
and factory (7035) 2026年8月期 第3四半期決算 ディープダイブレポート
StockClub
公開日時: 2026/07/16 11:03
Sentiment Analysis

and factoryは、2026年8月期第3四半期(2025年9月1日~2026年5月31日)の決算説明資料を公開しました。本レポートでは、同社の最新の業績動向、各事業セグメントの状況、そして今後の成長戦略について、詳細な分析を提供します。
2026年8月期 第3四半期 業績ハイライトと通期見通し
同社は、第3四半期において 四半期黒字化を達成 し、収益性の改善が明確に示されました。これは、期初より推進してきた費用構造改革の奏功と、スポット案件の確実な収益化、流行作品の恩恵が相まって実現したものです。第3四半期単独の売上高は 783百万円 、営業利益は 45百万円 となりました。累計では、売上高2,208百万円に対し、営業利益は▲45百万円と依然赤字ですが、赤字幅は当初予算比で大きく縮小しています。
通期見通しについては、第4四半期後半における開発案件の進捗に不確実性を考慮しつつも、 通期での黒字着地を見込む としています。売上高は3,000~3,120百万円、営業利益は0~50百万円の範囲で予想されています。
これまでの四半期ごとの業績推移は以下の通りです。

このエグゼクティブサマリーの表は、同社の財務状況が大きく改善していることを明確に示しています。特に、 第3四半期に営業利益が黒字転換した点 は、費用構造改革と事業の収益化が着実に進んでいることを裏付ける重要な指標です。また、通期見通しにおいて営業利益が黒字化する可能性を示していることは、今後の事業運営に対する自信の表れと解釈できます。売上高の推移を見ると、四半期ごとに着実に増加しており、事業活動が活発化していることがうかがえます。
収益性向上に向けた費用構造改革
同社は、収益性改善のために複数の費用構造改革を推進してきました。具体的には、 インフラやシステム費用の見直し による適正なコスト水準の維持、 広告宣伝費のトップライン(売上高)に対する効率的な投下 、iOS手数料の減少 による売上原価の縮小、そして サービス別利益率を把握した上での適切な人員配置 による人件費の効率化が挙げられます。これらの取り組みが、第3四半期の黒字化に大きく貢献しました。
マンガ事業の好調と収益貢献
マンガ事業は、同社の収益を牽引する主要セグメントです。第3四半期においては、主力サービスである「 マンガUP! 」が大きく売上を伸ばし、さらに単発の受託案件も売上増に寄与しました。これにより、マンガ事業単独の売上高は 541百万円 、営業利益は 116百万円 を計上し、 大幅な増益 となりました。
マンガ事業の四半期ごとの売上高と営業利益の推移は以下の通りです。

このグラフは、マンガ事業が同社の業績回復において 極めて重要な役割 を担っていることを示しています。特に、FY26の第3四半期における営業利益の急増は、 「マンガUP!」を中心とした収益性の改善 が顕著であることを物語っています。iOS手数料の引き下げや人員配置の最適化といった内部要因に加え、後述する人気作品のヒットが、この利益成長を後押ししたと考えられます。売上高も着実に回復基調にあり、事業の安定性が増していることがうかがえます。
マンガアプリのKPIでは、MAU(月間アクティブユーザー数)は「マンガUP!」が牽引するものの、他のサービスでは減少傾向にあり、前期四半期同様に微減で推移しています。しかし、 ARPU(ユーザー1人あたりの収益単価)は前期比で上昇 しており、課金総額の落ち込みがMAU減を緩やかにする効果をもたらしています。特に、スクウェア・エニックスと共同運営する「マンガUP!」では、「 黄泉のツガイ 」が大ヒットし、前期3Q対比でグロス売上が 15%増加 、MAUも増加しました。2026年7月には「スーパーの裏でヤニ吸うふたり」など、注目アニメ化タイトルの多数計画も控えています。
さらに、マンガ事業では AIを活用したマンガ作品の制作 (Stable Diffusion, Nanobana Pro, ChatGPTなど)や、 AIツールを用いたアニメーション制作の研究開発 も進められています。Alibabaとの業務提携を通じて、最新AIを活用した制作精度・バリエーションの拡張を目指すなど、 技術革新によるコンテンツ制作の効率化と品質向上 に注力しています。また、電子書籍配信サービス「ソク読み」との異業種コラボ「 and ST × ソク読み 」も開始し、新たな読書体験を提供することでユーザー層の拡大を図っています。
AIを活用したアニメーション制作の事例は以下の通りです。

このスライドは、同社が AI技術を単なる効率化ツールとしてだけでなく、新たなコンテンツ創造の核 として位置づけていることを示すものです。ショートアニメなどの需要増加に対応するため、生成AIツールを用いたアニメーション制作の研究開発を進めている点は、 将来の競争優位性を確立するための先行投資 として非常に重要です。特に、Alibabaとの業務提携は、グローバルな視点でのAI技術活用と、制作精度・バリエーションの拡張を目指すという点で、 コンテンツ制作の未来を大きく変える可能性 を秘めています。これは、マンガ事業の持続的な成長と、新たな収益源の創出に繋がる戦略的な取り組みと言えるでしょう。
エンタメ事業の状況と新規事業への先行投資
エンタメ事業は、電話占いサービスが直近好調で対前年同期比で増益となりましたが、個別占い師サービスが苦戦し、トータルでは対前年同期比で減少しました。売上高は 186百万円 、営業利益は 9百万円 を計上しています。同事業では、引き続き新規事業への積極的な先行投資を行っており、人件費・開発費が大きく膨らむ状況にあります。しかし、来期には複数の新サービス立ち上げ準備を進めており、 転換期として今期は粘り強く利益を追い続ける 方針です。
特に注目されるのは、アリババと業務提携し、生成AI Qwenを活用した AI恋愛サービス の立ち上げを予定している点です。これは、エンタメ事業とウェルネステック領域の新たな収益柱として育成を目指すものです。
ローカライズ事業の収益化進捗
ローカライズ事業は、 パブリッシング事業の収益モデルが本格稼働 し、新規タイトルがリリース後わずか1週間でローカライズ費用を回収する「低工数・高回転」モデルの実現を実証しました。3月には単月売上が過去最高値の2倍を記録し、5月も新規1本+セールで月次2番手と高水準を維持しています。また、翻訳・ローカライズ受託事業では、 大手プラットフォーマー案件の受注が確定 し、今期中の売上計上が見込まれています。先行投資を完了し、 実収益化フェーズへ移行 している状況です。
RET事業の直営化と店舗数拡大
RET事業では、&AND HOSTELの稼働率が堅調に推移しています。第3四半期の売上高は 13百万円 、営業利益は ▲3百万円 となりました。前期に単発の不動産アドバイザリー報酬を計上した影響で前年同期比では減少していますが、実質は同程度で推移しています。同社は、 インバウンド需要の安定的な取り込み を目指し、新規店舗拡大や別タイプの宿泊アセット運用を検討しています。
2026年8月には「 &AND HOSTEL NAMBA SOUTH 」の新規運営受託が決定し、ブランドとして累計20店舗目のプロデュースとなります。これは、既存の委託モデルから 直営モデルへの転換 を進めることで、収益性の最大化を図る戦略の一環です。今後は、既存店舗の直営化も順次実施し、来期は売上高および営業利益の増加を見込んでいます。
FY26以降の各事業方針(継続)
同社は、FY26以降も既存事業の強みを活かし、関連性の強い周辺領域を広げることで収益化を急ぐ方針です。主要な事業方針として、以下の3つの領域に注力しています。
- IPコンテンツテック領域(マンガ事業) : ライツ領域、集英社IP、ソク読み、アリババ提携、クラウド販売、AI活用、海外展開、コンテンツ制作、受託開発。
- ウェルネステック領域(占い事業) : 通話PF拡張、AIメディア展開、アライアンスセールス。
- インバウンド/観光/エンタメ/その他不動産アセット活用領域(ホステル・不動産) : 直営運営の店舗数拡大、観光、不動産知見を活かした多施設展開、エンタメ、インバウンド、VTuber、宿泊+α。
これらの戦略は、各事業のシナジーを最大化し、 テクノロジーを活用した新たな価値創造 を目指すものです。
資本政策と非上場株式の保有方針
同社は、保有する非上場株式について、資本効率向上の観点から適切なモニタリングを継続しています。事業シナジーの進捗を精査し、IPOやM&A等の最適な出口(エグジット)を捉えて 機動的に売却・現金化 する方針です。創出したキャッシュは、成長領域への再投資と最適配分に充て、 企業価値の最大化 を図るとしています。これは、保有資産を有効活用し、本業の成長を加速させるための戦略的なアプローチです。
まとめ
and factoryは、2026年8月期第3四半期において、 費用構造改革と主力事業の好調により四半期黒字化を達成 しました。特にマンガ事業は「マンガUP!」のヒットやAI活用によるコンテンツ制作の効率化・多様化が進み、収益を大きく牽引しています。エンタメ事業では新規事業への先行投資が続くものの、AI恋愛サービスなどの将来的な収益柱の育成を目指しています。ローカライズ事業は収益モデルが本格稼働し、RET事業は直営化と店舗拡大を通じて収益基盤の盤石化を図っています。 テクノロジーを活用した各事業領域の深化と拡大 、そして 非上場株式の戦略的な現金化 を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を目指す姿勢が示されています。
個別の投資に関する推奨やアドバイスを提供することを意図しておりません。ここで述べられている意見や見解は、あくまでも各記事の個人的見解です。