
ヒロセ電機 2026年度第1四半期決算ディープダイブレポート:FA・車載・通信の牽引による業績拡大と通期予想の上方修正
StockClub
公開日時: 2026/08/05 10:19
Sentiment Analysis

ヒロセ電機 2026年度第1四半期決算ディープダイブレポート
コネクタ大手である ヒロセ電機株式会社(証券コード: 6806) は、2026年度第1四半期(2026年4月〜6月期)の決算を発表しました。全市場分野での増収を背景に、売上高・営業利益ともに前年同期比で大幅な伸びを達成し、好調なスタートを切っています。
本レポートでは、今回公表された決算資料に基づき、業績サマリー、主要増減要因のウォーターフォール分析、セグメント別動向、修正された通期業績予想、および株主還元策と設備投資の動向について網羅的かつ詳細に解説します。
1. 2026年度第1四半期 業績サマリー
当第1四半期におけるヒロセ電機の業績は、 売上高・利益ともに大幅な前年同期比増収増益 となりました。材料コスト負担の継続が見られるものの、主力分野における需要回復と物量増加が収益性を向上させています。
【第1四半期の主要業績ハイライト】
- 受注高 : 710.6億円 (前年同期比 +36.6% / 前四半期比 +12.4% )
- 売上高 : 620.8億円 (前年同期比 +26.8% / 前四半期比 +13.5% )
- 営業利益 : 133.4億円 (前年同期比 +35.6% / 前四半期比 +27.1% )
- 営業利益率 : 21.5% (前年同期比 +1.4pt / 前四半期比 +2.3pt )
- 税引前利益 : 144.7億円 (前年同期比 +41.3% )
- 四半期利益 : 73.3億円 (前年同期比 +1.4% )
受注高が700億円を超え、売上高を上回る推移を見せていることは、今後の需要の根強さを示唆しています。

スライド解説:業績サマリーの重要性
上記の スライド(PAGE 2) は、当期の好スタートを象徴する極めて重要なデータです。前年同期比(2025年度1Q)および前四半期比(2025年度4Q)の双方において、受注・売上・営業利益・営業利益率の全項目が正の成長を示しています。特に 受注高が前年同期比+36.6%増の710.6億円 に達したことは、産業機器(FA)や自動車向けを中心とした需要の力強い回復を示しています。また、営業利益率が前四半期の19.2%から 21.5%へと復調 しており、売上規模拡大に伴う操業度の高まりが収益性を押し上げた構造が確認できます。
2. 営業利益の対前年同期 変動要因分析
第1四半期の営業利益は、前年同期の98.3億円から 133.4億円(+35.1億円増益) へと拡大しました。コスト増を物量増や為替効果が補う構造となっています。
【営業利益の主な変動内訳(前年同期比)】
- 物量増によるプラス影響 : +55億円
- 工場自動化(FA)向けや車載向け、AIサーバー向けなどの出荷数量増加が利益を力強く牽引しました。
- 為替影響によるプラス影響 : +18億円
- 為替の円安推移(1US$=159.49円、1€=185.39円)が押し上げ要因となりました。
- 価格適正化によるプラス影響 : +7億円
- 材料費高騰等に応じた適正価格への改定効果が現れています。
- 材料・仕入れ費の増強(マイナス要因) : -25億円
- 原材料価格や仕入コストの上昇が利益の抑制要因となりました。
- 人件費増(マイナス要因) : -14億円
- ベースアップや人員補強による人件費の増加。
- 償却費およびその他費用の増加(マイナス要因) : -6億円 (償却費-3億円、その他-3億円)

スライド解説:営業利益対前年同期変動分析の重要性
スライド(PAGE 6) のウォーターフォール図は、ヒロセ電機の現在の収益構造を明確に表しています。材料・仕入費の増加(-25億円)や人件費の増加(-14億円)といったコスト増のプレッシャーが存在する中で、それを大幅に上回る 物量増効果(+55億円) を生み出した点が最大のポイントです。さらに、積極的な 価格適正化(+7億円) への取り組みと為替追い風(+18億円)が組み合わさることで、高い利益水準を維持・拡大できていることが分かります。
3. 分野別売上動向:主要市場の詳細分析
各市場分野における売上動向は、FA関連とAI・モビリティ関連の成長が際立っています。
① 一般産機分野(売上高: 206億円 / 前年同期比 +46% / 売上構成比 33%)
- トピックス : FA(ファクトリーオートメーション)関連の強い回復と成長が牽引 し、過去最高売上だった180億円を大幅に上回る206億円を記録しました。
- 背景 : 製造業における自動化・省力化投資の再開、半導体製造装置やロボット向けコネクタの需要増が貢献しています。
② 自動車・モビリティ関連分野(売上高: 156億円 / 前年同期比 +22% / 売上構成比 25%)
- トピックス : 四半期売上として 初めて150億円台を突破 し、過去最高を更新しました。
- 背景 : 電装化の進展、ADAS(先進運転支援システム)、EV(電気自動車)向けコネクタの採用拡大と顧客基盤の広がりが寄与しています。
③ スマートフォン・携帯端末分野(売上高: 108億円 / 前年同期比 +4% / 売上構成比 17%)
- トピックス : 中国市場向けは低調に推移したものの、その他地域での堅調な出荷により前年同期比で増収を維持しました。
④ コンシューマ・モバイル機器分野(売上高: 95億円 / 前年同期比 +10% / 売上構成比 15%)
- トピックス : エッジAI関連機器向けコネクタの増加 や、新たな顧客・アプリケーションの開拓により全体が押し上げられました。
⑤ 通信インフラ機器分野(売上高: 25億円 / 前年同期比 +92% / 売上構成比 4%)
- トピックス : 全体構成比はまだ小さいものの、前年同期比で倍増近い急成長を達成しました。
- 背景 : AIサーバー関連需要の着実な拡大 が成長の原動力となっています。
⑥ コネクタ以外「ヒロセSER」(売上高: 11億円 / 前年同期比 +57% / 売上構成比 2%)
- トピックス : 新事業領域であるヒロセSERは、通期60億円のターゲットに向け、設備投資と増産を推進中で、計画通りの立ち上がりを見せています。
4. 2026年度 通期業績予想の上方修正
第1四半期における一般産機向けビジネス等の想定以上の好調を受け、ヒロセ電機は 2026年度通期の連結業績予想の上方修正 を発表しました。
【通期連結業績予想の修正内容】
- 売上高 : 前回予想 2,300.0億円 → 修正予想 2,500.0億円 (前期比 +18.3% 、+200.0億円増額 )
- 営業利益 : 前回予想 460.0億円 → 修正予想 500.0億円 (前期比 +16.3% 、+40.0億円増額 )
- 営業利益率予想: 20.0% (第2四半期累計期間は20.4%を想定)
- 税引前利益 : 前回予想 480.0億円 → 修正予想 530.0億円 (前期比 +13.7% 、+50.0億円増額 )
- 当期利益 : 前回予想 340.0億円 → 修正予想 350.0億円 (前期比 +5.6% 、+10.0億円増額 )
- 1株当たり当期利益(EPS) : 1,039.08円 → 1,069.63円
- 前提為替レート : 1US$= 155.00円 、1€= 180.00円

スライド解説:業績予想(連結)修正の重要性
スライド(PAGE 17) は、ヒロセ電機の通期成長ストーリーの裏付けとなる最重要スライドです。期初(5月時点)の予想に対し、売上高で 200億円 、営業利益で 40億円 という大幅な上振れを見込んでいる点が強調されています。年間通じて 営業利益率20.0%以上 を堅持する計画であり、売上高2,500億円・営業利益500億円という高い目標設定は、同社の製品競争力と市場の回復に対する自信を浮き彫りにしています。
【市場別・年間売上予想の修正(前年度比率予想の変更)】
- 一般産機 : 5月予想 +15% → 8月予想 +34% (大幅引き上げ、売上予想830億円)
- 自動車・モビリティ : 5月予想 +10% → 8月予想 +16% (引き上げ、売上予想630億円)
- 通信インフラ機器 : 5月予想 +34% → 8月予想 +49% (引き上げ、売上予想100億円)
- スマホ・携帯端末 : 5月予想 -3% → 8月予想 ±0% (売上予想445億円)
- コンシューマ・モバイル : 5月予想 -2% → 8月予想 +4% (売上予想360億円)
5. 資本政策・株主還元と成長投資
ヒロセ電機は、高い自己資本比率( 86.4% )の堅固な財務基盤を背景に、機動的な資本政策と将来成長に向けた投資を継続しています。
① 自己株式取得(株主還元)の実施
同社は2025年5月に「2025年度〜2028年度の4年間で 総額600億円を上限 とする自己株式取得方針」を決定しています。これに基づき、以下の自己株式取得枠を設定しました。
- 取得株式数 : 700,000株(上限) (発行済株式総数(自己株式除く)に対する割合: 2.14%)
- 取得価額総額 : 150億円(上限)
- 取得期間 : 2026年8月10日〜2026年11月30日
- 年間配当予想 : 1株当たり 520円 (連結配当性向48.6%)を維持
② グローバル供給体制の強化(ヒロセコリア AMC物流センター新設)
自動車向け製品を中心にグローバルでの需要拡大に対応するため、韓国子会社(ヒロセコリア)に新たな物流拠点を新設することを発表しました。
- 施設名 : AMC物流センター
- スケジュール : 2026年9月着工、2027年12月竣工予定
- 構造・規模 : 8階建て、敷地面積 6,404.7㎡(1,937坪)
- 目的 : 自動搬送システムの導入による入出庫効率化、保管能力の向上によるサプライチェーンの安定化。
6. まとめ
ヒロセ電機の2026年度第1四半期決算は、 一般産機(FA)の劇的な回復 と自動車・AIサーバー向けの好調 に支えられ、過去最高水準の四半期業績を達成する結果となりました。
原材料高や人件費増といったコストアップ要因は存在するものの、物量効果や価格適正化、為替影響により吸収し、高い利益率(21.5%)を確保しています。これらを踏まえた通期予想の上方修正(売上高2,500億円、営業利益500億円)および150億円規模の自社株買いの決定は、同社の堅固な事業基盤と積極的な株主還元姿勢を示しています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。