
トヨコー 2027年3月期 第1四半期決算ディープダイブレポート:レーザー施工技術「CoolLaser」の量産化と市場開拓が描く成長ストーリー
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公開日時: 2026/08/05 10:01
Sentiment Analysis

1. はじめに:株式会社トヨコーの事業概要と決算の全体像
株式会社トヨコー(証券コード: 341A) は、老朽化する社会インフラや建築物の維持管理・補修において、独自の先進技術を展開するテクノロジー企業です。同社の主要事業は、超高出力レーザーを用いて構造物のサビや旧塗膜、塩分等の有害物質を除去・素地調整する 「CoolLaser(クーレーザー)事業」 と、特殊な3層樹脂を屋根にスプレーコーティングして防水・断熱性能を高める 「SOSEI(ソセイ)事業」 の2本柱で構成されています。
2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の業績は、連結売上高が 849百万円 、営業利益が 131百万円 となり、上期予想に対して 売上高進捗率51.1% 、営業利益進捗率45.8% と、概ね事前予想に沿った着実な進捗を見せています。基盤事業であるSOSEIが安定した収益・キャッシュフローを提供し、高成長フェーズにあるCoolLaser事業の拡大を強力に下支えする構造が明確に示された決算内容となっています。
2. 2027年3月期 第1四半期 業績ハイライトと損益・財務構造の分析
第1四半期の業績動向について、損益計算書(PL)および貸借対照表(BS)の観点から詳細に確認します。
売上高および利益の推移
売上高は前年同期比 +24.0%の伸び を示し、主要2事業ともに成長を記録しました。セグメント別売上高では、SOSEI事業が 605百万円 (前年同期比+23.9%)、CoolLaser事業が 244百万円 (前年同期比+24.1%)となっています。SOSEI事業は、通期予想における成長率(前年比+6.5%)を大幅に上回る好スタートとなりました。
一方、損益面では売上総利益(粗利益)が 337百万円 (前年同期比+14.0%)、粗利益率は 39.7% (前年同期は43.2%)とやや低下しました。これは中東情勢等を背景とした材料価格の高騰や外注費の上昇が影響しており、同社では順次価格転嫁(値上げ)を進めているものの、上期中は影響が残る見通しです。
また、販管費は 205百万円 (前年同期比+37.1%)に増加しました。主な要因は、事業拡大に伴う 人員増加(従業員数49名→54名)に伴う人件費増 、採用手数料等の支払い手数料増(+5百万円)、および 研究開発費の増額(69百万円、前年同期比+24百万円) です。これらの積極的な成長投資により、営業利益は前年同期比△9.8%の 131百万円 となりましたが、計画の範囲内で推移しています。

上記のスライドは、同社の過去数年間にわたる売上高・営業利益・研究開発費率の推移を示した極めて重要な資料です。同社が2025年3月期から営業黒字化を果たし、研究開発費率を高水準(2021年3月期には42.2%)に維持しながら先行投資を行ってきたプロセスが視覚的に理解できます。また、SOSEI事業が安定した営業利益(1Qは 207百万円 )を生み出し、CoolLaser事業の開発・量産化投資(1Qの事業営業利益は △8百万円 )や全社共通費用( △66百万円 )をカバーする事業相互補完の構図が確認できます。
貸借対照表(BS)と運転資金の変化
第1四半期末の総資産は 5,373百万円 (前期末比+32百万円)となりました。流動資産においては、CoolLaser事業の商談増加(1社で10台等の大型案件含む)に対応するため、製品や仕掛品などの 在庫を350百万円積み増し(合計895百万円) しました。この運転資金の増加を手元資金で充当した結果、現預金は 1,807百万円 (前期末比△392百万円)に減少しています。自己資本比率は 57.9% (前期末は55.8%)と依然として健全な財務基盤を維持しています。
3. 売上パイプラインと生産体制拡大の取り組み
今後の業績拡大に向けた先行指標となるパイプラインと、成長のボトルネックとなり得る生産キャパシティの状況についても詳細な説明がなされています。

このスライドは、2027年3月期以降の売上達成に向けた 「売上パイプライン」 を示したものであり、同社の成長ストーリーの実現性を評価する上で最重要のデータの一つです。
パイプラインの状況と需要の強さ
- CoolLaser事業 : 2027年3月期の業績予想達成に必要な売上枠(1,449百万円)に対し、見積提示済・受注済・売上計上済を合わせた商談群に加え、商談中(納期交渉等)を含めると 6,791百万円に達する膨大なパイプライン を保持しています。需要側からの引き合いは極めて旺盛であり、売上達成に向けたリード(引き合い)は十分に確保されていることが分かります。
- SOSEI事業 : 2027年3月期の業績予想(2,047百万円)に対し、売上計上済605百万円に加え、受注済438百万円、見積提示済628百万円、顧客予算化済376百万円が積み上がっており、計画達成に向けた蓋然性が高い状態です。
生産体制(キャパシティ)の強化と「HAMAMATSU BASE」
CoolLaser事業における最大の課題は、旺盛な需要に対して 「装置をどれだけ生産・納品できるか」という生産キャパシティの拡大 にあります。同社は浜松市に新工場 「HAMAMATSU BASE」 を開設し、2026年2月より 月2台の生産体制 をスタートさせました。
2027年3月期は部材調達可能個数の観点から 年間17〜24台の見通し (中期経営計画の目標16〜29台に沿った進捗)としていますが、2028年3月期上期終わり頃を目途に 複数の新サプライヤーを開拓 し、部材調達個数および生産キャパシティを年間35〜65台水準へと引き上げる方針を掲げています。
4. CoolLaser事業の市場開拓と成長ドライバー
CoolLaser技術の市場浸透状況において、今期は非常に大きな変化が表れています。

本スライドは、CoolLaserが実施工の現場でどのように採用され始めているかを示す 事業拡大の最大の定性・定量証拠 です。
「CoolLaser工法指定」案件の急増
最も注目すべき点は、 公共工事における「CoolLaser工法指定」の案件数 です。前期(2026年3月期)は通期でわずか 2件 にとどまっていましたが、今期(2027年3月期)は1Q時点で 既に20件以上の工法指定が決定 しています。発注者側(自治体・高速道路会社等)が施工仕様書に「CoolLaser」を指定する事例が急増したことで、施工を担当する建設会社や建機レンタル会社による装置購入・導入の動きが加速する好循環(実績が実績を呼ぶスパイラル)に入りつつあります。
各重点分野での具体的な動き
- 道路橋分野(全国約12,000橋の跨道橋・歩道橋等) : 足場設置が不要な「足場レス施工」や、狭隘箇所(支承部・桁端部)での塩分除去・耐候性鋼の素地調整で強みを発揮。
- 鉄道橋分野(全国約9,700橋) : 線路上を跨ぐ跨線橋において、夜間の短い施工時間枠内で足場を組まずに作業できる点が評価。
- 造船分野(新造・修繕) : 政府の骨太方針等に基づき、大型補助金などの支援策活用が見込まれる重要市場。
- 建機レンタル会社の動き : 導入済みの装置が高稼働率で推移しており、追加購入(リピート注文)の引き合いが増加。
- 海外展開 : ASEAN地域や台湾の販売代理店との連携による商談推進、UAE(アラブ首長国連邦)向け出荷準備など、グローバル展開の素地を構築中。
5. CoolLaserの技術的・経済的優位性と競争力
CoolLaserが従来の素地調整工法(砂や金属粒を吹き付けるブラスト工法やディスクサンダー等の電動工具)に対して持つ優位性は、単なる作業スピードにとどまりません。
環境・安全性能と集塵技術
従来のレーザー装置と異なり、CoolLaserはレーザー照射ヘッドの先端に 独自開発の集塵フードを一体化 した集塵機構を備えています。これにより、有害物質(鉛やPCB等)を含む塗膜を除去する際も、粉塵の飛散を防ぎます。密閉空間での実道路橋試験結果では、鉛の排出量が 0.089mg/m³ となり、大気汚染防止法の排出基準(10〜30mg/Nm³)を大幅に下回る安全性を立証しました。この技術により、作業者の防護服や現場養生の簡易化が可能となり、施工全体のトータルコスト削減に寄与します。
既存工法に対する圧倒的な優位性
- 産業廃棄物・CO2の削減 : ブラスト工法のように大量の研削材(産廃)を出さないため、 産廃処理費およびCO2排出量を約98%削減 。
- 塩分除去効果 : 錆の再発原因となる鋼材表面の塩分を 98%除去 し、構造物のライフサイクルコスト(LCC)を大幅に低減。
- 工程の一気通貫処理 : 塩分除去、塗膜剥離、サビ除去、素地調整(アンカーパターン形成)を1台で同時に完了できるため、従来は工程ごとに必要だった機材の入れ替えや作業手順を劇的に短縮。
特許と知的財産権
同社は、鋼材への熱影響を抑制しながら高出力化を実現する 「超高速円形照射技術」 に関する特許を日・米・欧で権利化しています(国内取得済22件・出願中9件、海外取得済10件・出願中8件)。他社の追随を許さない特許網と現場ノウハウの積層が、強力な参入障壁となっています。
6. SOSEI事業の展開:新技術「SOSEIラインロボ」による新市場開拓
同社の基盤事業であるSOSEI(ソセイ)事業においても、大きな戦略的進展が見られました。
金属屋根改修市場への参入
これまでSOSEI工法は、スレート屋根を中心に施工されてきました。しかし、工場や倉庫における屋根材の出荷面積比率を見ると、厚形スレートが7%であるのに対し、 金属屋根が93%(累計17.2億m²)と圧倒的なシェア を占めています。
同社は2026年7月、金属屋根向け自動吹付機 「SOSEIラインロボ」の現場検証に成功 し、実現場への投入が可能となったことを公表しました。これにより、これまで全体施工の約15%にとどまっていた金属屋根市場に対し本格的に参入する体制が整いました。SOSEIラインロボは、施工品質の向上、強風時の飛散防止、作業者の落下防止センサー搭載による安全確保、省力化を実現し、巨大な金属屋根改修市場の需要取り込みが期待されています。
7. 中長期成長ストーリーとターゲット市場規模
同社がターゲットとするインフラメンテナンス市場は、社会課題の深刻化とともに極めて広大な拡大余地を有しています。
老朽化インフラの急増と予防保全ニーズ
建設後50年以上が経過する国内の道路橋の割合は、2023年3月時点の37%から、 2040年3月には75%へと急増 します。従来の「事後保全(壊れてから直す)」から「予防保全(維持管理して長寿命化させる)」への政策シフトが進む中、インフラ維持管理・更新費の将来推計は大きく膨らんでいます。
国内ターゲット市場800億円超
CoolLaserの装置販売における国内ターゲット市場規模は、 800億円以上(2023年時点) と推計されています。対象は道路橋(73万橋)、鉄道(10万橋)、通信鉄塔(8万塔)、送電鉄塔(24万基)、海運・ドック(7千隻・1千港)、プラント(5千所)など多岐にわたります。さらに、ブラスト工法が使えず放置されていた潜在的市場を含めると、市場規模はさらに拡大する可能性があります。
今後の成長ロードマップと事業構成比の変化
同社は今後の成長戦略として、 「業界軸(高速道路、鉄道、電力等への展開)」 と**「地域軸(全国の建機レンタル拠点配置、海外PoC推進)」** の双方から拡大を図る戦略を描いています。IPOで調達した資金を活用し、営業体制の強化や海外展開を進める計画です。
中長期的な事業売上構成比としては、現在の「SOSEI主体(約57%)」から、数年後には 「CoolLaser主体(60%〜85%)」 へとシフトし、高付加価値な装置メーカー・ソリューションプロバイダーとしての成長を目指しています。
8. まとめ
トヨコーの2027年3月期第1四半期決算は、上期予想に対して堅調な進捗を示しただけでなく、今後の飛躍に向けた重要なピースが揃いつつあることを示しました。
- 業績 : SOSEIの好調が全社収益を牽引し、売上高進捗率51.1%と計画通りの推移。
- CoolLaser : 工法指定案件が 2件から20件以上へと劇的増加 。新工場「HAMAMATSU BASE」による量産体制の構築と、 6,700億円超の豊富なパイプライン が存在。
- SOSEI : 新技術「SOSEIラインロボ」により、 屋根改修市場の93%を占める金属屋根分野 へ本格アプローチ開始。
老朽化インフラ問題という不可逆的な社会的課題に対し、独自の技術革新と特許網で挑む同社の事業展開は、生産体制のさらなる拡大や公共工事での採用加速とともに、今後も継続的な注目が集まる分野と言えます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。