
加藤製作所 2027年3月期第1四半期決算アナリシス:原価率の大幅改善と損益黒字化への足がかり、価格改定・新製品戦略の全貌
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Published: Aug 07, 2026, 11:34 AM
Sentiment Analysis

加藤製作所 2027年3月期 第1四半期決算ディープダイブレポート
加藤製作所(証券コード: 6390)の2027年3月期第1四半期(2026年4月〜6月)決算は、前年同期の中国事業撤退に伴う売上剥落や国内建設機械需要の低迷を受け、 売上高10,023百万円(前年同期比19.4%減) と減収となりました。しかし損益面においては、前年に発生した棚卸資産評価損の解消や利益率の高い補用部品比率の上昇により、 売上原価率が前年同期の89.6%から83.9%へ5.7ポイント大幅に改善 しました。これにより営業損益は △79百万円(前年同期は△635百万円)と赤字幅が大幅に縮小 し、営業外での為替益などの寄与もあり 経常利益は7百万円(前年同期は△471百万円)と黒字転換 を果たしました。
本レポートでは、決算資料から読み解く主要な業績ハイライト、四半期業績の構造的特徴、セグメントおよび海外仕向け地別の動向、今後の収益性改善に向けた重要施策(国内全製品の価格改定や新世代油圧ショベルの投入等)について詳細に解説します。
1. 連結業績ハイライト:売上高減も損益構造は著しく改善
2027年3月期第1四半期の連結業績は、減収を伴いながらも劇的な損益改善を示す結果となりました。
- 売上高 : 10,023百万円 (前年同期比 △2,405百万円 / △19.4%)
- 売上原価率 : 83.9% (前年同期比 △5.7ポイント改善)
- 営業利益 : △79百万円 (前年同期比 +556百万円改善)
- 経常利益 : 7百万円 (前年同期比 +478百万円改善、 黒字化 )
- 親会社株主に帰属する当期純利益 : △17百万円 (前年同期比 +492百万円改善)
売上高低下の背景には、 中国事業撤退により前年同期に計上されていた中国事業の売上が剥落 したこと、および 国内建設機械需要が前年同期比で落ち込んだ ことがあります。 一方、損益面での劇的な改善を牽引したのは 売上原価率の向上(89.6%→83.9%) です。前期に実施された弾力的販売に伴う棚卸資産評価損の計上が今期は発生しなかったこと、および利益率の良好な 補用部品の売上高比率が増加 したことが原価率を5.7ポイント押し下げました。さらに、営業外損益において 為替差益(+81百万円) やホテル事業(+27百万円) などの利益が上乗せされたことで、経常利益ベースでは前年の赤字から脱却し、 7百万円の黒字 へと浮上しました。
以下の損益計算書スライド(P.5)は、この原価率改善と経常利益黒字化の構造的な背景を明確に示しています。

このスライドから分かるとおり、売上高が約24億円減少しているにもかかわらず、売上原価がそれ以上の幅(約27億円減)で抑制されたことで 売上総利益は1,610百万円(前年同期比24.9%増) へと増加しています。同社が取り組む収益構造の見直しが着実に損益へ反映されつつあることが見て取れます。
2. 四半期業績の推移と「季節性」の理解
加藤製作所の業績を評価する上で欠かせないのが 「季節性」 の存在です。 同社のビジネス構造上、決算期における 売上高および営業利益は第2四半期(7-9月)および第4四半期(1-3月)に集中する傾向 があります。過去の四半期グラフ(P.4参照)を辿ると、第1四半期(4-6月)は例年需要の端境期にあたり、売上規模が縮小し営業損益が低迷しやすい特性を持っています。
前年同期(FY26-1Q)の営業損益は△635百万円という大きな赤字を計上していましたが、今期(FY27-1Q)の△79百万円への縮小は、この季節的谷間においても 基礎的な収益力が底上げされていること を示唆しています。今後の第2四半期以降、需要集中期に向けてどの程度利益を積み伸ばせるかが注目されるポイントとなります。
3. セグメント(製造拠点)別および地域別(仕向け地別)の状況
セグメント(製造拠点)別業績
- 日本セグメント : 売上高 9,689百万円 (前年同期比 △11.7%)、 営業利益 △13百万円 。国内建機需要の低下により減収となったものの、棚卸資産評価損の未発生等が奏功し利益悪化は抑制されました。
- 欧州セグメント : 売上高 687百万円 (前年同期比 △20.1%)、 営業利益 △71百万円 。イタリアを拠点とする欧州市場では主要国における需要低迷が継続しており、構造改革および拠点の再編成を推進中です。
- 中国及びその他セグメント : 売上高 5百万円 (前年同期比 △99.4%)、 営業利益 △40百万円 。中国事業撤退に伴い売上はほぼ消失し、不採算事業の整理フェーズにあります。
仕向け地別売上高推移(日本を除く海外市場)
海外売上高の合計は 2,744百万円(前年同期比19.0%減) となりましたが、地域ごとに大きく異なるトレンドを示しています。

上記の仕向け地別スライド(P.7)が示している重要トピックは以下の点です。
- 北・中南米の著しい伸長 : 売上高は 1,211百万円(前年同期比64.9%増) となり、海外売上高全体の 44.1% を占めるトップシェア地域へ浮上しました。関税影響が一巡したことで、米国向け油圧ショベルの輸出・販売が大きく増加に転じています。
- アジア市場の構造変化とインド進出 : アジア売上高は 744百万円(前年同期比55.1%減) と減少しましたが、同社は今後の有望な成長市場として期待される インドにおいて現地企業との合弁会社を設立 し、稼働に向けた準備を着々と進めています。
- 欧州・中近東の低空飛行 : 欧州(692百万円、△11.4%)や中近東(18百万円、△84.7%)では需要回復の兆しがまだ薄く、慎重な舵取りが続いています。
4. 主要品目別の売上構造と製品ラインナップ
製品カテゴリー別の動向では、同社の中核である建設用クレーンと油圧ショベルが売上の大半を構成しています。
- 建設用クレーン : 売上高 6,484百万円 (前年同期比 △17.6% / 全体構成比 57.7%)
- 国内: 5,786百万円(△17.3%)、海外: 697百万円(△19.9%)。移動式建設用クレーン(ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等)を中心にインフラやビル建設現場で広く使用されています。
- 油圧ショベル等 : 売上高 3,441百万円 (前年同期比 △21.7% / 全体構成比 34.3%)
- 国内: 1,394百万円(△27.7%)、海外: 2,047百万円(△17.0%)。ミニショベル(0.9〜10t)から中大型ショベル(8〜50t)、不整地向けのクローラキャリアを含みます。
- その他(特装車等) : 売上高 98百万円 (前年同期比 △39.7% / 全体構成比 1.0%)
- 路面清掃車、万能吸引車、スノースイーパなど、公的機関や空港向けに展開しており、競合が少なく安定した製品群です。
5. 収益性再構築に向けた成長戦略と重要トピック
同社は足元の需要低迷を跳ね返し、中期的な採算性を向上させるために複数の重要な施策を相次いで打ち出しています。
(1) 国内向け全製品を対象とする「価格改定」の実施
原材料価格、物流費、エネルギーコスト等の高止まりに対し、企業努力のみでのコスト吸収が困難な状況を受け、同社は 国内向け全製品の価格改定 を決定しました。

上記スライド(P.11)に明記されている価格改定のポイントは以下の通りです。
- 対象製品 : 国内向け全製品
- 価格改定率 : 約3%〜20% (製品により異なる)
- 実施時期 : 2026年8月より順次実施
2026年8月からの順次値上げにより、第2四半期後半以降の国内粗利益率の向上が期待されます。通期連結業績予想への影響については現在精査中とされています。
(2) 新世代油圧ショベル「REGZAM」シリーズ4機種の一斉販売
2026年7月より、12t〜23tクラスの主力油圧ショベル “REGZAM”シリーズ4機種(HD512-9, HD514MR-9, HD820-9, HD823MR-9)を全面刷新して一斉販売開始 しました。作業効率のさらなる向上、Stage V適合エンジンと新油圧システムによる低燃費・環境性能、新型キャブによる居住性の向上を図り、 年間200台〜400台 の販売目標を掲げています。
(3) 最先端技術の展示とDX施策(「CSPI-EXPO 2026」出展)
展示会「CSPI-EXPO 2026」において、 世界初のハイブリッドラフテレーンクレーン「SR-250HV」 のデモンストレーションを実施したほか、全旋回式クローラキャリア「IC110R」や新型油圧ショベルを先行展示しました。また、同社のDX施策である稼働管理システム 「K-cast」 を標準搭載・推進することで、顧客車両の稼働状況を可視化し、作業効率化とアフターサービス・補用部品販売の強化に繋げるサイクルを構築しています。
6. 財務基盤と今後の展望まとめ
財務面においては、FY27-1Q末時点の総資産は90,838百万円(前期末比 △1,526百万円)となりました。長期借入金の返済が進み負債が減少した結果、 純資産比率(自己資本比率)は46.2% を維持しており、健全な財務体質を保持しています。
2027年3月期第1四半期決算は、中国事業撤退に伴う減収要因を含みつつも、 原価率5.7pt改善による営業損益の底打ちと経常黒字化 を果たし、構造改革の成果が見られた四半期となりました。今後は、米国市場での販売増加の継続、インド合弁会社を通じたアジア市場での再構築、そして 2026年8月からの国内製品価格改定 と7月発売の「REGZAM」新シリーズ による収益性の押し上げ効果が焦点となります。
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