
小松製作所(6301)2026年度第1四半期決算分析:北米・中南米の需要増と為替影響が寄与し通期業績見通しを上方修正
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公開日時: 2026/07/30 10:03
Sentiment Analysis

小松製作所(コマツ)の2026年度第1四半期(4-6月)決算および2026年度通期業績見通しについて、発表された各種データをもとに多角的な分析と解説を行います。主要事業である建設機械・車両部門の地域別動向や、外部リスク要因(中東情勢・米国関税)の試算見直しを含めた全体像を整理しました。
1. 2026年度第1四半期 決算ハイライト
2026年度第1四半期(2025年4月1日〜6月30日)の連結業績は、売上高・各利益項目ともに前年同期を上回る結果となりました。
- 売上高 : 1兆431億円 (前年同期比 +14.7% 増)
- 営業利益 : 1,516億円 (前年同期比 +8.0% 増)
- 売上高営業利益率 : 14.5% (前年同期比 ▲0.9ポイント 下降)
- 当社株主に帰属する四半期純利益 : 962億円 (前年同期比 +5.4% 増)

上記の第1四半期決算概要スライドが示す通り、円安による為替換算効果(米ドル換算で前年同期の145.5円から158.5円へ推移)に加え、主力市場における販売数量の増加や販売価格の改善が大幅な増収を牽引しました。営業利益率は原材料費や固定費の増加、構成差などのマイナス要因により若干低下したものの、利益額自体は高水準な成長を維持しています。
2. セグメント別業績の状況
各事業セグメントにおける売上高および利益の動向は以下の通りです。
① 建設機械・車両部門
- 売上高 : 9,669億円 (前年同期比 +14.4% 増)
- セグメント利益 : 1,301億円 (前年同期比 +6.4% 増)
為替影響を除く実質ベースでも前年同期比 +3.7% の増収となりました。アジアや中近東で減収となった一方、 北米・中南米・アフリカ などの地域で堅調な需要を取り込み、全体の業績を押し上げました。
② リテールファイナンス部門
- 売上高 : 327億円 (前年同期比 +7.4% 増)
- セグメント利益 : 96億円 (前年同期比 +2.8% 増)
北米や欧州での新規取扱高の増加(前年同期比+565億円の3,181億円)や、円安による資産拡大の影響を受け、増収増益を達成しました。ROAは 2.4% を維持しています。
③ 産業機械他部門
- 売上高 : 529億円 (前年同期比 +21.7% 増)
- セグメント利益 : 90億円 (前年同期比 +25.1% 増)
自動車産業向けの大型プレスの販売増加や、子会社ギガフォトンにおける半導体産業向けエキシマレーザーのメンテナンス売上増加が大きく寄与し、セグメント利益率は 17.0% (+0.4ポイント)へ上昇しました。
3. 建設機械・車両部門の増減要因分析と地域別動向
建設機械・車両部門のセグメント利益増減(前年同期比 +79億円)の内訳を分析すると、以下の要因に分解されます。
- プラス要因 :
- 為替差益 : +230億円
- 販売価格差 : +170億円
- マイナス要因 :
- 原価差(資材・物流コスト等) : ▲188億円
- 固定費増 : ▲84億円
- 物量差・構成差他 : ▲49億円
価格改定の浸透および円安効果が、コスト高や地域構成の変化に伴う採算悪化をカバーする構造となっています。
地域別の需要および売上動向(外部顧客向け)
- 北米 : 2,892億円 (前年同期比 +37.2% 、為替除き +29.5% )。データセンターなどの非住宅投資やレンタル向け需要が力強く推移しています。
- 中南米 : 2,154億円 (前年同期比 +31.6% 、為替除き +16.1% )。銅などの主要鉱物価格の高値を背景に、鉱山機械需要が非常に堅調です。
- 欧州 : 964億円 (前年同期比 +11.6% )。公共投資を中心とする一般建機需要が底堅く推移しています。
- アジア : 700億円 (前年同期比 ▲29.6% )。インドネシアにおける石炭価格の落ち着きに伴う採掘需要の減退が影響しました。
4. 2026年度通期業績見通しの上方修正
第1四半期の実績および最新の市場環境、為替前提の見直しを踏まえ、コマツは2026年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の通期連結業績見通しを上方修正しました。
- 売上高 : 4兆3,020億円 (4月公表計画比 +1,840億円 / 前年比 +4.1% )
- 営業利益 : 5,550億円 (4月公表計画比 +470億円 / 前年比 ▲2.2% )
- 売上高営業利益率 : 12.9% (4月公表計画比 +0.6ポイント / 前年比 ▲0.8ポイント )
- 当社株主に帰属する当期純利益 : 3,490億円 (4月公表計画比 +310億円 / 前年比 ▲7.3% )
- ROE(見通し) : 10.1%
- 年間配当予想 : 190円 (変更なし、配当性向 48.6% )

上記の業績見通しスライドに示されている通り、第2四半期以降の為替前提を「1ドル=150.0円、1ユーロ=174.0円、1豪ドル=106.0円」へ変更したことや、各地域での販売見通しの精査が上方修正の主要因です。なお、為替感応度としては、対米ドルで1円動いた場合、通期の売上高で 約149億円 、営業利益で 約45億円 の影響が生じる試算となっています。
5. 外部リスク要因(中東情勢・米国関税)の影響試算の見直し
今回の見通し修正において極めて重要なポイントは、期初に織り込んでいたマクロリスクの影響額が再評価された点です。

上のスライドが示す通り、外部環境変化に関する試算内容は以下のように更新されました。
① 中東情勢による影響
- 売上減影響の縮小 : 当初想定した売上減 ▲901億円 から、最新見通しでは ▲463億円 へと減幅が大きく縮小しました。ホルムズ海峡封鎖に伴う代替輸送ルートの活用などにより、デリバリーの継続性が担保されています。
- コスト増影響 : 燃料・物流費等の追加コストは前回予想(+188億円の損)から +232億円の損 へとやや増加しています。
② 米国関税によるコスト影響
- 制度変更等の反映 : 122条追加関税の失効と301条追加関税の適用(7月〜)、鉄鋼・アルミ関税の税率引き下げ(25%→15%)などを精査した結果、通期のコスト増影響は前回予想の +378億円の損 (25年度比)から +258億円の損 (同)へと一部緩和される見通しとなりました。
リスク要因を過度に悲観せず、現行の実態に合わせて試算をアップデートしたことが、利益予想の上方修正を支える重要な根拠となっています。
6. 主要市場の需要見通しとアフターマーケット(部品・サービス)事業
全社的な成長ストーリーを支える主要市場の動向とストック型ビジネスの状況は以下の通りです。
全体・主要市場における主要7建機の需要見通し
- 全体需要 : 2026年度通期では前年比 0%〜+5% (4月公表見通しを維持)の緩やかな回復を見込んでいます。
- 北米 : データセンターやインフラ関連の非住宅需要に支えられ、前年比 0%〜+5% の増加を見込みます。
- 欧州 : 公共投資主導で前年比 0%〜+5% の見通しを維持しています。
- アジア : インドネシアの石炭向け需要が引き続き低迷し、前年比 0%〜▲5% (前回見通し▲5%〜▲10%より上方修正)を予想しています。
部品・サービス(アフターマーケット)の推移
コマツの収益安定性を高めているのが、稼働機械の拡大に伴うアフターマーケット(部品・サービス)事業です。
- 第1四半期 部品売上高 : 2,865億円 (前年同期比 +18.4% 増)
- 通期 部品売上高見通し : 1兆999億円 (前年比 +4.2% 増)
建設機械・車両部門におけるアフターマーケットの売上構成比(AM比率)は 50%以上 の高水準を維持しており、建機本体の販売変動に対する緩衝材として機能しています。
7. 財務状況とキャッシュフローの状況
- 総資産 : 2026年6月末時点で 6兆7,826億円 (前年度末比 +3,586億円 )
- 棚卸資産 : 1兆7,152億円 (前年度末比 +1,133億円 )
- 株主資本比率 : 51.8% (前年度末比 ▲2.9ポイント )
- ネットD/Eレシオ : 0.30 (リテールファイナンスを除く実質ベースでは ▲0.07 )
- フリー・キャッシュ・フロー(FCF) : 第1四半期実績は ▲16億円 の支出となったものの、通期では 2,600億円 の創出を見込んでいます。
運転資金の増加や為替影響により棚卸資産および自己資本比率に若干の動揺が見られるものの、全体として健全な財務構造が維持されています。
8. まとめと今後の注目指標
コマツの2026年度第1四半期決算は、 北米や中南米を中心とした需要の強さ と 為替による追い風 、さらに 中東情勢や関税影響の改善 が重なり、通期業績見通しの上方修正につながる前向きな進捗を示しました。
今後の確認ポイントとしては、以下の点が挙げられます。
- 北米非住宅投資の持続性 : 非住宅建設やデータセンター向け需要の勢いが下期も維持されるか。
- 鉱山機械・アフターマーケットの動向 : 銅や金などの鉱物価格の推移と、高利益率な部品供給の成長力。
- マクロリスクの推移 : 為替レートの変動や、米国の貿易政策・追加関税の動向が利益率に与える影響。
主力の建機事業における地域ポートフォリオの分散と、高採算な部品・サービス事業の定着が、不透明な世界経済環境下における業績の底固さを支えています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。