
【揚羽 2026年9月期 第3四半期決算】大型案件失注と原価率悪化で通期予想を下方修正、一方で株主優待拡充と新サービスを開始
StockClub
Published: Aug 07, 2026, 12:23 PM
Sentiment Analysis

株式会社揚羽 2026年9月期 第3四半期決算ディープダイブレポート
株式会社揚羽(証券コード: 9330)の 2026年9月期 第3四半期決算 は、売上高が 前年同期比3.3%増の1,205百万円 となったものの、案件の大型化に伴う外注費の増加によって原価率が上昇し、営業利益は △18百万円の赤字 (前年同期△18百万円)で着地しました。第2四半期に想定していた業績回復に至らず、足元の事業状況を踏まえて 通期業績予想の下方修正 が発表されています。本レポートでは、決算数値、領域別動向、先行指標(KPI)、業績予想修正の背景、ならびに株主還元策と今後の成長施策について多角的に解説します。
1. 決算概要:増収もコスト増と大型案件失注が重くのしかかる
2026年9月期 第3四半期累計(2025年10月1日〜2026年6月30日)の業績は、売上高が堅調に推移した一方で、利益面ではコスト上昇を吸収しきれない状況が続いています。
- 売上高 : 1,205百万円(前年同期比 +3.3% )
- 売上原価 : 569百万円(前年同期比 +11.7% )
- 原価率 : 47.3% (前年同期 43.7%、 +3.6pt悪化 )
- 売上総利益 : 635百万円(前年同期比 △3.2% )
- 販売費及び一般管理費 : 654百万円(前年同期比 △3.1% )
- 営業利益 : △18百万円 (前年同期 △18百万円)
- 経常利益 : △19百万円 (前年同期 △21百万円)
- 四半期純利益 : △25百万円 (前年同期 △21百万円)
以下のスライドは、今期第3四半期の決算サマリーを示すものです。

【なぜこのスライドが重要なのか】
このスライドは、売上高の微増に対して 利益構造が圧迫されている現状 を如実に物語っています。売上高は前年同期比+38百万円(+3.3%)と増加したものの、売上原価が+59百万円(+11.7%)とそれを上回るペースで膨らみました。その結果、 原価率が43.7%から47.3%へと3.6ポイント上昇 し、売上総利益を前年同期比△20百万円押し下げる結果となりました。 販管費の抑制(△20百万円、△3.1%)により営業利益の赤字幅拡大は防いだものの、前年同期並みの△18百万円にとどまっています。なお、特別利益16百万円(本社移転に係る資産除去債務の戻入益)および特別損失14百万円(什器備品の減損損失)を計上した結果、四半期純利益は △25百万円 となっています。
2. 領域別売上動向:コーポレートとリクルーティングが牽引
揚羽の事業領域は主に「コーポレートコミュニケーション」「プロダクト&サービス・マーケティング」「インナーブランディング」「リクルーティング」の4つに分類されます。第3四半期における各領域の動向は以下の通りです。
- コーポレートコミュニケーション : 売上高 371百万円 (前年同期比 +39.8% )
- 前期に新設された コーポレートブランディングチームの効果 が出始め、売上は大きく伸長しました。ただし、案件の大型化により受注までのリードタイムが長期化したほか、大型案件の失注が発生したため計画には未達となりました。
- プロダクト&サービス・マーケティング : 売上高 89百万円 (前年同期 127百万円)
- ほぼ計画通りに進捗しており、引き続き新規獲得に注力する方針です。
- インナーブランディング : 売上高 276百万円 (前年同期 371百万円)
- 前年同期比で減収となり、営業戦略の立て直しを進めています。
- リクルーティング : 売上高 467百万円 (前年同期比 +16.2% )
- 営業強化策が実を結び、二桁増収を達成。 計画を上回り順調に推移 しています。
四半期別の売上推移を見ると、揚羽の業績には 納品が集中する第2四半期(1月〜3月)に売上高が偏重する高い季節性 があります。今期も2Qに689百万円を計上したものの、3Qは235百万円と伸び悩み、通期計画達成に向けた勢いを維持できませんでした。
3. 重要KPIの推移:先行指標に見る受注構造の変化
揚羽では、将来の売上・利益を予測する先行指標として「受注額」「通年受注額1,000万円以上の顧客社数」「新規受注社数」の3つのKPIを重視しています。

【なぜこのスライドが重要なのか】
このスライドは、揚羽の 将来業績を占う先行指標(KPI)の推移 を示しており、現在の事業環境と課題を理解する上で極めて重要です。
- 受注額の推移 : 2026年9月期3Q累計の受注額は 1,249百万円 となっており、前年同期(1,289百万円)を下回る水準で推移しています。案件の大型化に伴い、クロージング(契約成立・納品)が 第4四半期に集中する傾向 が強まっています。
- 通年受注額1,000万円以上の顧客社数 : 前期の34社から、今期3Q時点では 19社 へと減少しています。既存顧客のアカウント大型化を掲げる戦略の中で、この大型顧客数の底上げが今後の最重要課題です。
- 新規受注社数 : 2021年9月期の140社をピークに減少し、今期3Q時点では 73社 となっています。質を重視した営業アプローチへシフトした影響もありますが、将来のリピート顧客基盤(クライアント資産)を維持・拡大するためには新規開拓の再加速が必要です。
4. 通期業績予想の下方修正:営業赤字見通しへの転換
足元の進捗状況および大型案件の失注・期ずれ等の影響を受け、同社は2026年8月7日に 通期業績予想の下方修正 を発表しました。

【なぜこのスライドが重要なのか】
このスライドは、 当初の黒字化計画から一転して営業赤字見通しとなった通期予想の修正内容 を示しており、投資家にとって最大の注目点となります。
- 売上高 : 当初予想 1,850百万円 → 修正予想 1,647百万円 (△202百万円 / △11.0% )
- 売上原価 : 当初予想 856百万円 → 修正予想 775百万円 (△81百万円 / △9.5% )
- 原価率 : 当初予想 46.3% → 修正予想 47.1% (+0.8pt悪化 )
- 売上総利益 : 当初予想 993百万円 → 修正予想 871百万円 (△121百万円 / △12.3% )
- 販売費及び一般管理費 : 当初予想 943百万円 → 修正予想 887百万円 (△55百万円 / △5.9% )
- 営業利益 : 当初予想 50百万円 → 修正予想 △16百万円 (△66百万円 )
- 経常利益 : 当初予想 48百万円 → 修正予想 △17百万円 (△65百万円 )
- 当期純利益 : 当初予想 31百万円 → 修正予想 △21百万円 (△53百万円 )
修正の背景には、売上高が当初計画を約2億円下回る見込みとなったことに加え、 案件大型化に伴う外注費の増加で原価率が47.1%に悪化 したことが挙げられます。コスト削減に努めたものの減収影響をカバーできず、通期での営業利益は△16百万円の赤字着地を見込んでいます。現在は 今期中のクロージング案件の着実な回収 に注力しています。
5. 今後の戦略と新規取り組み:生成AI時代のブランディング支援
業績が苦戦する一方で、中長期的な競合優位性を築くための新規サービスの立ち上げや事業モデルの強化が進められています。
① AI時代のブランド認知支援「AIO・LLMO最適化サービス」の開始
ChatGPTやGemini、Google AI Overviewといった生成AI検索の普及に伴い、企業情報の認知経路が急速に変化しています。揚羽の調査では、 企業担当者の85.3%が「生成AIにより企業認知の方法が変化した」 と回答しました。 これに対応するため、同社はAI検索結果に自社情報が引用・参照されやすくなるようWebサイト設計や構造化を最適化する 「AIO(AI Search Optimization)・LLMO(Large Language Model Optimization)最適化サービス」 を新たに開始しました。現状調査・診断から戦略設計、コンテンツ制作、継続改善までを一気通貫で支援します。
② 垂直統合型ブランディングカンパニーとしての強み
揚羽は、コンサルティングから映像・グラフィック・Webサイト制作、プロモーションまでをワンストップで提供できる 一気通貫型のビジネスモデル を有しています。広告代理店や制作会社を複数挟む複雑なバリューチェーンと比較して、クライアントにとっては コミュニケーションコストの削減とブランディングの一貫性 が保てるメリットがあり、同社にとっては クロスコストの低下と顧客タッチポイントの多角化 につながっています。実際、同社の顧客リピート率は 毎期約7割 と高い水準を維持しています。
③ インナーブランディング市場の追い風
GALLUPの調査によると、日本の 従業員エンゲージメント率はわずか5% と世界的に見ても極めて低い水準にあります。またパーソル総合研究所の調査では、人材マネジメント施策を効果的に実践できている日本企業は わずか4.0% に過ぎません。人的資本経営やエンゲージメント向上に対する需要は構造的に高く、同社の得意とするコーポレート・インナーブランディング領域の潜在市場は広大です。
6. 株主還元策:常設株主優待制度の導入と利便性向上
株主還元の強化と中長期的な株主保有の促進を目指し、制度の拡充が行われています。
- 上場記念優待の変更(利便性向上) :
- 2026年3月31日時点で1年以上継続保有(100株以上)の株主を対象とした特別株主優待について、従来の「QUOカード5,000円分」から「 デジタルギフト® 5,000円相当 」へ変更されました。
- 常設株主優待制度の拡充 :
- 半年以上継続保有(300株以上保有)の株主を対象に、 年間16,000円相当(中間・期末各8,000円相当)のデジタルギフト® を贈呈する常設優待が導入されています。
- ※初回対象となるには、2026年3月31日および2026年9月30日の株主名簿に同一株主番号で300株以上の保有が2回連続で記載される必要があります。
7. 総合まとめと今後の注目点
株式会社揚羽の2026年9月期 第3四半期決算は、コーポレートやリクルーティング領域での案件獲得が進む一方、 大型案件の失注・リードタイム長期化・外注費増加による原価率上昇 が重なり、通期業績予想の下方修正(営業赤字転換)を余儀なくされる厳しい局面となりました。
今後の回復に向けた注目点としては、以下の要素が挙げられます。
- 第4四半期におけるクロージング案件の着実な納品と売上計上
- 案件大型化に伴う外注コストの適切なコントロールと原価率の改善
- 「AIO・LLMO最適化サービス」など新規サービスの立ち上げによる単価向上と新規顧客獲得
- 減少傾向にある新規受注社数および大型顧客数の再拡大
一気通貫型の支援体制と7割に及ぶ高いリピート率という強みを活かし、利益率の改善と成長軌道への再浮上に向けた取り組みが期待されます。
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