
Veritas In Silico (130A) 2026年12月期 第2四半期決算アナリシス:独自のAI創薬プラットフォームとDDS「Perfusio」で挑むスペシャリティファーマへの成長ストーリー
StockClub
公開日時: 2026/08/06 09:51
Sentiment Analysis

Veritas In Silico (130A) 2026年12月期 第2四半期決算アナリシス
mRNA標的創薬のパイオニアである 株式会社Veritas In Silico(以下、VIS) の2026年12月期第2四半期決算が発表されました。大企業等との共同創薬研究(プラットフォーム事業)の推進に加え、自社パイプラインの拡充、さらには新規事業であるドラッグデリバリーシステム(DDS)「Perfusio」の本格化など、持続成長に向けた基盤構築が着実に進められています。
本レポートでは、同社の決算資料から読み取れる重要トピックを多角的に整理・分析し、同社の事業構造、研究開発の進捗、財務状況、そして中長期の成長ストーリーを詳細に解説します。
1. 創薬ビジネスを支えるハイブリッド型収益モデルの構造
VISは独自開発のAI創薬プラットフォーム 「aibVIS」 をコア技術とし、mRNAを標的とした低分子医薬品および核酸医薬品の創薬に取り組んでいます。同社のビジネスモデルは、初期から安定した収益を得る 「プラットフォーム型」 と、ライセンスアウト時に大型の一時金やマイルストーンを狙う 「パイプライン型」 の2つを組み合わせた 「高成長ハイブリッド型モデル」 を採用しています。

創薬研究から製品が市場に出るまでには通常約10年を要します。プラットフォーム型事業では、製薬会社との共同創薬研究を通じて 「契約一時金」「研究支援金」「研究マイルストーン」 を創薬初期(2〜4年)から段階的に獲得することで、研究開発期間中の収益を安定化させています。
一方で、自社パイプライン型事業では、研究コストとリスクを自社で一定程度負担しつつ非臨床開発などを先行して進め、ライセンスアウトによって 「大型一時金」「開発・販売マイルストーン」「ロイヤリティ」 を得る構造を構築しています。この2つの車輪を回すことで、収益の安定性と将来的な爆発的成長を両立させる狙いがあります。
2. 2026年12月期 第2四半期 業績ハイライトと損益構造
当第2四半期累計期間(2026年1月〜6月)の業績は以下の通りとなりました。
- 事業収益 : 36百万円 (前年同期 43百万円、前年同期比 △15.0%)
- 事業費用 : 283百万円 (前年同期 229百万円、前年同期比 +23.2%)
- 研究開発費 : 132百万円
- 販売費及び一般管理費 : 150百万円
- 営業利益 : △246百万円 (前年同期 △186百万円)
- 経常利益 : △243百万円 (前年同期 △182百万円)
- 中間純利益 : △386百万円 (前年同期 △184百万円)
事業収益は主に製薬会社等からの研究支援金等により 36百万円 を計上しました。一方、事業費用は研究開発活動の活発化や川崎研究所の移転等に伴い 283百万円 に増加しています。
なお、中間純利益において赤字幅が拡大している主な要因は、固定資産の減損処理に伴う 特別損失(減損損失)141百万円 を認識したためです。これは将来の資産効率適正化を視野に入れた会計上の処理であり、キャッシュの流出を伴うものではありません。
四半期(QoQ)での推移を見ると、事業費用は140百万円前後の一定ペースで推移しており、先端バイオテックとして規律ある研究開発投資が行われていることが伺えます。
3. アライアンス戦略と契約交渉の最前線(CDA交渉状況)
プラットフォーム事業において最も重要な先行指標が、潜在パートナー企業との 秘密保持契約(CDA)の締結数および交渉進捗 です。

現在、製薬業界では大手製薬会社が自社創薬を控え導入を重視する傾向があり、プラットフォーム契約の機会獲得には戦略的なアプローチが不可欠となっています。VISでは、欧州市場での認知度向上を図るため スイス企業SpiroChemとの共同探索研究を開始 したほか、自社Webinarの開催や海外訪問を積極的に推進しています。
2026年6月末時点において、 CDA下で契約交渉中の企業は合計8社 (うち2社は海外企業)に達しており、農薬企業2社とのCDA締結も含まれています。これまでCDAを締結して交渉を進めた累計30社のうち、すでに 13社(43%) が最終契約へと結びついており、極めて高いコンバージョン率を維持しています。交渉中の8社のうち 6社は早期収益化が見込める契約交渉中 であり、今期および来期における新規契約締結(年間目標2社)への高い蓋然性を示しています。
4. 既存・自社パイプラインの着実な進捗と知財戦略
VISの成長ストーリーの中核をなすのが、 自社パイプラインの創出と知財(特許)の網羅的な獲得 です。
主なパイプラインの進捗
- 自社パイプライン1 : DDSを活用した臨床試験のコストと期間の短縮を見据え、 非臨床試験に向けた動物実験を年内にも開始 できる見込みとなりました。
- 自社パイプライン2 : 2026年内の新規核酸医薬品に関する特許出願を目指し、複数の有望候補物質の創出が進んでいます。
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬 : 東京慈恵会医科大学との共同研究成果として、新規核酸医薬品の物質特許が公開され、共同記者会見を実施しました。
知財ポートフォリオの強固化
同社の競争優位性を支える知的財産は、 取得済み3件・出願審査中8件 となっています。 AI創薬アルゴリズム( AISLAR )や解析技術( STRIDE-seq )といった基盤技術特許に加え、DDS関連のカテーテルや動物実験モデルに関する特許、さらにはmRNA標的医薬品・農薬に関する物質特許を包括的に申請・取得しており、参入障壁を着実に高く構築しています。
5. 新規事業領域「Perfusio(DDS事業)」の画期性とロードマップ
同社が新たな成長の柱として立ち上げたのが、独自のドラッグデリバリーシステム 「Perfusio(ペルフュージオ)」 です。

Perfusioのメカニズムと事業価値
Perfusioは、カテーテルを用いて 対象臓器のみに直接医薬品を送達し、かつ回収する ことで、全身への薬物循環を阻害する革新的なシステム(Drug Delivery/Recovery System = DDRS)です。
- 劇的な副作用低減 : 全身へ薬剤が広がらないため、脱毛や強い毒性などの副作用を抜本的に低減できます(例:標的臓器以外に届かないため髪が抜けない等)。
- ドロップ品・中止品への新たな活路 : 過去にPhase I等の臨床段階で「毒性」により開発中止となった優れた薬効を持つ医薬品や、薬物動態が不良だった候補物質にPerfusioを適用することで、 ドラッグラグの解消や既存プロジェクトの事業価値最大化 を実現します。
実用化に向けた明確なロードマップ
- 2026年8月28日 : 独立行政法人医薬品医療機器総合機構( PMDA )との開発前相談を実施。承認申請に必要な評価項目を整理・確認。
- 2026年〜2027年 : PMDA申請およびパートナー企業の選定・契約推進。
- 2027年度内 : 機器としての 販売開始目標 。
- 2028年以降 : 自社核酸医薬品の臨床試験への本格応用。
Perfusio自体をライセンスアウト(導入)することによる単体での収益化に加え、自社核酸医薬品の成功確率を飛躍的に高める両面での貢献が期待されます。
6. 研究開発基盤の強化:新「川崎研究所」の本格稼働
事業拡大を裏付けるインフラ投資として、2026年4月1日付で 川崎研究所の移転・拡張 を完了し、本格稼働を開始しました。
- 実験室スペースを約4倍(約275㎡)に拡大 (事務室スペースは約1.5倍)。
- 設備投資額 : 研究施設に 82百万円 、研究機器に 22百万円 (計1.04億円)を投入。
- 目的 : 清浄性・動線・機器配置をRNA研究用に最適化するとともに、最新計算能力・AIの増強、DX化を推進。mRNA標的低分子農薬などの応用研究も効率的に推進できる環境が整いました。
7. 財務健全性と中長期成長ビジョン(2030年に向けたロードマップ)
貸借対照表(BS)とキャッシュフロー
2026年6月末時点の流動資産は1,497百万円、現金及び預金残高は 1,430百万円 (現金及び現金同等物残高は430百万円)を確保しています。 総資産は1,519百万円、純資産は1,397百万円であり、 自己資本比率は92.0% という極めて高い財務安全性・健全性を維持しています。当中間期における営業キャッシュフローは△282百万円となりましたが、定期預金の払出し等により資金繰りには十分な余力があります。
通期業績予想と中期目標(KPI)
- 2026年12月期 通期予想 : 事業収益 113百万円 、事業費用 682百万円 、当期純損失 △567百万円 。
- 中期経営計画の年間KPI : 新規契約締結数 2社/年 、パイプライン創出数 1本/年 。
同社は、創薬プラットフォームによる初期収益(スタートアップ時代)から、自社パイプラインの価値を株式価値に反映させる ハイブリッド型時代 を経て、最終的には研究開発・販売機能を備えた 「持続成長可能なスペシャリティファーマ(2030年ビジョン)」 へと進化する明確な成長トラックを描いています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。