
インフォマート 2026年12月期 第2四半期決算:ストック収益を基盤とした大幅増益とAI・データ戦略の進化
StockClub
公開日時: 2026/08/03 11:51
Sentiment Analysis

インフォマート(東証プライム: 2492)の 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算 は、主力事業である「FOOD事業」および「ES事業」の双方が着実に拡大し、増収効果と徹底したコスト構造の最適化によって 営業利益が前年同期比+49.1% と大幅な増益を達成する極めて好調な進捗を示しました。
本レポートでは、決算資料から抽出した重要トピックを中心に、業績推移、要因分析、コスト構造の変化、そして同社が急速に推進する「AI・データ戦略」の全貌までを包括的かつ詳細に解説します。
1. 2026年12月期 第2四半期決算の全体像と主要トピック
同資料から分析される主要な経営トピックは以下の10点に要約されます。
- 業績の大幅増益 : 連結売上高は 99.8億円(前年同期比+11.0%) 、営業利益は 21.1億円(同+49.1%) を達成。
- 通期計画への進捗 : 通期計画に対し売上高 46.8% 、営業利益 42.4% と概ね計画通りの進捗。下期での積み上げにより中期経営計画最終年度の目標達成を目指す。
- 利用企業数の拡大 : プラットフォーム利用企業数は 130万社(前年同期比+8.6%) を突破。国内全企業の約35%をカバーする強力なネットワーク効果を維持。
- ストック収益の高水準維持 : ストック収益率は 96.9% と、非常に強固で予測可能性の高い収益基盤を確立。
- FOOD事業の二桁成長・領域拡大 : 主力の受発注に加え、飲食個店・卸売向けの「受発注ライト&TANOMU」が 前年同期比+44.0% と急成長。
- ES事業の加速 : 「BtoBプラットフォーム 請求書」が前年同期比 +13.3% 、「TRADE」が同 +58.4% と大企業やグループ企業を中心に利用が拡大。
- 売上原価の抑制と粗利率改善 : クラウド移行完了によるデータセンター費低減が寄与し、売上総利益率は 74.9%(2Q単体では75.0%) へ上昇。
- 人的資本投資の継続 : 賃金体系の改善やセールス・CS体制の強化(正社員数 924名 )を推進しつつも増収で吸収。
- 社内AI活用による生産性革新 : コールセンター対応時間の 24%短縮 やAI駆動開発による開発工数 33%削減 を実現。
- 「IM DATA PLATFORM」と「IMAgent」の展開 : 年間 71兆円規模 の実取引データを活用したAIプロダクトおよびデータサービスの提供を開始。
2. 営業利益増減要因の深掘り分析
増収に伴う利益の拡大がどのような費用要素によって構成されているかを確認することで、同社の収益構造の強みが明確になります。

スライド解説:営業利益増減要因の背景
上記の 営業利益増減要因 スライドは、2025年12月期2Q累計から2026年12月期2Q累計にかけて、営業利益が 14.21億円から21.19億円へと+6.98億円増益(+49.1%) した詳細なプロセスを示しています。
- 売上増収によるプラス貢献(+9.88億円) : FOOD事業(+4.74億円)およびES事業(+5.14億円)の両輪がバランスよく増収を牽引しました。既存領域の利用拡大と新規契約の獲得がしっかりと売上に結びついています。
- 売上原価の抑制(▲0.65億円の微増にとどまる) : クラウド移行に伴う データセンター費用が▲1.97億円低減 したことが大きく寄与しました。一方で、新規契約獲得に向けたパートナー施策による顧客紹介手数料などが+1.99億円増加したものの、原価全体としては極めて低い増加幅に抑えられています。
- 販管費の抑制と効率化(▲2.25億円の増加にとどまる) : 人的資本の拡充による人件費(+3.67億円)や販売促進費(+0.56億円)の投入を行ったものの、タノム社の のれん償却費の低減(▲1.74億円) やその他のコスト管理により、大幅な売上増加に対して販管費の増加を最小限に留めることに成功しました。
売上成長率(+11.0%)がコスト増加率を大幅に上回る 「ポジティブ・レバレッジ」 が機能していることが明確です。
3. セグメント別動向:FOOD事業とES事業の詳細
FOOD事業(売上高: 62.23億円 / 前年同期比 +8.3%)
外食チェーンやホテル・旅館、給食業界における業務効率化ニーズを取り込み、主力の「BtoBプラットフォーム 受発注」が 44.59億円(前年同期比+4.5%) と安定成長を維持しています。また、より手軽に導入できる「受発注ライト」および「TANOMU」の合計売上高は 7.62億円(前年同期比+44.0%) と極めて高い伸びを示しており、個人飲食店や地方食品卸売企業への浸透が進んでいます。
ES事業(売上高: 37.66億円 / 前年同期比 +15.8%)
企業間取引のデジタル化を推進する「BtoBプラットフォーム 請求書」は、インボイス制度開始後のデジタル化需要を背景に大手企業やそのグループ企業への導入が進み、売上高は 28.90億円(前年同期比+13.3%) に達しました。さらに、見積から請求までを一貫してデジタル化する「TRADE」は 3.08億円(前年同期比+58.4%) と急成長を遂げており、全社的な成長のエンジンとなっています。
4. コスト構造の変化と利益率の改善軌道
インフォマートの収益性改善において特に注目すべきは、システムのクラウド移行完了に伴う構造的な原価低減です。

スライド解説:売上原価・売上総利益推移が意味するもの
上記のスライドは、同社の売上原価の推移と 売上高売上総利益率(粗利率) の変化を示した重要なグラフです。
- データセンター費用の劇的な低減 : 2024年第3四半期に完了したオンプレミスからクラウドへの移行により、かつて四半期あたり7〜8億円台を占めていたデータセンター費用が 3〜4億円台まで大幅に圧縮 されました。
- 売上総利益率のV字回復 : 2023年時点では50%台後半から60%台前半にとどまっていた売上総利益率は、原価削減効果によって急上昇し、 2026年1Qには74.9%、2Qには75.0% へと高水準に達しています。
売上高の拡大に伴って原価率が下がるSaaS企業特有のスケールメリットが、インフラ刷新の完了によって本格的に顕現化した格好です。
5. 顧客基盤と高ストック収益のシナジー
同社の強みの源泉は、競合他社が容易に模倣できない圧倒的な 顧客基盤とストック型ビジネスモデル にあります。
- 利用企業数 130万社のネットワーク効果 : 2026年2Q時点で利用企業数は 1,302,081社 に達しました。国内企業の約35%が参加する巨大なプラットフォームとなったことで、新規企業が参加するインセンティブが自然に高まる「ネットワーク効果」が強固に働いています。
- ストック収益率 96.9% : 売上高の 96.9% が月額利用料などの継続的なストック収益で構成されています。顧客の離脱率(チャーンレート)が極めて低いことを裏付けており、景気変動に左右されにくい安定したキャッシュフローを生み出しています。
6. AI・データ戦略と社内DXによる生産性向上
単なる業務効率化ツールから「データ・AIプラットフォーム」への進化を掲げる同社は、社内DXおよび顧客DXの両面で急速な施策を展開しています。

スライド解説:社内におけるAI活用の定着と具体的成果
上記のスライドは、同社が社内DXとして推進している AI活用による業務効率化の実態数値 をまとめたものです。
- サポートセンターのオペレーション刷新 : 問い合わせ対応や作業時間においてAIを活用することで 作業時間を24%短縮 。さらに商品分類作業をAI化し 40%短縮 、責任者によるフォロー時間を 30%削減 するなど、カスタマーサポート体制の劇的な効率化を実現しています。
- AI駆動開発(AIクローバ等)の成果 : エンジニア組織において要件定義から実装、テストに至るプロセスにAIを組み込むことで、開発工数を 33%削減 しました。社内ハッカソンの開催などを通じ、高速プロトタイプ開発体制を構築しています。
- 全社的なAI浸透率 : 社員向けAI研修の実施とガイドラインの整備により、 社員の77%がAIによる業務効率化を実感 していると回答しています。
これらの社内DXの成果は、将来的な人件費や外注費の抑制に直結するだけでなく、同社が顧客に提供するAIサービス(「IMAgent」や「IM DATA PLATFORM」)の基盤技術・ノウハウとして還元されています。
また、年間 71兆円規模 (2025年度実績)の商流実取引データを有する同社は、これらのデータを匿名化・統計化して流通トレンドを可視化するサイトのオープンや、AIによる自動仕訳・照合機能(IMAgent)の実装を進めており、データ利活用による新たな収益源の創出を狙っています。
7. 今後の展望と総括
2026年12月期は現行の中期経営計画の 最終年度 となります。中間期終了時点で売上高・利益ともに計画に対し順調な進捗を見せており、下期に向けても新規開拓と既存顧客への提供価値拡大が継続される見通しです。さらに、 2027年から2029年までの次期3ヵ年中期経営計画 を年内に公表予定であり、市場からの期待が高まります。
インフォマートは、強固な顧客基盤と高ストック収益構造を背景に足元の業績を確実に伸ばしつつ、クラウド移行による原価削減効果を享受するフェーズに入りました。さらに、膨大な取引データを活かした AI・データ戦略 を本格化させることで、単なる受発注・請求書インフラにとどまらない「社会共通のデータプラットフォーム」としての地位を確立しつつあります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。