
いちよし証券 2027年3月期 第1四半期決算分析:ストック型経営の結実で経常利益は前年同期比6.2倍へ、コストカバー率は97.1%に達する
StockClub
公開日時: 2026/07/30 10:10
Sentiment Analysis

1. 決算ハイライト:記録的な大幅増益を達成
いちよし証券が発表した2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)の連結業績は、営業収益、営業利益、経常利益、純利益の全項目で大幅な成長を記録しました。 営業収益は前年同期比64.4%増の76億700万円 、経常利益は前年同期比523.5%増(約6.2倍)の25億200万円 、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比644.5%増(約7.4倍)の16億8,300万円 となり、極めて強い業績モメンタムを示しました。

上掲のスライド(1. 収支の状況)から分かる通り、営業収益の伸び(+29.8億円)に対して販売費・一般管理費の増加(+8.64億円)が相対的に抑制されています。その結果、営業利益は前年同期の3億8,000万円から 24億8,200万円(前年同期比553.3%増) へと大幅に跳ね上がりました。これは、従来の市況依存度が高い証券ビジネスから、残高連動型のストック収益を中心とする安定成長モデルへの転換が進展していること、そして相場環境の好転に伴いフロー収益とストック収益が同時に拡大した「営業レバレッジ効果」が大きく働いたことを示しています。
2. 収益構造の分析:受入手数料の急増とストック収益の拡大
純営業収益の内訳(75億8,200万円、前年同期比64.3%増)を細分化すると、成長の主因が 受入手数料の拡大 にあることが明らかです。受入手数料は 前年同期比68.7%増の74億5,500万円 に達し、純営業収益の約98%を占めています。
受入手数料の主な内訳は以下の通りです:
- 株券委託手数料 : 18億8,200万円(前年同期比67.3%増)
- 投資信託の募集・売出し手数料 : 4億3,100万円(前年同期比30.3%増)
- その他の受入手数料(信託報酬等) : 49億5,400万円(前年同期比76.1%増)
特に注目されるのが 「その他の受入手数料(信託報酬等)」の急拡大 です。その内訳を見ると、受益証券残高に係る信託報酬が16億8,400万円(同57.6%増)、運用に係る信託報酬が9億1,400万円(同36.3%増)、 ファンドラップに係るフィー等が23億5,500万円(同119.5%増) と、ファンドラップ関連収益が前年同期比で倍増以上の成長を遂げています。受入手数料全体に占める信託報酬等の割合は 66.5% (前年同期は63.6%)となり、収益構造のストック化が着実に深まっています。
3. 預り資産の推移:2兆8,609億円と過去最高を更新
ストック型収益の源泉となる顧客の預り資産残高は、非常に力強い拡大基調を維持しています。

預り資産の長期推移を示したスライドから明らかなように、2026年6月末(2027年3月期1Q末)の 預り資産残高は2兆8,609億円 に達し、過去最高を更新しました。2025年3月期1Q末の2兆3,066億円から1年間で約5,500億円(+24.0%)拡大しています。
資産別の内訳を見ると以下の通りです:
- 株式 : 1兆3,744億円(全体の約48%)
- 投資信託(ドリコレ除く) : 9,594億円(全体の約34%)
- ファンドラップ(ドリコレ) : 4,806億円(全体の約17%)
株式市場の上昇による評価額の増加に加え、顧客からの新規資金流入が継続していることが預り資産の拡大を支えています。特に、ファンドラップおよび投資信託からなる「ベース資産・準ベース資産」の合計は1兆4,400億円規模に達しており、預り資産全体の 20.6% を占めるまでに成長しています。このベース資産の増加が、同社の継続的な信託報酬収入のベースラインを引き上げる強固な土台となっています。
4. ストック型ビジネスモデルの到達点:コストカバー率97.1%の進展
いちよし証券の成長戦略において、最も重要な経営指標(KPI)の一つが 「コストカバー率」 です。コストカバー率は、固定費的な性質を持つ販売費・一般管理費(コスト)を、積上げ型のストック収益である「信託報酬+ラップフィー」でどれだけ賄えているかを示す指標です。

1997年からの長期推移を示す上掲のスライドは、同社の事業構造改革の足跡を如実に物語っています。1990年代後半には4%〜6%程度に過ぎなかったコストカバー率は、長期にわたる「ストック型ビジネスモデルへの転換」施策によって右肩上がりに上昇してきました。
2027年3月期第1四半期において、月額平均ベースのコストカバー率は 97.1% (2026年3月期の84.3%からさらに急上昇)に達しました。四半期ベースで見ても、信託報酬+ラップフィーの合計49億5,400万円に対し、販売費・一般管理費は51億0,000万円となり、販管費のほぼ全額(97.1%)をストック収益のみでカバーできる水準へ到達しています。
コストカバー率が100%に近づくということは、 「株式委託手数料や投信募集手数料といったフロー収益が仮にゼロになったとしても、会社の固定費用がほぼ全額ストック収益で相殺される」 という堅牢な財務体質が完成しつつあることを意味します。フロー収益の大部分がそのまま営業利益に直結しやすい構造が確立されたことが、今期の営業利益大幅増(前年同期比5.5倍)をもたらした最大の構造的要因と言えます。
5. 費用構造と営業効率の分析
販売費・一般管理費(販管費)は 前年同期比20.4%増の51億0,000万円 となりました。
費用別の主な内訳は以下の通りです:
- 人件費 : 30億0,100万円(前年同期比30.7%増、+7億0,400万円)
- 不動産関係費 : 6億3,500万円(同5.8%増)
- 事務費 : 6億4,500万円(同8.3%増)
- 取引関係費 : 3億8,200万円(同6.1%増)
人件費の増加が販管費増(+8.64億円)の大部分を占めていますが、これは業績連動型の給与・賞与引当金の増加や人件費の改定等を反映したものです。一方で、固定費(33億4,000万円)と変動費(14億5,700万円)のコントロールは機能しており、トップライン(営業収益+64.4%)の伸びが費用の伸び(+20.4%)を大きく上回ったことで、営業利益率は前年同期の8.2%から 32.6% へと劇的に改善しました。
6. 投資信託の販売動向とリテール顧客基盤
投資信託の販売面では、グローバル株式や好配当型ファンドへの需要が高水準で推移しています。当四半期の販売額上位5商品は以下の通りです:
- いちよし・グローバル株式ファンド(いちばん星) : 60億円
- ブラックロック世界好配当株式オープン(世界の息吹) : 40億円
- いちよし日本好配当株&Jリリートファンド(明日葉) : 35億円
- 米国製造業株式ファンド(USルネサンス) : 27億円
- いちよし小型成長株ファンド(あすなろ) : 14億円
自社設定の特色あるファンドとグローバル展開する好配当株式ファンドのバランスの取れたラインナップが顧客ニーズを捉えています。
また、顧客基盤の面では、リテール部門の預り口座数は145,922口座と安定推移する中で、 預り1,000万円以上の高価格帯口座数が47,763口座 (前年同期の41,265口座から大幅増)へと着実に拡大しています。これは、一人当たりの預り資産規模が拡大しており、富裕層・準富裕層を中心とする顧客との関係強化が進んでいることを示しています。
7. 財務健全性と資本効率
財務の健全性および資本効率の観点でも好調なパフォーマンスを示しています:
- 自己資本比率 : 52.2% (財務基盤は強固)
- 自己資本規制比率(単体) : 438.3% (法令基準120%を大幅に上回る)
- BPS(1株当たり純資産) : 955.82円
- EPS(1株当たり四半期純利益) : 52.34円 (前年同期の7.10円から大幅増)
- ROE(自己資本四半期純利益率) : 5.5% (単四半期値)
純資産合計は307億9,500万円と配当金支払いなどによる減少があったものの、四半期純利益の積み上げ(16.83億円)によって高い自己資本水準を維持しつつ、優れた資本効率を実現しています。
8. 総括と今後の注目ポイント
いちよし証券の2027年3月期第1四半期決算は、長年にわたり推進してきた 「ストック型ビジネスモデルへの構造転換」の成果が表れた内容 となりました。
今後の注目ポイントとしては、以下が挙げられます:
- コストカバー率100%の達成時期 : 97.1%まで達したコストカバー率が、今後のファンドラップおよび信託報酬の積み上げによって100%の大台を突破・定着するかどうか。
- 預り資産3兆円の大台に向けた進捗 : 2.86兆円まで拡大した預り資産が、相場変動リスクを管理しつつ新規資金の流入によってさらに拡大できるか。
- 株式市場動向とフロー収益の持続性 : 株券委託手数料などのフロー型収益が市場環境の影響を受ける中で、ストック収益がどこまで業績の下支え効果を発揮するか。
ストック収益基盤の拡充による収益構造の安定化と、相場追随型のフロー収益の上乗せという両面が今後の業績・企業価値にどのように寄与していくか、引き続き注目が集まります。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。