
野村ホールディングス 2027年3月期 第1四半期 決算詳細レポート:全部門増収増益とストック型ビジネス拡大による収益構造の進化
StockClub
公開日時: 2026/08/03 11:45
Sentiment Analysis

野村ホールディングス株式会社が発表した 2027年3月期 第1四半期(2026年4月1日〜6月30日) の決算は、すべての主要ビジネス部門において前四半期比・前年同期比で大幅な増収増益を達成し、構造改革の成果が業績数字として強く示される結果となりました。
当第1四半期の 連結収益合計(金融費用控除後)は6,867億円(前四半期比19%増、前年同期比31%増) 、税前利益は2,115億円(前四半期比96%増、前年同期比32%増) 、当社株主に帰属する当期純利益は1,456億円(前四半期比97%増、前年同期比39%増) に到達しました。また、資本効率を示す指標である ROEは15.4% と大きく上昇し、同社が掲げる2030年経営ビジョンの達成に向けた強固な進捗を裏付ける内容となっています。
以下では、全体の業績ハイライト、収益構造の変革状況、各セグメントの動向、そして財務基盤までを多角的に深掘り解説します。
1. 全社業績ハイライトと構造改革の進捗
まず、決算の全体像を把握するうえで極めて重要なエグゼクティブ・サマリーを確認します。

【スライドの重要性とデータ解説】
上記スライド(P.2)は、今回の決算における 最大のポイントである「全主要4部門(ウェルス・マネジメント、インベストメント・マネジメント、ホールセール、バンキング)の同時増収増益」 とROE 15.4%の達成 を一目で示している最も重要な資料です。
前四半期(2026年3月期4Q)の税前利益1,077億円から当四半期は2,115億円へと 約2倍近く拡大 しました。この躍進を支えた主な背景には、以下の3点が挙げられます:
- 海外ビジネスの収益向上 :米州およびアジアを中心とする海外3地域の税前利益が 752億円 に達し、過去最高を更新しました。
- ストック型ビジネスの着実な成長 :顧客資産の積み上がりに伴い、市況変動に左右されにくい安定的な収益基盤が一段と強固になりました。
- 新規・成長領域の拡大 :2025年4月に新設されたバンキング部門や、ホールセール部門におけるグローバル・フランチャイズの活用が進み、多角的な収益化が実現しました。
一株当たり当期純利益(EPS)は 48.34円 (前四半期比99%増)、一株当たり株主資本(BPS)も 1,311.94円 へと拡大しており、株主価値の持続的な創造が示されています。
2. 収益構造の変革:ストック型ビジネスと安定収益の拡大
野村ホールディングスが推し進めてきた経営改革の核心は、トレーディングや一時的な案件に依存する体質から、 ストック資産を積み上げて安定的な報酬を得るモデルへのシフト です。

【スライドの重要性とデータ解説】
上記スライド(P.3)は、同社が「安定収益」と定義する ウェルス・マネジメント部門のストック収入 、インベストメント・マネジメント部門の事業収益 、および バンキング部門の収益 の推移を表しています。従来型のフロー収益に頼らない収益の「底上げ」がどこまで進んでいるかを評価するうえで非常に不可欠なデータです。
グラフが示す通り、第1四半期における 安定収益は160.6億円(前年同期比約1.6倍) へと著しく拡大しました。これを支える裏付けデータとして:
- ウェルス・マネジメント部門のストック資産 :前年同期の27.9兆円、前四半期末の24.6兆円から 31.7兆円 へと拡大。
- インベストメント・マネジメント部門の運用資産残高 :前年同期の136.9兆円から 156.4兆円 へと過去最高を更新。
資産運用の受託残高や顧客預かり資産が増加することで、市況の短期的なブレに左右されにくい高水準な手数料・報酬ベースが形成されていることが確認できます。
3. セグメント別の詳細パフォーマンス分析
ここからは、主要セグメントごとの具体的な業績と取り組みについて見ていきます。
(1) ウェルス・マネジメント部門
- 収益 :1,454億円(前四半期比9%増、前年同期比37%増)
- 税前利益 :711億円(前四半期比16%増、前年同期比83%増)
資産管理型ビジネスへの転換 が顕著な成果を上げています。顧客アクティビティの増加に伴い、投信純増(+3,755億円)や投資一任契約の純増(+1,891億円)をはじめとする ストック資産純増額は6,656億円 となり、 17四半期連続の純増 を記録しました。ストック収入(592億円)も過去最高を更新しており、 ストック収入費用カバー率は76% に達しています。また、持株会などを通じた職域チャネル(ワークプレイス)の預り資産も 10.0兆円 へと順調に拡大しています。
(2) インベストメント・マネジメント部門
- 収益 :983億円(前四半期比14%増、前年同期比94%増)
- 税前利益 :450億円(前四半期比148%増、前年同期比109%増)
2021年4月の部門設立以来、 過去最高の収益・税前利益 を達成しました。アセットマネジメント・ビジネスにおける 運用資産残高が過去最高の156.4兆円 に達したことで、運用報酬(事業収益:862億円)が過去最高を更新したほか、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)関連損益などの投資損益(121億円)も大幅増収に貢献しました。オルタナティブ運用資産残高も 3兆8,050億円 へと拡大し、オルタナティブ投資ニーズの取り込みが好調です。
(3) ホールセール部門
- 収益 :3,691億円(前四半期比20%増、前年同期比41%増)
- 税前利益 :933億円(前四半期比116%増、前年同期比123%増)
ホールセール部門は全社業績を強力に牽引する役割を果たしました。

【スライドの重要性とデータ解説】
上記スライド(P.12)は、2010年4月の部門設立以来で 過去最高の収益および税前利益 を記録したホールセール部門の内訳とコスト効率性を提示しています。
ビジネスライン別の動向を見ると:
- グローバル・マーケッツ :収益 3,187億円 (前四半期比26%増)。特に エクイティプロダクトが1,794億円(前四半期比41%増) と4四半期連続で過去最高を更新。デリバティブやアジア地域の顧客アクティビティが好調を維持しました。フィクスド・インカム(FI)も1,392億円(同11%増)と堅調でした。
- インベストメント・バンキング :収益 504億円 (前四半期比9%減、前年同期比33%増)。季節要因により前四半期比では減少したものの、第1四半期としては2017年3月期以降で 初の500億円超え(過去最高) を記録しました。国内M&Aアドバイザリー案件や、北米・欧州における事業ポートフォリオ見直し、再生可能エネルギー関連案件、ECM/DCM案件を幅広く獲得しています。
また、 経費率が75%へと前四半期(86%)から大幅に改善 した点も見逃せません。収益の拡大に伴いオペレーティング・レバレッジが強く発揮され、利益率が飛躍的に向上したことを意味しています。
(4) バンキング部門
- 収益 :152億円(前四半期比5%増、前年同期比19%増)
- 税前利益 :36億円(前四半期比19%増、前年同期比1%増)
新設されたバンキング部門では、4月に開始した 預金スイープサービス の契約件数や残高が順調に推移し、預金残高は 1兆6,642億円 (前期末比3,297億円増)へと大幅拡大しました。証券担保ローン等の貸出金残高も 1,247億円 へと順調に伸びており、ウェルス・マネジメント部門とのシームレスな連携が進んでいます。
4. コスト動向と財務基盤の健全性
業績拡大の一方で、費用の管理と財務健全性の維持も厳格に行われています。
- 金融費用以外の費用 :当四半期は 4,752億円 (前四半期比1%増)。好業績に伴う人件費(2,368億円、前四半期比4.1%増)やITインフラ投資に伴う情報・通信関連費用(707億円、同3.1%増)が増加したものの、支払い手数料の減少等により全体の増加は抑制されています。
- 財務基盤と自己資本比率 :バーゼル3ベースの 連結普通株式等Tier1比率は12.9% と、規制要求水準を十分上回る高水準を維持しています。総資産合計は 68.2兆円 、当社株主資本は 3.8兆円 に達しており、調整後レバレッジ倍率も12.9倍とコントロールされた範囲内で健全に運営されています。
- リスク管理(VaR) :バリュー・アット・リスク(1日、信頼区間95%)の四半期平均は 6.0億円 (前期末6.3億円)と、市場変動に対して適切なリスクコントロールが機能しています。
5. 総括と今後の展望に向けたポイント
2027年3月期第1四半期の決算は、 「フローの市場機会の確実な捕捉」 と**「ストック資産の積み上げによる基盤強化」** が両輪となって機能した結果と言えます。
ウェルス・マネジメントとインベストメント・マネジメントによる預かり資産・運用資産の拡大が安定収益を生み出し、ホールセール部門が好調なグローバル市場動向をとらえて高い収益力を発揮しました。さらに新設バンキング部門との相乗効果も顕現化しつつあります。
引き続き、2030年に向けた長期経営ビジョンの達成に向け、資本効率(ROE)を高めつつ、ストック型収益構造のさらなる進化とグローバル・フランチャイズの強化が注目される決算内容となっています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。