
フォースタートアップス 2027年3月期 第1四半期決算ディープダイブレポート
StockClub
公開日時: 2026/08/06 11:04
Sentiment Analysis

フォースタートアップス株式会社(証券コード: 7089)の2027年3月期第1四半期決算は、主力事業であるヒューマンキャピタル事業の力強い伸びが牽引し、前年同期比で 大幅な増収増益 を達成しました。本レポートでは、同社が公表した決算説明資料に基づき、業績ハイライト、主要KPIの推移、セグメント別の詳細、ならびに中長期的な成長ストーリーについて多角的に分析・解説します。
1. 2027年3月期 第1四半期 連結業績の概要
当第1四半期における連結業績は、売上高・各段階利益ともに高い成長を示しました。売上高は 1,543百万円(前年同期比+38.3%) 、営業利益は 449百万円(前年同期比+112.0%) 、経常利益は 419百万円(前年同期比+98.3%) 、親会社株主に帰属する四半期純利益は 283百万円(前年同期比+87.2%) となりました。
売上高は概ね社内計画通りの着地となった一方、営業利益をはじめとする利益各項目は社内計画を上回って推移しています。前年同期において推進していた生産性改善の取り組みが結実し、全社的な収益構造が著しく向上したことが要因です。

スライド解説: 連結決算サマリーと通期計画に対する進捗
上記スライドは、当第1四半期の連結業績と通期予想に対する進捗率を示しています。注目すべきは 各利益項目の進捗率の高さ です。通期計画に対する進捗率は、売上高が 24.1% (通期予想6,400百万円)と巡航速度であるのに対し、営業利益は 32.1% (通期予想1,400百万円)、経常利益は 32.3% (通期予想1,300百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は 30.1% (通期予想940百万円)に達しています。第1四半期時点で利益の進捗が30%を超えている背景には、後述するヒューマンキャピタル事業における高単価案件の集中と高い生産性の維持が寄与しています。なお、同社は現時点では通期業績予想を変更せず据え置いています。
2. 営業利益増減要因とコスト構造の分析
前年同期比での営業利益の増減分析(スライド6参照)によると、営業利益は212百万円から449百万円へと +237百万円の増益 となりました。
- 売上高の増加に伴う増益効果 : +427百万円
- 売上原価の増加 : △77百万円
- 人件費の増加 : △107百万円
- その他販管費の増加 : △5百万円
人員数の増加に伴い人件費や売上原価が増加したものの、それを大幅に上回る売上高の増加を実現したことで、営業利益率は前年同期の19.0%から 29.1%へ急改善 しました。人件費投資を適切に行いつつも、一人当たりの生み出す付加価値が高まったことが利益率拡大の背景にあります。
3. セグメント別業績と主要KPIの深掘り
同社の事業は「ヒューマンキャピタル事業」「オープンイノベーション事業」「ベンチャーキャピタル事業」の3セグメントで構成されています。
(1) ヒューマンキャピタル事業:過去最高の四半期売上高を更新
主力であるヒューマンキャピタル事業の売上高は 1,432百万円(前年同期比+41.8%) 、セグメント利益は 722百万円(前年同期比+60.0%) と、全社の業績成長を強力に牽引しました。

スライド解説: 人材紹介サービスの売上高分解と決定単価構造
上記スライドは、ヒューマンキャピタル事業の中核である人材紹介サービスの入社件数と平均決定単価、および決定年収構成比の推移を表しています。 当第1四半期の決定件数(入社件数)は 287件(前年同期は239件) へと順調に拡大しました。加えて、 平均決定単価が4,608千円(前年同期比+19.1%) と著しく上昇したことが売上拡大に大きく貢献しました。 年収構成比を見ると、 決定年収1,000万円以上の高年収帯比率が44.9%(前年同期は31.4%) へ拡大しており、ハイクラス層・経営幹部層の転職マッチングが極めて好調であったことが分かります。ただし、会社側はこの高単価化について「インフレや採用競合激化によるオファー年収上昇等の外部要因に加え、高年収帯への決定が偏った一過性の要素が含まれる」と分析しており、今後は前期の単価水準(4,000千円台前半)へと徐々に落ち着く見通しを示しています。
ヒューマンキャピタル事業の主要KPIと人員推移
- 新規求職者面談数 : 前年同期比 +12.4% と集客・スカウトが順調に推移。
- 面接設定UU数 : 前年同期比 +10.3% の伸び。
- 1人あたり決定件数 : 0.53件(前四半期の0.57件や前々四半期の0.62件と比較して低下が見られますが、これは 新卒新入社員の配属による一時的な母集団拡大 に伴うものであり、想定通りの推移とされています)。
- 人員体制 : 全社社員数は 271名(前四半期末比+19名) となり、採用の9割以上をヒューマンキャピタル事業へ配属。中途採用が計画通り進展していることに加え、退職率も鈍化傾向を示しています。
(2) オープンイノベーション事業
オープンイノベーション事業の売上高は 110百万円(前年同期比+5.4%) 、セグメント損益は 0百万円(前年同期は△4百万円) となりました。 データベースサービス「STARTUP DB」やアクセラレーションサービスは堅調に推移していますが、前期第4四半期に計上された単価の高いスポット売上の反動減や、大型カンファレンスの当面開催見送り判断により、前四半期比(QoQ)では減収となっています。ただし、カンファレンス見送りによる通期業績計画への影響は軽微と説明されています。
(3) ベンチャーキャピタル事業:初のイグジットを達成
当第1四半期の売上高は0百万円、セグメント損益は△2百万円(前年同期と同水準)でしたが、トピックスとして ファンド保有株式の一部のセカンダリー取引による売却決済(初のイグジット) が6月に完了しました。 会計期間のズレにより、当決算(第1四半期)には計上されず、 第2四半期に売上高約48百万円、売上総利益約43百万円が計上される予定 です。過去に評価損を計上していた銘柄ですが、当初投資時株価を上回る価格での売却を実現しており、残存保有株式についても含み益の状態を維持しながらIPOに向けた継続支援を行っています。
4. 中期経営方針と成長戦略の進捗
同社は単なる人材紹介会社にとどまらず、日本のスタートアップ・エコシステム全体を支える 「成長産業支援プラットフォーム」 への進化を掲げています。

スライド解説: 成長産業支援プラットフォームの事業ポートフォリオ戦略
上記スライドは、同社が目指す中長期的な事業構造を示しています。同社は以下の3つの要素を組み合わせることで高収益化を図る戦略をとっています。
- 第1の柱(既存コア) : スタートアップHRの圧倒的No.1 (ヒューマンキャピタル事業)
- 第2の柱(新規事業) : スタートアップM&A仲介のNo.1
- 金融収益 : 自身による 投資事業(ベンチャーキャピタル) これらを支えるサービス基盤として、スタートアップデータベース「STARTUP DB」、行政・政策連携による「アクセラレーション」、および「コミュニティ」の3データ・ネットワーク資産が機能します。
スタートアップM&A仲介事業の進捗
事業承継型M&Aとは異なり、利害関係者が多く株価評価や成長支援の調整が難解な「スタートアップ特有のM&A」において、同社は強みを発揮しています。6月末時点で 累計受託案件数は15件 に達し、譲受候補企業とのトップ面談が進むなど着実なアプローチを展開しています。また、三井住友銀行との共同カンファレンス開催など、認知度向上と案件獲得に向けた施策を精力的に推進しています。
企業価値向上に向けた長期ビジョン
同社は第10期で売上高50億円レベルに到達した後、次のステップとして 早期の売上高100億円超え を目標に設定しています。さらに、 2031年3月期までに現行のプライム市場変更基準を満たす事業成長を実現する という明確な長期ロードマップを定めています。
5. ガバナンス及び経営陣のコミットメント
経営陣の株主価値向上に対する意識の高さを示す施策として、取締役3名(志水氏、恒田氏、清水氏)による 総額上限1.5億円の自社普通株式の市場買付(2026年8月7日以降実施) が発表されました。 一般的な株式報酬スキームでは役員報酬水準に対して効果が限定的になるとの判断から、法人からの貸付を原資として経営陣が自らリスクを取り株式取得を行うスキームが採用されました。これは今後の業績拡大および株価成長に対する経営陣の強い確信とコミットメントを示すものと言えます。
まとめ
2027年3月期第1四半期のフォースタートアップスは、 ヒューマンキャピタル事業における高単価化と生産性向上 によって大幅な増益を達成し、極めて順調なスタートを切りました。短期的な業績の好調さに加え、 M&A仲介という新規領域の開拓 、VC事業における初のイグジット実績の創出 、経営陣による自社株買い施策 など、中長期的な企業価値向上に向けた打ち手が着実に実行されています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。