、 1,400億円の自己株式取得 を発表しました。総還元性向は 約53% に達する見込みです。
以下では、最新の決算資料から抽出した10項目の重要トピックを中心に、同社の業績動向、地政学リスクへの対応、中長期的な成長戦略、キャッシュ・フロー配分、ならびに株主還元策について深掘りして解説します。
2. 2026年12月期 中間期業績ハイライトと要因分析
中間期における売上収益は 1兆4億円(前年同期比4.6%減) となったものの、営業利益は 6,187億円(同0.3%増) 、親会社株主帰属中間利益は 2,631億円(同17.7%増) と着実な増益を確保しました。1株当たり中間利益(EPS)は 226.33円(同21.3%増) に伸長しています。
業績を押し上げた主な要因:
- 油価および為替の追い風 :期中平均ブレント原油価格は 87.60ドル/bbl(前年同期比+16.79ドル) 、平均為替レートは 158.29円/$(同9.88円の円安) と、販売単価の上昇と為替差益に寄与しました。
- イクシスLNGの利益貢献 :イクシスからの利益貢献額(セグメント利益)は 1,730億円(前年同期は1,390億円) へと増大し、全社業績の下支えとして強固な役割を果たしました。
- 税金費用・その他の変動 :原油の減収・減益に伴う法人税等の減少や、イクシス減資に伴う為替差益などの計上(+456億円)が最終利益を押し上げました。
一方で、中東紛争等の影響を受けてアブダビ事業における原油販売量が減少したこと(原油販売量:前年同期比22.8%減の5,517万bbl)が売上収益の押し下げ要因(販売量減少による売上影響:△1,781億円)となりました。
3. 地政学リスク(中東情勢)への対応と強靭なポートフォリオ
足元の中東情勢緊迫化は、同社の中核事業拠点の一つであるアブダビ事業における出荷制限や販売量の減少という形で影響を及ぼしました。しかし、同社は事業継続性を高める強靭なポートフォリオの構築を進めています。

スライド4の重要性とその解説
上記スライドは、中東紛争による影響とそれに対する同社の構造的強み、そして今後の対応方針を包括的に示した非常に重要な資料です。
- 多様化されたポートフォリオによるリスク分散 : アブダビでの販売量減少(減益要因)が生じたものの、同地政学リスクを背景とした グローバルな油価上昇 と、オーストラリアの イクシス等他プロジェクトの増益 がこれを上回り、会社全体としては 最高益を更新する結果 をもたらしました。
- 「経済合理性重視」から「セキュリティ・レジリエンス重視」への環境変化 : 中東紛争を経て、世界のエネルギー市場はサステナビリティや調達多角化に加え、ホルムズ海峡への依存低減を含む エネルギー・セキュリティの確保 をより強く追求する時代へ移行しています。
- 具体的な中長期対応方針 : 原油面ではアブダビの圧倒的な低コスト・高品質という競争力に基づき増産投資を継続する一方で、ガス面では チョークポイント(ホルムズ海峡等)を経由しないアジア近接のイクシスおよびアバディプロジェクト の価値が極めて高まっています。この戦略的配置により、供給リスクを最小化しながらエネルギー需要に応える体制が維持されています。
4. 主な事業セグメント・トピック:イクシスLNGとアブダビ、その他の鉱区
- イクシスLNGプロジェクト(オーストラリア) : 上期中に LNG 64カーゴ を出荷し、安定操業を継続。労使交渉におけるストライキの影響も軽微に抑えられました。2026年通期のLNG出荷カーゴ数は、低圧生産設備(BCM)接続作業による一時シャットダウンを予定しているものの、上期の好調を踏まえ 従来見通し(年間平均月10カーゴ程度)を年間合計で数カーゴ上回る見込み です。また、バックフィル(ガス供給源)および将来の第3トレイン拡張候補として Beetaloo堆積盆地鉱区 を取得・評価中であり、2026年9月頃からパイロット生産を開始予定です。
- アブダビ事業 : 上部ザクム油田の追加開発に向けたEPC Tender Awardsの実施や、陸上Bab油田のガスキャップ開発に向けた利権契約締結など、中長期の生産能力増強に向けた投資を着実に進めています。
- その他の探鉱・開発 : アゼルバイジャンACG鉱区の権益を保有する(株)INPEX南西カスピ海石油の完全子会社化、マレーシア・サラワク沖2E鉱区の権益取得、インドネシアBarong鉱区の生産分与契約締結など、ポートフォリオの継続的な拡充を行っています。
5. 超大型開発案件「アバディLNG」の着実な進展
インドネシアで推進する アバディLNGプロジェクト は、2027年中央頃の 最終投資決定(FID) に向けて極めて順調に進捗しています。
- マイルストーンの達成 :2026年上期にSURF/GEPのFEED(詳細設計)が完了し、7月からはEPC(建設工程)の入札(Tender)を開始しました。また、買主5社との基本合意(HoA)完了から売買契約(SPA)交渉へ移行しており、環境許可(AMDAL Addendum)の取得手続きも進んでいます。
- 経済性と確実性の担保 :FID条件としてEquity IRR 10%台半ばの経済性を確保する見通しです。2026年7月には現地ヤムデナ島にて Groundbreaking Ceremony(地鎮祭) が実施され、プラボウォ大統領がスピーチを行うなど、国家戦略プロジェクトとして強力な公的支援を受けています。2030年代初頭の生産開始を目指します。
6. 低炭素化・エネルギー移行(GX)への取り組み
同社は化石燃料の安定供給に加え、脱炭素社会に向けた取り組み(クリーン水素・アンモニア、CCS、再生可能エネルギー)を具体化しています。
- CCS・クリーン水素/アンモニア : 新潟県柏崎市におけるブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験「柏崎水素パーク」にて、2026年6月より水素発電電力の供給を開始。首都圏CCSでは千葉県九十九里沖での試掘井掘削作業を開始し、2030年代初頭のCO2貯留開始を目指しています。
- 再生可能エネルギー : 豪州Potentia Energy事業におけるクォーンパーク太陽光発電・蓄電事業(2026年操業開始予定)や、インドネシア・ムアララボ地熱発電所の拡張工事(2027年商業運転開始予定)が進展しています。
7. 2026年12月期 通期業績予想の上方修正とキャッシュ・フロー
通期の業績予想は、足元の堅調な生産と販売単価の上昇を背景に 大幅に上方修正 されました。
- 通期純利益予想 :前回(5月発表)の4,500億円から 5,100億円へ+600億円の上方修正 。
- 前提条件 :通期平均ブレント油価 81.4ドル/bbl (下期75.0ドル/bbl)、通期平均為替 159.2円/$ (下期160.0円/$)。
- 財務健全性と指標 :ROICは 8.2% 、ROEは 10.5% と目標水準を維持し、ネットD/Eレシオも 0.37 と健全な財務体質を維持しています。
- キャッシュ・フロー見通し :営業キャッシュ・フローは 1兆550億円 を計画。成長投資として 6,760億円 (アバディ開発準備資金の積立2,000億円を含む投資CF全体では8,590億円)を予定しています。なお、アバディ開発準備資金の期末残高は 7,700億円強 に達し、当初想定より1年前倒しで達成する見通しです。
8. ピア比較と中長期の成長シナリオ
同社は国際的な石油・天然ガス開発企業(メジャー・準メジャー)と比較しても、トップクラスの成長実績と将来ポテンシャルを有しています。

スライド6の重要性とその解説
本スライドは、同社の過去10年間の成長実績がグローバルな競合他社を凌駕している事実と、2035年に向けた明確な長期成長ロードマップを示す非常に重要な資料です。
- 過去10年(2015-2025年)の圧倒的成長実績(左図) : 営業キャッシュ・フロー(CAGR)およびネット生産量(CAGR)の2軸において、ExxonMobilやChevronなどの「メジャー」やWoodside、OXYなどの「準メジャー」を大きく上回り、 業界トップの成長率 を達成したことが示されています。
- 2035年に向けた将来成長見通し(右図) : 2026年を起点(63万Boed)として、他社が横ばい〜減少傾向をたどる見込みであるのに対し、INPEXはアブダビの生産能力増強、アバディLNGの立ち上げ、イクシスTrain 3拡張などを通じて、 2035年にネット生産量80万Boed (約27%増)を目指しています。
- 営業キャッシュ・フロー1.5兆円目標 : 生産量の拡大に伴い、営業キャッシュ・フローを2024年実績比で67%増となる 1兆5,000億円 にまで拡大させる計画であり、持続的な企業価値向上の裏付けとなっています。
9. 過去最高の株主還元策と株価ディスカウント解消への姿勢
業績の絶好調と潤沢なキャッシュ・フローを背景に、同社は株主還元の拡充と資本効率の改善を強く推進しています。

スライド11の重要性とその解説
上記スライドは、同社の株主還元方針の進化と具体策を集約した重要資料です。
- 連続増配と高水準の還元実績 : 2020年(24円)以降、一貫した増配傾向を維持しており、2026年度は前期の100円から 12円増配の年間112円(中間56円/期末56円) を予定。配当金総額は1,303億円となります。
- 大規模な自己株式取得 : 当期利益の過去最高更新に加え、現在の株価が割安であるという認識のもと、 1,400億円の自己株式取得 を決定しました。これにより、配当と合わせた還元総額は 2,703億円(過去最高) となり、総還元性向は中期経営計画の目標(50%以上)を上回る 約53% に達します。
- 株価ディスカウント解消への強いコミットメント : PBRが0.8倍程度(2026年7月末時点)に留まっている現状に対し、持続的な累進配当と機動的な自社株買い、そしてアバディ等の将来成長ストーリーの浸透を通じて、資本効率の向上と株価ディスカウントの早期解消を目指す姿勢が明確に表れています。
10. 結論・総括
INPEXの2026年12月期中間決算は、中東情勢という外部リスクを 強靭なポートフォリオ(高油価+イクシス好調) によって見事に吸収し、 過去最高益の更新 と通期業績の上方修正 を達成した内容となりました。
短期的には 増配(年112円) と大規模自社株買い(1,400億円) によって力強く株主へ還元しつつ、中長期的には アバディLNGの2027年FID や2035年生産量80万Boed/営業CF 1.5兆円 に向けた大型成長投資を着実に実行しています。エネルギーの安定供給という社会的使命と、資本効率・株主価値の向上をハイレベルで両立させている点が同社の大きな強みと言えます。
注記:本レポートは公表された決算資料に基づいて客観的に作成されたものであり、特定の有価証券の売買や投資勧誘を目的としたものではありません。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。