
高砂熱学工業 2026年度第1四半期決算アナリシス:最高益更新へ向けた進捗と海外事業の躍進
StockClub
公開日時: 2026/08/05 09:53
Sentiment Analysis

高砂熱学工業 2026年度第1四半期決算ディープダイブレポート:採算性向上と海外事業の躍進で過去最高の通期業績へ
1. 業績サマリーと決算ハイライト
高砂熱学工業の2026年度第1四半期(1Q)連結業績は、前年同期に複数の大型案件の集中売上計上があった反動から減収減益となりました。しかし、 売上総利益率は22.5% と第1四半期として 過去最高水準 を記録し、受注高・手持ち工事量(繰越高)ともに力強い推移を見せています。
- 売上高 : 849億2,200万円 (前年同期比 ▲9.9% )
- 営業利益 : 84億8,100万円 (前年同期比 ▲16.2% 、営業利益率 10.0% )
- 経常利益 : 96億2,100万円 (前年同期比 ▲11.8% )
- 親会社株主に帰属する四半期純利益 : 64億8,000万円 (前年同期比 ▲28.4% )
- 受注高 : 1,065億9,800万円 (前年同期比 +1.7% )
- 繰越高 : 4,332億5,000万円 (前年同期比 +12.2% )
単体においては前年の大型案件反動減による売上減少(前年同期比▲17.6%)が全体の数字を押し下げたものの、国内・海外の連結子会社が大幅な増益を達成し、全体の利益水準を強力に下支えしました。

スライド解説(PAGE_4):2026年度第1四半期 連結業績の内訳
このスライドは、2026年度第1四半期における連結全体の損益構造、および「単体」「国内子会社」「海外子会社」の各ブレイクダウンを示した重要な資料です。 注目すべきは、 海外子会社の業績拡大 です。海外子会社の売上高は 185億8,400万円(前年同期比+15.4%) 、営業利益は 16億9,900万円(同+262.1%) と顕著な伸びを示しました。売上総利益率も18.1%へと大幅に改善(前年同期比+7.6Pt)しており、グループ全体の収益構造の多角化が進んでいることが確認できます。また、手持ち工事量を示す繰越高が連結全体で 4,332億5,000万円(同+12.2%) に達しており、中長期的な施工基盤の強固さを示しています。
2. セグメント・構造別要因分析
(1) 営業利益の増減要因(前年同期比)
連結営業利益(84.81億円)の主な増減内訳は以下の通りです。
- 単体 売上総利益の減少(▲28.74億円) : 前年度1Qにおける複数の大型産業空調案件の集中売上計上による反動増減。
- 単体 販管費の増加(▲4.27億円) : ベースアップに伴う人的資本への投資やDX関連投資の加速。
- 国内子会社の利益増加(+3.49億円) : 営業強化策の実践および原価低減活動の奏功による改善(営業利益前年同期比+294.5%)。
- 海外子会社の利益増加(+12.29億円) : シンガポールやインド等での工事進捗の順調な推移と採算改善。
(2) 受注動向と工事内訳
単体の受注においては、 一般空調 と産業空調 のバランスおよび質的変化が見られます。
- 一般空調 : リニューアル(RN)工事の受注が極めて堅調で、一般空調受注高の 76% (367億円)をリニューアル案件が占めています。事務所や教育施設の案件が牽引しています。
- 産業空調 : 半導体工場、電池工場、自動車工場などの製造業向け需要が依然として底堅く、受注額は 315億円 を確保。産業空調におけるリニューアル比率も 94% へと高まっています。
- 元請比率 : 単体の元請比率は 55.0% (前年同期52.4%)に上昇し、コストオン契約を含めた割合は 63.8% と高水準を維保持しています。
3. 通期業績予想と今後の見通し
高砂熱学工業は、2026年度通期の業績予想を据え置き、各利益項目および受注高において 過去最高の更新 を目指しています。
- 通期売上高計画 : 4,400億円 (前期比 +3.8% )
- 通期営業利益計画 : 500億円 (前期比 +4.7% 、営業利益率 11.4% )
- 通期経常利益計画 : 520億円 (前期比 +2.7% )
- 通期当期純利益計画 : 400億円 (前期比 +6.7% )
- 通期受注高計画 : 5,200億円 (前期比 +13.0% 、初の5,000億円超 )
- 通期繰越高計画 : 4,915億7,400万円 (前期比 +19.4% )

スライド解説(PAGE_12):2026年度通期業績予想について
このスライドは、2026年度通期の計画値および過去実績との比較をまとめた本決算資料の核心となるページです。 最大のトピックは、 年間受注高として初となる5,000億円の大台を突破する5,200億円(前期比+13.0%) という挑戦的な計画です。半導体、医薬、情報通信(データセンター)分野における圧倒的な営業情報量を背景に、効率的な施工体制(T-Base®の活用等)を構築することで、受注から売上・利益への変換効率を高める戦略です。また、単体営業利益率 13.8% 、連結ROE 19.0%程度 を目指すなど、収益性と資本効率の双方を追求する姿勢が明示されています。
営業情報量の裏付け
単体における年度内受注対象案件の営業情報量は、半導体関連案件を中心に期初比で増加しており、リニューアル工事分野でも期初時点の営業情報量の約8割を1Q末時点で維持するなど、過年度と比較しても高い水準の案件情報を確保しています。
4. 中期経営計画2026の進捗と成長戦略
同社は中期経営計画2026において、構造改革と持続的成長のための重要施策(KPI)を着実に推進しています。
(1) 建設事業プロセスの変革「T-Base®プロジェクト」
オフサイト施工(工場前加工・ユニット化)を推進するT-Base®は、生産性向上と現場労働時間の削減に直結する基幹プロジェクトです。
- 2030年度目標 : T-Base®による完工高 500億円増 への貢献。
- 1Q進捗状況 : 関与現場数は 150現場 (通期計画150現場に対して進捗率 55% )、現場労務削減時間は 140,000時間 (進捗率 26% )、ユニット生産台数は 10,000台 の計画に対し 3,500台(進捗率35%) と順調に稼働。
- 環境配慮 : T-Base®でのユニット製作において、再生材率100%のアルミニウム材の活用を開始し、施工過程におけるCO2排出量の 10.8%削減 を実現。
(2) 脱炭素社会の実現に向けた取り組み(グリーン水素事業)
「環境クリエイター®」として、独自のグリーン水素技術の社会実装を推し進めています。
- キリンビール北海道千歳工場 : 当社製水電解装置「Hydro Creator™」を初導入。太陽光発電と水素ボイラを組み合わせ、年間約464トンのGHG排出削減を目標とした実証事業を開始。
- 飯野ビルディング : 飯野海運が所有する都心高層複合ビルへグリーン水素製造・利用設備を導入し、ビル全体の付加価値向上とBCP対策に寄与。
- 沖縄県うるま市 : 沖電工等との共同で、再生可能エネルギー由来のグリーン水素利活用実証事業(2027年3月開始予定)に着手。
(3) 人的資本強化への取り組み
人的資本の拡充を成長の源泉と位置付け、積極的な投資を行っています。
- 採用力向上 : 2027年4月入社予定者は、採用計画120名を上回る 137名の内定者 を確保。
- 研修・育成 : 研修体系の拡充により、総研修時間は前年比 7.1%増 (23万4,904時間)。
- 処遇改善 : 報酬体系の改定やベースアップを背景に、平均年収は推移向上傾向にあり、2025年度見込みは 1,245万7,000円 に達しています。
5. キャピタルアロケーションと株主還元方針
同社は、創出したキャッシュを成長投資と株主還元へ最適に分配するキャピタルアロケーション枠組みを運用しています。

スライド解説(PAGE_19):中期経営計画2026 キャピタルアロケーション
このスライドは、中計期間中(FY2023〜2025の3年間および2026年度見通し)のキャッシュイン・キャッシュアウトの配分計画をわかりやすく示した図表です。 営業キャッシュフローの増加に伴い、 事業による創出キャッシュの見通しは1,630億円(+260億円の増額) に拡大しました。さらに政策保有株式の縮小(純資産比率15%以下目標)により 200億円 のキャッシュインを見込んでいます。この原資をもとに、BIM・T-Base・CN・M&A・人的投資などの 成長投資に900億円以上 を配分。同時に、 株主還元に580億円以上(配当+自社株買い) を充てる計画となっており、積極的な成長投資と株主還元強化を両立させる明確なアロケーション構造が示されています。
株主還元の具体的計画
- 配当予想 : 2026年度の年間配当予想は 1株当たり123円 (中間61円、期末62円)。(※2025年10月1日付で1株を2株とする株式分割実施を踏まえた分割後基準)。
- 配当方針 : 配当性向 40%を目途 とし、持続的な利益成長に応じた 累進配当 を基本方針としています。
- 総還元 : 機動的な自己株式取得(2025年4月〜6月に約80億円実施)を含め、高い還元水準を維持しています。
6. まとめ・総括
高砂熱学工業の2026年度第1四半期決算は、前年同期の大型案件反動による一時的な減収減益を見せたものの、内容を精査すると 過去最高の売上総利益率(22.5%) や海外子会社の利益急拡大(+262%) など、収益構造の質的な強さが際立つ結果となりました。
通期計画では、豊富な手持ち工事(繰越高4,332億円)と高水準な営業情報を背景に、 初の受注高5,200億円達成 および 売上・利益の過去最高更新 を目指しています。T-Base®による現場施工の効率化、脱炭素領域(グリーン水素)の事業化、人的資本への投資、そして株主還元の拡充という全方位的な戦略が順調に進展しており、今後の展開が注目される決算内容といえます。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。