
株式会社Sapeet 2026年9月期第3四半期決算ディープダイブレポート:高成長を牽引する「Expert AI」と通期上方修正の背景
StockClub
Published: Aug 14, 2026, 10:03 AM
Sentiment Analysis

株式会社Sapeet(東証グロース: 269A)の 2026年9月期第3四半期決算 は、売上高・営業利益ともに前年同期を大幅に上回り、急速な事業拡大を示す力強い内容となりました。本レポートでは、公表された決算説明資料から重要トピックを精選し、同社の業績ハイライト、成長要因、独自ビジネスモデル、ならびに今後の戦略展開について深掘り解説します。
1. 2026年9月期 第3四半期 決算サマリーと通期上方修正
主な業績数値ハイライト
- 売上高 : 1,354百万円 (前年同期比 +94.2% )
- 営業利益 : 141百万円 (前年同期比 +656.7% )
- 経常利益 : 141百万円 (前年同期比 +1,618.9% )
- 四半期純利益 : 154百万円 (前年同期比 +1,864.9% )
第3四半期累計(3Q累計)における全社売上高は前年同期のほぼ2倍に拡大し、営業利益も前年同期の19百万円赤字/55百万円から大幅に跳ね上がりました。 生成AI技術の進化 および東証グロース市場上場に伴う 認知度・信頼性の向上 が追い風となり、後述する主力2事業がいずれも順調に推移しています。
通期業績予想の上方修正
業績の好調な推移を受け、同社は通期売上高予想を従来の1,700百万円から 1,830百万円(前期比+83.7%)へ7.6%上方修正 しました。一方で、営業利益予想(120百万円)、経常利益予想(121百万円)、当期純利益予想(132百万円)については前回発表値を据え置いています。
この利益予想据え置きは、業績の減速を意味するものではありません。3Q累計時点での営業利益は141百万円に達しており、すでに修正後通期目標(120百万円)に対して 進捗率117.5% と過達しています。第4四半期(4Q)において、オフィス増床に伴う賃料発生、優秀な人材の獲得強化、R&D投資やセキュリティ体制強化といった 中長期の成長投資を集中して実施する計画 であるため、保守的に据え置かれた格好です。
以下に掲げるスライドは、同社の四半期ごとの売上高および営業利益の推移をビジュアル化したものです。

なぜこのスライドが重要か・データの背景と意味
このスライドは、同社の成長スピードが特定の季節要因による一時的なものではなく、 明確な右肩上がりのトレンド を形成していることを証明しています。売上高グラフを見ると、2024年9月期1Qの141百万円から、2026年9月期3Qには524百万円へと拡大しており、直近四半期単体でも過去最高を更新し続けています。 また営業利益においては、過去の先行投資フェーズ(営業赤字期)を脱し、売上高の拡大に伴って 安定的な黒字化構造 へ移行したことがひと目で分かります。先行投資による費用増を吸収しながら高い営業利益率を維持できている点は、収益モデルの優位性を強く裏付けています。
2. 提供形態別(セグメント別)動向と成長要因
同社の事業は、顧客ごとのニーズに合わせた伴走支援やシステム開発を行う 「AIソリューション」 と、汎用性の高いSaaS型プロダクトを提供する 「AIプロダクト」 の2つの提供形態で構成されています。
① AIソリューション:前年同期比 +141.6% の爆発的成長
- 3Q累計売上高 : 1,020百万円 (前年同期比 +141.6% )
- 主要要因 : 大型新規案件の獲得成功、既存取引先におけるプロジェクト拡張・LTV(顧客生涯価値)向上、業界特化型 「AIエージェント」 開発の推進。
- 特徴 : コンサルティングからシステムカスタマイズ開発、AI人材育成まで一気通貫で提供。単なる PoC(概念実証)にとどまらず、実際の業務組み込みまで伴走することで案件規模が大型化しています。
② AIプロダクト:ストック売上の堅調な積み上がり
- 3Q累計売上高 : 334百万円 (前年同期比 +21.3% )
- 主要プロダクト : 姿勢・歩行分析「カルティ シセイカルテ」、顧客管理「カルティ マルチカルテ」、実践型AIロープレ「SAPI ロープレ」。
- 主要要因 : 多店舗展開事業者(整体院、ピラティス、フィットネス等)や大手企業への導入進展。フロー売上の変動はあるものの、月額利用料などのストック売上が順調に蓄積されています。
提供形態別の売上推移と詳細については、以下のスライドがその実態を明瞭に示しています。

なぜこのスライドが重要か・データの背景と意味
このスライドは、同社の売上成長を牽引する二輪(ソリューションとプロダクト)の役割分担と成長スピードの違いを浮き彫りにしています。 AIソリューション(上段グラフ) は前年同期比+157.1%(3Q単体比較)と圧倒的なモメンタムを見せており、大企業向けAX支援の旺盛な需要を確実に取り込んでいることが理解できます。 一方の AIプロダクト(下段グラフ) は、ストックモデルとして安定的にベースラインを引き上げています。ソリューション事業で市場の先端ニーズや高度なアルゴリズムを吸い上げ、それをプロダクト事業へ波及させていく 相乗効果の構造 が、この2つのグラフの推移から読み取れます。
3. コスト構造と投資方針
3Q累計の売上原価は734百万円、販管費は479百万円となりました。
- 売上原価の内訳要因 : AIソリューション案件の急拡大に伴い外注費(503百万円、YoY+117.7%)が増加。同社は正社員の原則出社を方針としつつ、遠隔地居住者や柔軟な働き方を希望する優秀なフルタイム人材に対しては業務委託契約を活用しており、この戦略的リソース調達が外注費に反映されています。
- 販管費の内訳要因 : 積極的な採用活動により採用教育費が70百万円(YoY+470.3%)と大幅増。またAIエージェント開発等に向けた研究開発費も41百万円(YoY+201.9%)と前年を大きく上回る投資を実行しています。
高成長を維持するために必要な 優秀な人材の獲得と先端技術へのR&D投資 を惜しみなく行いながらも、十分な営業利益を確保できているバランスの良さが特徴です。
4. 成長戦略の核心:「Expert AI」と事業モデルの強み
同社の競争優位性の根源は、独自の事業コンセプトである 「Expert AI」 にあります。
ノンコア代替(業務効率化AI)との違い
従来のAIが「議事録作成」や「間接業務の自動化」といったノンコア業務の代替・コスト削減を目指すのに対し、Sapeetの「Expert AI」は 「各領域の専門家(Expert)が持つ暗黙知や高度なナレッジを再現・サポートし、売上創出に直結するコア業務の価値を拡張する」 ことを目的としています。 例えば、熟練営業マンの商談スキル、専門医やトレーナーの身体分析ノウハウ、監査法人のリスク抽出ノウハウなどをAI化することで、顧客の顧客体験(CX)向上と売上拡大に直接寄与します。
この独自の事業構造を示すのが、以下のスライドです。

なぜこのスライドが重要か・データの背景と意味
このスライドは、Sapeetが描く 中長期の成長エコシステム(フライホイール) を概念化したものであり、投資家が同社の事業モデルを解釈する上で極めて重要です。 左側の「R&D(画像解析、自然言語処理、数理最適化など)」と「業界専門ナレッジ」を掛け合わせて開発されたアルゴリズムは、まず 「AIソリューション」 としてエンタープライズ企業に個別提供されます。そこで得られたユーザーデータや汎用化可能な機能群が、右側の 「AIプロダクト(SaaS)」 へと還元・パッケージ化されます。この循環モデルにより、開発コストを効率化しつつ、他社が模倣困難な専門データベースとアルゴリズムの蓄積を可能にしています。
5. 主なトピックスと導入事例の拡大
第3四半期においては、金融・エンタメ・ヘルスケアなど多岐にわたる大手・有力企業への導入や新ソリューションの提供が相次ぎました。
- 地方銀行向けAXソリューションの提供開始 行内の構造化・非構造化データや融資判断ノウハウを統合する「Agent Data Platform (ADP)」を構築。商談準備から課題ヒアリングまでを支援するAIエージェントを投入し、地銀の法人営業改革を強力に後押ししています。
- ローソンエンタテインメントへの「SAPEET AI人材育成サービス」導入 総務・人事・財務経理部の計60名を対象に、Copilot活用や生成AIの実践的ハンズオン研修を実施。AI活用への意欲スコアや実務での自主的な取り組みが劇的に改善しました。
- 『SAPI ロープレ』の大手顧客拡大 AIアバターとの会話で接客・営業の練習・自動評価を行う『SAPI ロープレ』(旧カルティ ロープレからリブランディング)が、大手消費者金融の アイフル (コンタクトセンター)、 フォーバル 、レバテック (新入社員研修)等へ相次いで導入されました。教育工数の削減と早期戦力化を同時に実現しています。
- 『カルティ シセイカルテ』の施設展開 リハビリ特化型デイサービス「ヒラックス」11店舗への一括導入が決定。見学時の姿勢可動域データを可視化することで、新規利用者の契約率向上や見学数の増加に貢献しています。
6. 顧客基盤の変革と今後の市場展望(TAM)
かつて同社の顧客はウェルネス(整体・フィットネス等)業界が過半を占めていましたが、2025年9月期以降、 IT・情報通信、小売・販売、建設・不動産、金融・保険、製造・メーカー など多様な業界への展開が急速に進んでいます(2025年9月期時点でウェルネス比率は37%まで低下し、他業界へ分散)。特定業界への依存度が下がり、事業の安定性と横展開の拡張性が一段と高まりました。
巨大な成長市場へアクセス
- 国内AIシステム市場 : 2024年の1兆3,412億円から、2029年には 4兆1,873億円(CAGR 25.6%) へ拡大見込み。
- グローバルAIエージェント市場 : 2024年の51億米ドルから、2030年には 471億米ドル(CAGR 44.8%) へと急成長が見込まれており、Sapeetが注力する「営業AIエージェント」等の領域は絶好の市場環境にあります。
まとめ
株式会社Sapeetの2026年9月期第3四半期決算は、 売上高前年比+94.2% 、営業利益前年比+656.7% という圧倒的な業績数字とともに、 通期売上高の上方修正(1,830百万円へ) を発表する非常に堅調な内容でした。 単なるコスト削減型のAIにとどまらず、売上創出を支援する 「Expert AI」 という明確な差別化軸を持ち、AIソリューションとAIプロダクトの双輪構造によって顧客基盤とストック収益を拡大させています。4Qに予定されているオフィス増床や人材採用といった積極的な先行投資は、来期以降の更なる非連続的成長に向けた強固な土台となることが期待されます。
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